『俺は星間国家の悪徳領主! 1巻』のネタバレありの感想になります。
全編ネタバレの感想ですので未読の方やネタバレを見たくない方はご注意ください。
あらすじ
星間国家アルグランド帝国――その辺境惑星を治める伯爵家に生まれ、幼くして当主となった転生者リアム。彼は善良さ故に奪われ続けた前世の反省から、今度は奪う側である「悪徳領主」となって民を虐げようとするのだが――
「こんなの搾り取ろうにも、搾りかすも出ねーよ!!」
受け継いだ領地はこれ以上虐げようのない荒れ果てっぷりだった! 虐げても大丈夫なようにと、まずは領地を繁栄させていくリアム。それでもできるだけ悪徳領主らしく振る舞うのだが、何故か民からの好感度は上がりっぱなしで……!?
悪徳領主を目指してるのに名君と崇められちゃう勘違い領地経営譚、開幕!!
ネタバレありの感想
会社には無実の横領を着せられ解雇され、妻には浮気された挙句に捨てられ、不遇のまま死んだ主人公。
死の間際に現れた案内人という謎の人物に誘われ、異世界に伯爵嫡男リアムとして転生します。
真面目に生きた挙句、不遇のまま死んだ前世のことを後悔したリアム。
転生後の人生では人に虐げられる側ではなく虐げる側の人間、悪徳領主を目指します。
ですが、主人公の気質は小市民的であるし根が善良であるため悪事が悪事とはならずに、
結果的にリアムの行動は周囲に評価されて名領主として認められていきます。
悪徳領主を目指しながらも名領主となっていくリアムの勘違い系コメディのサクセスストーリが開幕です。
本作品のポイントは勘違いやすれ違いと、そのことがもたらすギャップですね。
主人公のリアムは悪徳領主を目指して行動しますが、周囲からは勘違いされたり誤解されたりで名領主と評価されてしまいます。
リアム自身も転生前の価値観で行動してしまい転生後の世界の価値観とのズレに気が付かず勘違いや誤解を多々してしまいます。
お互いの勘違いや誤解が結果的にうまく事を運び、領主も領民もWin-Winの結果になるところがコメディとして楽しめます。
リアム本人の真意とはズレてはいるのですが、リアムの行動でボロボロだった領内が発展するところや周囲から名領主として評価されるところはサクセスストーリーとしても十分楽しめますね。
案内人とリアム
いろいろな勘違いとすれ違いが起こっている本作品ですが、一番のすれ違いは案内人とリアムの関係でしょうね。
リアムは案内人のことを不遇の死を遂げた自分を異世界に転生させ、幸せにしてくれた恩人と勘違いしています。
転生前のリアムを不幸のどん底に追いやったのも案内人でありますし、
更には転生後のリアムも不幸にしてやろうと暗躍していることを知っている身としては、リアムの勘違いは本来痛々しく思ってしまうはずでした。
ですが、案内人の更なる不幸に追いやられるはずであったリアムが、まったくその悪意に気が付かないのが笑いになっていますし、
案内人の暗躍もリアムを不幸に追いやるどころか、リアムにとってのサポートになってしまっているので全然痛々しく感じず、
むしろ面白さに一役買っていますね!
リアムが悪意に気が付かず幸運に恵まれて幸せになっていくことが、意図せず案内人に対しての最高の復習になっているところも痛快ですよ。
案内人がリアムを不幸にしようとすればするほど、どんどんリアムが幸せになっていくというLose-Winの関係が今後も続いていきそうで楽しみです。
色々と案内人は暗躍したけど一番の不手際は、剣聖安士をリアムに引き合わせてしまったことでしょうね。
安士という偉大な剣聖に師事するきっかけを得たことで、リアムはその後襲撃してきた宇宙海賊を撃退して飛躍するきっかけになったわけですし。
それにしても、転生時に何のチート能力も授かっていなかったリアムを俺TUEEEできるまで成長させた安士師匠は本当にすごいぜ(笑)
安士とリアム
一閃流の開祖であり、悪徳領主を目指し人を全く信じないリアムが唯一神事尊敬する偉大な人物である安士師匠です。
本当に安士とリアムの関係は大好きです。
客観的にみると安士師匠は胡散臭い香具師ですし、小物であることも天城には見抜かれるほどの底の浅い人物です。
本来であればあっさりリアムに叩きのめされる側の人物のはずなんですが、最初に見せた一閃流の技というデモンストレーションが良かったんだろうなあ。
手品というか大道芸の技にすぎないはずのものを、圧倒的な技術から生み出された剣技と勘違いしちゃうリアムが面白いですわ(笑)
本来なら怪しい香具師に騙されて無駄な修行に時間を費やすという案内人の狙いだったんでしょうが、
そんな大道芸を実際の剣技として生み出すだけではなく圧倒的な武力として身に着けてしまうリアムの勘違いからの行動には安士師匠ならずともドン引きするはずですね(笑)
なんだろう、リアムって前世で騙されて不幸になったことから人をなかなか信じず信用しないんですけど、一度信用したら底抜けに信じますよね。
安士師匠や天城に対する圧倒的な信頼と、ブライアンに対する信用は他の人物を凌駕していますよ。
自分の理想の女性像であり完全な味方である天城と本来は怪しい香具師である安士を同列にして信用しているんでリアムの人物評価もたいがいポンコツなんですが、
こういったギャップがリアムの魅力であり作品の面白さにつながっているんで非難できないですわ(笑)
海賊退治でリアムが実力を発揮したことで、リアムの師匠である安士の評価もメキメキ上がるだろうな。
リアムも剣聖安士師匠に感謝を重ねるだろうし、この師弟関係の勘違いを続刊でも期待しちゃうな。
続刊について
勘違いすれ違い型のコメディ作品であり、主人公リアムの俺TUEEEとサクセスストーリーを楽しむ作品でもあります。
ですので、作品としての大きな目的があるわけでもなく、各巻ごとにリアムの勘違いと成功譚を楽しむのが正しいんでしょうね。
色々と暗躍する案内人の悪意をリアムが気が付かぬうちに撃退して、結果的に案内人にダメージを与えリアムに幸運が舞い降りるというのが続きそうですね。
難しいことを考えずにリアㇺの活躍と、結果的に幸せになっていく領民と発展していく領地の姿を楽しんでいきたいと思います。
『星間国家の悪徳領主 2巻』は2020年12月25日に発売みたいですね。
年末年始ののんびりとしたい時期に読んで感想を上げようと思います。