『異世界国家アルキマイラ 1巻 ~最弱の王と無双の軍勢~』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
Twitter上で編集さん行っていた宣伝内容が面白そうだったので購入しました。
SLGで自ら軍団を作ってしまうところが同意できましたし、その軍団とともに異世界に転移というのが自分の好みにマッチしていましたので。
ちなみ、原作の小説家になろう掲載の『異世界国家アルキマイラ』の方は未読です。
あらすじ
誇り高き我が民よ――示せ、最強たる証を!!
これは、無双の魔物たちに愛されし凡人が真の王へと至る物語――
Webで絶大な熱狂を巻き起こすファンタジー戦記、ついに書籍化!
コミカライズ企画進行中!国家運営系VRゲーム『タクティクス・クロニクル』で頂点を極めた王(プレイヤー)・ヘリアンは、ゲーム内の自国ごと異世界へ転移してしまう。
そこで出会ったのは、自我を持って行動する魔物の大軍団。そして、元NPCである一騎当千の軍団長たちであった。
身分を隠し、臣下と共に探索に出たヘリアンが直面するは、尊厳を踏みにじられながらも巨大なる悪意に抗う無辜のエルフたち。
罪なき人々の涙が胸を打つとき、彼は王としての自覚に目覚め、怒りと共に決意する。
旗下十万の魔軍で総力をもって非道に鉄槌を下さんと!
『いざ立て――誇り高き我が民よ! 今こそ咆吼をもって応えとせよ!』
「「「「「オオォォオォオオオオオォォ――ッッ!!!」」」」」
万雷の雄叫びが世界を揺らすとき――無双の融合魔獣(アルキマイラ)が一斉に進撃する!!
轟く万魔の王の声が今――最強の魔軍に進撃を命じたのだ!!
熱狂を巻き起こすWeb小説、大幅加筆修正にて待望の書籍化!
ネタバレなしの感想
楽しく読むことが出来ました。
絶賛と言うほどの内容でこそありませんでしたが、次にどのような展開になるのか?
主人公であるヘリアンの決断と、決断によりどのような結果となりヘリアンの心に何が残ったのかという部分が楽しめました。
青臭い位の正義感で動く未熟さがありますが、ヘリアンの今後の成長を見込めて面白いです。
この物語は主人公のヘリアンが彼がSLGで育てた国と軍団とともに異世界に転移し、転移した世界で無双するというのがメインのお話になります。
よくある異世界転移の物語との違いは、主人公のヘリアン自身は肉体的にも精神的にも強くはなく、無双するという部分は配下の軍団が担うというところでしょうかね。
ただヘリアンは戦闘力や体力的には最弱ではありますが、彼の決断によって国家方針や戦略が定まりますので責任は重大となります。
転移前のSLGではワールド(おそらくサーバ)でトップを取るほどのプレイヤーであったヘリアンが、転移した異世界でその実力を発揮して異世界を制覇する物語となるのではないかと私は予想しています。
ただ、ゲームの世界でトップを取ったとはいえ実年齢は20歳程度のヘリアンがゲームと同様に異世界でも振る舞えるかと言えばそうではありません。
実際に人格を持ったNPCたちへの対処や、ゲームとは違う異世界への対応と言った困難が付きまといます。
サブタイトルにもある通り単純な強さでは最弱の王であるヘリアンが、指導者として成長していく様を楽しんでいくのが本作品の魅力であるともいえます。
強さは最弱でありますが指導者としては成長していき、最強の軍団を率いて異世界の敵を蹂躙していく様を楽しむという点を面白いと思える読者の方にお勧めの作品と言えます。
そういった意味で今巻ラストのエピソードは私的には蛇足に感じてしまいました。
直接的な力では最弱の存在であるヘリアン、彼の強みは指導者としての決断力や心だと思います。
ハッピーエンドにするために、後味の悪い展開を避けることを優先して、ヘリアンの心の成長の糧を手放してしまったんじゃないかなとも感じました。
ヘリアンが喪失したものに重さや貴重さがあるからこそ悔いが残り、今後は同じ過ちを起こさぬように方針や決断にも重みが出ると思うのです。
何も失わないという考えは素晴らしいのですが、単純にその願いが叶うだけでは物語に深みを感じない気がします。
それに今回は何とかなりましたが、ヘリアンが本当に貴重なものを突如失った時、その心の痛みに耐えられるのかも気になります
ヘリアンと共に異世界に転移した国家アルキマイラ、その国家に所属する八軍団。
その軍団を率いる軍団長は皆一騎当千級の強者であり、転移した異世界でも無双の強さを発揮することとなります。
敵対した軍勢を鎧袖一触するさまは爽快でありましたし、今巻の敵はヘイトをあからさまに煽る存在でしたので蹴散らすさまは爽快感を覚えましたよ。
なんというか自ら作った最強の軍団を率いて敵を蹂躙するとか、SLGをプレーしたことのある人なら誰しも抱いた夢の様な内容です。
私もそんな妄想的なプレーを良くしていましたのでこの内容には大満足ですわ。
ただ、今巻はまだシリーズ開幕を告げる第1巻ということもあり、各軍団の顔見世というところであります。
各軍団の個性や魅力を発揮するまでには至りませんでしたので、その点については次巻以降に期待ですね!
個人的な好みでいえば第7軍団の決戦兵器の姿を拝んでみたいなという想いはあります。
果たしてその決戦兵器を用いるのに値する異世界側の強者が現れるのかは気になります。
アルキマイラ側の強さを引き立たせるためにも、敵対する側にもそこそこ強い存在が必要だと思うのですよ。
でも、今巻の内容を読むにアルキマイラ側は異世界では隔絶した戦力を持つことが明らかです。
どのようにして敵側の強さと引き立たせ、その強い敵を蹂躙するカタルシスを味合わせてくれるのか、次巻の展開が楽しみです。
今巻ではハーフエルフの王国を助け、エルフの国と敵対したヘリアン率いるアルキマイラ。
アルキマイラの国家方針を定めた際にヘリアンが行った演説は、読んでいても気持ちが高揚しましたし、その後の軍団の躍進も期待以上でした。
圧倒的戦闘能力を持つアルキマイラ軍がヘイトを溜めるだけのエルフ軍を蹂躙する姿は読んでいて本当に気分良かったです。
次巻以降、アルキマイラは本格的にエルフたちの所属する国ノーブルウッドと戦争をするのかしら?
既に相手側の秘密兵器を倒してしまったし、相手側の強者はアルキマイラ側の雑兵と同程度であると分かったし、戦いというか蹂躙するだけの展開になりそうですよね。
苦戦もしない相手との戦争でどの様に物語を盛り上げていくのかは気になります。
全軍団を派兵する必要もないでしょうし、戦場に派兵する軍団を絞り、その軍団と軍団長の掘り下げを行われることを期待します。
ネタバレありの感想
ここから下は『異世界国家アルキマイラ 1巻 ~最弱の王と無双の軍勢~』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
指導者ヘリアンについて
サブタイトルにもある通り最弱の王 ヘリアン。
元々はただの学生ですし、ゲームで指導者役をしていただけであり、急に背負った指導者の重責に耐えられる訳が無いのですよね。
突然の異世界転移を乗り切るため、共に転移しNPCではなく独自の意識を持つようになった配下たちに見限られないため、指導者として振る舞おうとするヘリアンの成長が本作の魅力的な部分であると思います。
今巻でもエルフの王国とハーフエルフの王国の戦争になし崩し的に巻き込まれましたが、それでもどちらの国に与して戦うかを決断したのはヘリアン自身です。
決断することから逃げない、決断した結果を受け入れる覚悟を決めたヘリアンは、ゲーム内の指導者ではなく実際の指導者として一歩踏み込んだといえます。
ただ、今巻の方針決定はなし崩し的な部分が大きく、結果的にアルキマイラ軍団の力が相手国とは桁違いであったため何とかなりましたが、戦略や方針は手放しには褒められないですね。
ヘリアン自身の述懐で情報の重要さを何度も触れているのに、情報収集を怠っていたように感じました。
「情報を軽んじた国は大抵滅んだ。国を動かすにあたっては、確度の高い情報が必要になる。」
それが理解できているのなら、リーヴェと遭遇した時にもっと異世界の情報を得るべきでしたし、敵対したノーブルウッドの狩人長をそのまま見逃したのは悪手すぎますよ。
せめて護衛の一人を狩人長の後をつけさせてもいいですし、捕らえてアルキマイラに連れ帰って情報収集しても良かったはずです。
なんで情報収集の大切さを理解しながら、その情報を収集する機会を自ら逃していくのかがちょっと理解できなかったです。
それにノーブルウッドと敵対するとヘリアンが決断した時、ヘリアンはノーブルウッドの戦力を理解していたのでしょうか?
アルキマイラ側の戦力が桁違いに強かったので結果的に蹂躙できましたが、もしもエルフ側の戦力がアルキマイラ並みやそれ以上あったらどうしたのでしょうかね。
相手国の軍事力も知らずに戦争を始める指導者とか恐ろしすぎます。
国家の方針を決める大事な決断、開戦の決め手はヘリアンの感情ですよね。
助けると約束していたハーフエルフの少女が害されたことへの怒り、激情から発した短慮にしか思えないのですよ。
ヘリアン自身が安っぽい正義感じゃだめとか、アルキマイラの利益を考えないと言っていただけに、この短慮が気になりました。
度々出てくる自身への戒めと実際の行動がかい離しているように思えます。
ですが、このヘリアンの短慮ともいえる感情の発露は決して悪いものではないと思います。
ヘリアンの行った行動には改善するポイントが多々ありますが、彼の決断自体は決して間違っていないと考えるからです。
すべての人間を傷つけたくないとか、すべての国と平和に暮らすという嘘臭い理想主義を掲げるよりもいいです。
大切なものを守るために戦う方針こそ、アルキマイラの国是に相応しいと思えました。
今回の情報収集の怠りや、激情に駆られての開戦などは、ヘリアンが指導者として成長すれば何とかなる部分でしょう。
ノーブルウッドとの戦争の中でヘリアンが指導者として成長し、変わっていくのだろうなとも思えます。
アルキマイラの軍事力があれば勢力がどんどん拡大するでしょう、その中でヘリアンも指導者として成長していくでしょう。
ヘリアンが指導者として成長したとしても、この時のヘリアンが持っていた青臭い正義感は無くならないでほしいものです。
そういったヘリアンの成長面を考えると、やっぱりリリファが復活したのは蛇足に思えてしまうな。
護れなかった約束を繰り返さないようにヘリアンが成長するといった要素や、何かを決断するときにリリファのことを思い出すといった描写が後の巻で活きると思うんだけどな。
何一つ大切なものを失わず、綺麗な部分だけを描いてヘリアンは心の成長を遂げることが出来るのでしょうか?
軍団について
僕の考えた最強の軍団
浪漫要素を詰め込んだそれぞれに特色のある八大軍団
SLG好きやマンガ好きな方なら、似たような軍団は妄想したことがあるんじゃないかと思います。
最強の軍団が用意されたのなら、今度必要なものはその最強の軍団が活躍する場面ですね!
ただ、今巻では各軍団長の顔見世という感じでまだ軍団としての活躍が乏しいのが残念でした。
次巻以降、本格的に戦争が始まるのならば各軍団に見せ場が訪れそうですので、続刊で各軍団長たちが魅力的に映える場面を期待します。
ノーブルウッドの国力や軍事力を探るために、諜報特化の第六軍団が活躍しそうですし、エルフ相手なら同じエルフ系の第3第4軍団が活躍するのかな?
ヘリアンは軍団長の離反や反乱を気にしていましたが、軍団長同士の会話を見るに軍団長全員、ヘリアンのこと好きすぎて反乱とかありえないですね
反乱要素はヘリアンに緊張感を持たせるのと、読者にまさかと思わせるためにあるだけな気がします。
こんなヘリアンへの好感度MAX状態の軍団長が反乱を起こすとなると、よっぽどヘリアンがへまを犯さなけらば発生しないはずです。
ただ、ヘリアンがリーヴェを偏重していることと、配下を今一つ信用していないところが反乱の切っ掛けとしては有りかもしれないですね。
正直なところ、アルキマイラに匹敵する敵対勢力とか居なさそうなので、軍団長対軍団長というのも見てみたいなという気もします。
それにしてもアルキマイラは軍団長の力もあり、軍事力としては敵なしです。
でも、内政面での補佐役とかいないのかな?
第四軍団は魔法特化みたいだし、第七軍団は研究特化みたいですので、内政面とはまた違いますよね。
転移後の世界でアルキマイラ住民を養う食料はどう賄うのかな?
それにアルキマイラの経済活動はどうなるのか?
勢力を国家としている以上、最低限でもいいのでこの点に触れて欲しいなとは思います。
異世界について
転移物のお約束として、アルキマイラでもいくつか気になる要素があります。
まずは何故、ヘリアンとアルキマイラが転移したのかという点。
転移したのはヘリアンだけなのか、それともほかのプレイヤーたちも転移しているのかという点もあります。
そして、転移した先でもなぜゲームのシステムであるマップやチャットが使えるのかとか、ゲームのアイテムや魔法が効果を発揮するのかという点もですね。
まあ、この辺の要素は移転物作品の枝葉の部分なので明かされることがないかもしれません。
でも、ヘリアン以外の転移者もいると考えて物語を読むべきなのでしょうね。
ヘリアンだけが特別と考えるより、特別な存在のうちの一人がヘリアンであると考える方がありそうに思えますから。
各ワールドの覇者がアルキマイラの世界に転移して、異世界で覇権を争うとかになるのかしらね?
異世界には魔王がいるという展開で、アルキマイラを中心とした諸勢力対魔王軍というのも面白そうです。
八軍団を活かすためには、敵対側にもそれなりの戦力が必要ですから対他プレイヤーか対魔王軍くらいの展開になるんじゃと考えますが、この予想は当たるのかしら?
続刊も読んで予想が当たるかどうかを確認したいと思います。
シリーズ感想の索引
異世界国家アルキマイラ 1巻 感想
異世界国家アルキマイラ 2巻 感想
お勧めの作品
今回のお勧めは『オーバーロード』です。
拠点ごと転移、軍団ごと転移というとついつい『オーバーロード』と比べてしまいますね。
アインズ様がヘリアンの立場だったらどう行動し、どう決断したかなとも考えてしまいました。
少なくとも、ヘリアンの様に正義感では動かないだろうな(笑)
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コメント
はじめまして。自分は書籍版アルキマイラ買ってませんが二巻の内容によっては一巻と一緒に購入を検討してます!
オーバーロードみたいな俺の軍団tueee系は作者の腕が必要なのか、なかなかありませんね。
時間があるならエステルドバロニアという作品もお勧めですよ。オーバーロード並みに古いですが今度書籍化するみたいです。
ななしさん
コメントありがとうございます!
そうなんですよね。
軍団Tueee系は登場キャラクターが多い分、各キャラの見せ場や魅力を作らないといけないので作者の力量が無いと難しいですよね。
アルキマイラは2巻で軍団長に見せ場を作れるのか、それとも現地勢の掘り下げを行うのかが気になるところです。
エステルドバロニアの情報教えてくださりありがとうございます。書籍化した際に購入して感想をあげたいと思います!
返信ありがとうございます。アルキマイラweb版では二章で読者が離れていったので、書籍版は二巻が重要になるかもしれませんね。
エステルドバロニアは、アルキマイラにプロットを下敷き云々という話もあるようなので書籍版は逆な形で炎上しないことを祈ってます。
ななしさん
コメントありがとうございます!
Web版のアルキマイラにそういう事情があるのなら2巻は加筆修正がされるかもですね。果たしてどうなるのか期待して待ちます。
エステルドバロニアとアルキマイラ、どちらも変に炎上しないといいですね。