『異世界国家アルキマイラ 2巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
異世界転移に巻き込まれた無双の魔物国家・アルキマイラとその王・ヘリアン。
辿り着いた異世界で悪逆を尽くすエルフの国家・ノーブルウッド先遣隊を撃滅し、無辜の民を救ったことで新たなる地でもその力と名声を拡げつつあった。
国家基盤が整う中、現実世界への帰還を願うヘリアンは、信頼のおける軍団長と共にこの世界の調査を決意する――
その最中、自らと同じ黒髪黒眼の少女・シオンを助けた事を契機に運命が動き出す。
この世界最強と謳われるに存在に力を見込まれ、猛る魔獣ひしめく迷宮攻略のクエストを受けたヘリアン達を待ち受けていたのは、神代から残された古の力!!
「万魔の王の名に於いて、アルキマイラが瞳、リーヴェに命ずる――撃滅せよ!」
今――万魔の王の命を受け、光纏いし月狼が覚醒する!!
無双の配下と歩む王道ファンタジー戦記、待望の第2弾!
ネタバレなしの感想
ラテストウッドを守るためのノーブルウッド先遣隊との戦いは決着し、次は国家基盤を整えるための内政を行う。
まずは転移先の異世界の情報を収集するための拠点づくりを目的とし、人間が治める境界都市へ調査に赴く。
目立たずに活動を行うはずが、境界都市に存在する迷宮で発生した騒動に巻き込まれることに。
突如現れた軍団長にも匹敵する強大な敵を相手と対峙したヘリアンは、彼が最も信頼するリーヴェに敵の殲滅を命ずる。
といったお話で今回は戦争パートはなく、次の戦争に向けての地盤固めの回ですね。
ヘリアンの持つ能力の説明、異世界での支配体制の概要説明、支配者となったヘリアンの苦悩と成長が描かれています。
その中でも支配者となったヘリアンの苦悩と成長の部分がメインエピソードとなっております。
突然の異世界転移、NPCであった臣下たちが意思を持った存在となり桁違いの力を誇る彼らの支配者となるといった思いもよらぬ事態が起きていますし、ヘリアンの中の人は元々ただの一般人ですしね。
それがいきなり支配者となって何事も上手くこなす方が無理があるので、ヘリアンが苦悩するのも失敗するのも仕方ないなと理解はできます。
ただ、それを踏まえてた上でも今巻のヘリアンの行いは褒められたものではないなというのが私の感想です。
転移前の世界で一つのサーバ(ワールド)で覇者となった経験を活かした活躍はなかったですし、想定外の事態に巻き込まれた時の行動もその場しのぎの行き当たりばったり結果オーライの様にしか思えませんでしたよ。
メリットデメリットを熟慮したうえで上手くいかなかったなら理解できるのですが、その時にそんな選択しや発言するのかという風に感じてしまいましたね。
個人的な武力が皆無であり最弱の主人公であるヘリアンの見せ場は、支配者としての覚悟と決断にあると思います。
ですので、その見せ場のはずのところで失態を繰り返すとフラストレーションがたまってしまいますね。
ただ、ヘリアンの支配者として未熟なところは作者が意図して描いているので、ヘリアンが経験を重ね成長していくことは期待できます。
今巻では反逆を恐れるあまり臣下に背を向けていたヘリアンが、臣下に心を開く第一歩となりそうです。
支配者としての自覚、臣下に対する接し方の方向性も定まり始めたので、次巻からは他の軍団長たちとも腹を割って話せるようになればいいな。
桁違いの力を誇り、それぞれ個性的な軍団長たちの活躍も本作品の魅力的な点であります。
今巻では”始まりの3人”の一人であり、最腹心であるリーヴェについて掘り下げが行われています。
ヘリアンの臣下に対する接し方もまずいけど、リーヴェ側のヘリアンに対する接し方もまずいよね。
忠義と信奉が高すぎてまずい方向に突っ走っているというか、依存しているように思えました。
個人的に主君の意に沿わなくても主君のためを思えば諌めたり苦言を行うのが真の忠臣だと思うのですよ。
そういった観点で考えるとリーヴェは忠臣ではなく、ヘリアン教の信奉者や狂信者にみえてしまいました。
その辺の主君と臣下の関係の歪さが今巻を読んでいてのフラストレーションの一端に感じました。
お互いに本心を相手に伝えられない状況の主従関係とか読んでいて爽快感が無くて辛かったです。
だから、クライマックスの戦闘シーンとその後のエピローグで歪だった主従関係に改善の兆しがあって本当に良かった。
軍団長同士の会話は気心が知れた戦友同士の会話にみえて面白いんで、その会話にヘリアンももっと参加してくれると面白さが増すはずです。
軍団長たちが人間種族にもっていた誤った認識や、それを聞かされたヘリアンの反応とか面白かったし、もっとヘリアンと軍団長たちの絡みをお願いします!
人間が治める境界都市に情報収集のための橋頭堡をつくることができたヘリアン達。
次巻『アルキマイラ 3巻』ではその橋頭堡を活かして異世界の情報収集を進めていくのかしら?
聖剣伯とも交誼を結ぶことが出来たけどアルキマイラの存在はまだ伝えていないし、外交に入るのかも?
それとも先遣隊を潰してから放置していたノーブルウッドとの戦争をつづけるのかしら?
次巻の展開も気になりますがWeb連載(小説家になろう!)のストックは溜まってないみたいなので、次の刊行まで少々時間あきそうですね。
Web連載(小説家になろう!)で更新された分を読みながら、のんびりと書籍版の発売を待とうと思います。
ネタバレありの感想
ここから下は『異世界国家アルキマイラ 2巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
ヘリアンについて
ただの一般人にみえるけど、窮地の時に火事場のくそ力的な決断や行動をする切れたら危ない人。
それが今巻『アルキマイラ 2巻』を読んで私がヘリアンに抱いた印象です。
その印象を抱いた部分は多々ありますが、分かりやすいところで言えば青騎士との戦いのときですね。
転移の罠にかかりリーヴェに匹敵するクラスの強敵である青騎士と戦わざるを得なくなったとき、
いきなり支配者然とした言葉を発し、リーヴェに己の命を託す決断を下します。
一つのシーンとして捉えれば主人公ヘリアンの見せ場であり、ヘリアンの覚悟と決意が感じられる熱い場面です。
ですが、その場面になるまでヘリアンとリーヴェは意思の疎通がきっちりできておらず、互いの本心を伝えることもできていない訳ですよ。
ヘリアンにとってレイファやリリファとの交流は心の休まる時ではあったけれども、リーヴェには弱みや本心を伝えられず支配者ロールでの接し方しかしていません。
いままで全く信頼している姿を見せていなかったのに窮地でいきなり命を託すような決断を下したんで違和感を覚えてしまいました。
ヘリアンは本心ではリーヴェのことを信頼していたが上手くそのことを伝えられなかったとかの描写あったかな?
自分がそれを見落としていたのならここでの急な決断もおかしくはないのかな。
あと、青騎士との戦闘シーンでヘリアンの見せ場を作ろうとしたのか、
青騎士とリーヴェという桁違いの強者同士の戦いにヘリアンが加わったのも違和感を覚えました。
最弱の王が臣下のために率先して前にでるといえば熱い展開ですが、独りよがりの行動ですしリーヴェの見せ場を奪ってしまった気がします。
ヘリアンが行動を起こす前にリーヴェと意思疎通を行い、リーヴェもヘリアンの強い意志に動かされた上で協力して青騎士を倒すという展開ならまだ納得がいったのですが。
リーヴェの側がヘリアンの意図を読み取る必要があるという、一方的な理解の押しつけに感じてしまったのです。
基本的にヘリアンさん、リーヴェさんに対する言葉が足りない気がしますね。
レイファやリリファに対する気遣いの半分でもリーヴェや他の臣下に伝えれば、リーヴェが誤解や不安を抱くことが減少するんじゃないかしら?
ヘリアンは臣下の反乱を恐れているスタイルですが、根幹には臣下に対する信頼というか甘えがある気がしますね。
リーヴェたちなら自分の意図を伝えずとも納得してくれるはずという考えが根幹にあるから、言葉が足りないんじゃないかな。
そういったヘリアンの誤った部分を諌める存在がいないのが、アルキマイラの組織としての弱点に思えますね。
ヘリアンが方針や決断を下す際の相談役や諌め役がいないことは、どこかで失政に結び付く気がします。
青騎士との戦闘を経て、何事も一人で抱え込まずに臣下にも任せようとヘリアンが考えていましたが、本当に任せられるのかな?
任せられるようになればヘリアンが成長したといえますが、任せるためには任せる相手のことを理解しないといけません。
今後はリーヴェ以外の臣下たちへもヘリアン自身の考えや本心をちゃんと伝え、相互理解を深められるかが気になります。
リーヴェの側もヘリアンに対して依存するのではなく、ヘリアンのためを思えばこそ唯々諾々としたがうのではなく諌めるための中元が出来る真の意味での腹心になれるといいですな。
青騎士とか異世界について
アルキマイラが誇る最強の軍団長たちが異世界の軍勢を蹂躙し無双するさまを楽しもうと思っていたら、二巻にして軍団長に匹敵する桁違いの強さを持つ敵が現れましたね。
私が本作品に臨むのは最強の軍団が敵を蹂躙するという爽快感と、最弱の王が下す覚悟と決意という熱い展開なので早々に強敵が現れてしまうと爽快感の部分に不安がでちゃうな。
同格のプレイヤーと雌雄を決する展開なら面白そうだけど、青騎士さんは意思疎通できるタイプの敵じゃなかったんで盛り上がりに欠けちゃったかな。
ただ、青騎士さんも異世界に元々いた存在じゃない気がしますね。
青騎士さんは聖剣伯の一族に伝わるアラヒトという存在に関係するのではないかしら?
単純に考えれば、アラヒトという存在はヘリアンと同様に異世界に転移したプレイヤーだったのではないかな。
同じ時間ではなく過去の時代に転移したプレイヤー アラヒトが残した拠点が迷宮で、その迷宮をまもる臣下が青騎士さんだったのではないかなと妄想がはかどります。
過去の時代にプレイヤーがいたとするのなら、同じ時間に別のプレイヤーがいたり、未来に別のプレイヤーが転移する可能性もありますね。
ヘリアン対プレイヤー、アルキマイラ対別ワールドの国家というのが考えられる作品としてのクライマックスになるのかな。
果たしてそこまで行くのに何巻費やし何年かかるのかも気になるな。
まだリーヴェ以外の軍団長のキャラクターの掘り下げも終わっていないし、アルキマイラ周辺国家の掘り下げも終わっていないし、クライマックスを予想するのも早すぎた気がします。
1巻で2人の軍団長の掘り下げしたとしてあと4巻必要だし、まだまだ本作品を楽しめるね。
シリーズ感想の索引
異世界国家アルキマイラ 1巻 感想
異世界国家アルキマイラ 2巻 感想
お勧めの作品
私にとって腹心、無二の忠臣と言えばキルヒアイスですね。
単純な武力だけが凄くて腹心というのはちょっと違う気がします。
リーヴェさんがキルヒアイス並みに頼りになる日は来るのだろうか?
東京創元社
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コメント
お疲れ様です!エステルドバロニア買いました。
説明回等を除き半分ほど加筆されていて書き下ろしと言っても差し支えないできだと思いました。
主人公の描写も改善された上に、上手くキャラの視点変更を使って主人公視点だけでは描写がし難いところも補ってあり続きが気になる仕上がりでした。
ななしさん
コメントありがとうございます!
返事がかなり遅くなってしまい申し訳ございません。
エステルドバロニアを購入されましたか。
加筆が多いとWeb版を読んでいても楽しめるしお得感ありますよね。
それに加筆部分はWeb版を踏まえて補うような内容なので面白さも増します気がします。
私もエステルドバロニア購入済みなので、早く読んで感想あげたいと思います。
返信有り難うございます。今巻の加筆はweb版読者には嬉しいですが、未読の方には盛り上がりに欠ける気がしました。
一般受けしにくいのか売上はあまりよくないみたいですね…
ななしさん
コメントありがとうございます!
私もエステルドバロニアを読みました。
加筆による掘り下げのお蔭で面白さは増していましたね。
そして、仰る通り盛り上がりのぶぶんはちょっと弱いようにも思いました。
Web版の第二章を含めるのはページ的に難しいですが、現地勢力との戦闘は入れておいた方が良かった気がします。
今後の展開に期待したいのですが、売り上げが好調ではないというのは気にかかりますね。