“警告の鐘”をもって、ついにバルトラインの帝都・城壁の町(ミュール)に王手をかけたザガノス軍。だが、レレデリク率いる帝国軍4万4千は城壁の町の救援には赴かず、トルキエ将国の首都・金色の町(アルトゥン)へ脱兎のごとく進軍する! それに立ち塞がる四将国。金色の町は防衛に適してはおらず、帝国軍を首都に行かせることはトルキエの滅亡を意味する。四将国は猛攻を凌げるか!? それともレレデリクの逆王手なるか!?
アニメ人気放送中の『将国のアルタイル』
12月6日に発売された最新刊『将国のアルタイル 20巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
ネタバレなしの感想
『レレデリク』率いる帝国軍4万4千はトルキエ将国の首都・金色の町への進撃を行う。
窮地に陥ったトルキエ将国を救うべき帝国郡の前に立ちふさがる四将国。
帝国軍をここで止めねば首都・金色の町は陥落し、トルキエ将国は滅亡に陥る。
四将国は『レレデリク』の猛攻を防ぎ、トルキエ将国を救うことはできるのか!?というお話です。
新兵器「警告の鐘」を用い帝国が誇る城壁を崩し、帝国の新貴族たちの反撃すら防ぎ圧倒的な優位にあると思っていた「トルキエ将国」がいっぺん滅亡の危機に瀕するとは予想外もいいところでした。
大半の兵を帝国侵攻に用い兵力が足らず、更に指揮官として『ザガノス』も『マフムート』も不在の絶望的な状況のなか、圧倒的優位な帝国軍の前に立ち塞がったのは、かつて『マフムート』とともに戦った四将国の後継者たち。
これは燃える展開でした。
兵力的にも質的にも圧倒的な帝国軍を前に立ちふさがり、地の利人の和を用いて互角に戦う四将国側の奮闘に手に汗を握りました。
『マフムート』がほぼ登場していない上に、戦場での劣勢という状況が続くため、読者としてのフラストレーションが溜まる危惧すらある展開ともいえますが、そんなことはありませんでした。
かつての四将国の反乱をともに戦った将王たちの成長を、才能を、覚悟を見せ付ける展開の面白さにページをめくる手が止まりませんでした。
戦場で知勇を競い奮闘する帝国軍と四将国の姿にも興奮しましたよ。集団戦の面白さを描いてくれる作品は少ないですし、それを面白く描いてくれる作品は更に希少ですのでこの作品と出会えたことに感謝です。
共に相手に対する王手をかけ、まさに戦場の決着がつきそうなそのときに次巻に続きましたが、すごく続きが気になりますし読みたいですよ。
雑誌連載分はすべて書籍化されていますし、続きを読みたい場合は今月末発売のシリウスを待つしかないですね。
私は単行本派ですが雑誌を買ってしまおうか悩みますね。この巻の引きで2018年夏までまつとか無理すぎる(笑)
ネタバレありの感想
ここから下は『将国のアルタイル 20巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
四将国対帝国軍
歩兵の練度は帝国が上、兵数も帝国4万に対し2万と約半数の四将国側です。
ただでさえ劣っている上に同格の将王が4人(アイシェは将王ではありませんが将王代理として同格としています)もおり、指揮権の確率で揉めえる可能性もありました。
ですが、四将国側は揉めることもなく指揮権は『イスマイル』に譲渡されます。
この決断は、四将国の内乱の際に現将王たちが互いの能力を知り得ていたことと、反乱を戦い抜いた同士としての信頼があったからだと思います。
トルキエ将国の弱体化を狙い起こされた四将国の内乱でしたが、弱体化は成功こそしましたが四将国間の連携を強固とし、帝国の起死回生の一手の前に立ち塞がるという失策ともいえます。
帝国の侵攻軍の前に立ち塞がりました四将国側ですが、地の利(進撃路が決まっていることと、泉の街からの砲撃あること)人の和(四将国の団結)があれど戦況は劣勢です。
普通に考えて練度が劣るうえに兵数が倍違うのですから、勝率はかなり低いこととなっています。
元々考慮していた勝機は帝国軍指揮官『レレデリク』を討ち取り、帝国軍の指揮を崩壊させるという作戦でしたが、「山の楽団」の初撃を防がれた時点で勝率はより下がっているように思えます。
しかも、逆に四将国側の総指揮官『イスマイル』の前に敵軍機変が迫りつつあるとう状況です。
逆に指揮官を打ち取られ四将国側の敗北すら見えてきています。
普通に考えれば四将国側の敗北でしょうが、ここで気になる点が2つほどあります。
まず1つ目は「頭が死ねばあんたらは楔を失う」と帝国軍に対していっている点ですね。
逆に言えば四将国側は「頭が死んでも楔を失わない」と言っているようにも思います。
元々同格の将王4人の連合軍の形である四将国側は、たとえ『イスマイル』を失ったとしても他の将王に指揮権が引き継がれる様に打ち合わせをしているか、瓦解したとしても将国単位でまとまるかするように思います。
逆に言えば、『イスマイル』目指して進撃した騎兵の穴を四将国側がつく可能性もあるのではと思います。
開戦前に『イスマイル』が述べていた「あんたらの命より目標の達成を優先しますよ?」という言葉の中には、『イスマイル』自身の命も暗に含んでいた気がします。
自身の命を大事にするよりも目標達成を優先する。つまり勝機があれば自身の命すらおとりにするような作戦だと思います。
2つ目はトルキエ将国の希望の星『マフムート』の存在です。
帝国軍にはこれ以上の援軍はありませんが、トルキエ将国側には援軍の存在があります。
しかも『マフムート』が砦の町を通過した際に『イブラヒム』の独白で「首都に戻ったところでもうトルキエに帝国を迎え撃つ余力は残っていないかもしれんぞ」とある通り、『マフムート』が首都に戻らず、駆けつけた勢いのまま帝国軍に突撃する気がしますね。
それにしても『将国のアルタイル 20巻』の本編では2コマしか主人公『マフムート』が登場しないとは(笑)
それでも内容が濃く、とても面白く感じるのは、作品自体が個人に焦点を当てただけの内容ではないことと、各登場キャラが主人公に劣らず存在感を放っているからでしょう。
そんな魅力的なキャラクターが次巻では何人散っているか、その予測もつかない展開にも興味と興奮がつきませんね。
次巻も発売を楽しみに待ちたいと思いますが、それ以上に本編の続きが読みたいので連載分に手を出してしまおうかな。
帝国軍の陣営
今巻では帝国首都攻防戦は膠着状態との事もあり印象が薄いです。
堀の水の抜き方はダイナミックでしたが、戦況が動いたわけではありませんからね。
きっと帝国首都攻防戦が次の局面に移るのは、四将国対帝国侵攻軍の戦況が伝わった時になるかと思います。
そして艇庫常備軍ですが、失った将官たちの数を知ると物語上の敵ですが寂寥感すらありますね。
『将国のアルタイル 20巻』のスタッフロールの見開きは帝国常備軍の将官が描かれています。
既に死亡した将官、この場にいない将官は黒塗りつぶしとなっていますが、ほぼほぼ塗りつぶされすでにソンザしない状態となっています。
その状態ですらトルキエ将国の侵攻を防ぎつつ、逆侵攻でトルキエ将国首都に迫りつつあるという恐るべき陣容ですね。
こんな相手を救国の一戦を戦わざるを得ない四将国側に同情をしてしまいます。
そして以前スタッフロールのページで描かれていたのは四将国側も同じです。
その時には黒塗りつぶしをされた将王はいませんでしが、次巻『将国のアルタイル 21巻』のスタフロールの見開きページで何人の将王が黒く塗りつぶされることになるのか。
そのページを見ることが少し怖いですね。
シリーズ感想の索引
将国のアルタイル 20巻 感想
将国のアルタイル 21巻 感想
将国のアルタイル 22巻 感想
お勧めの作品
今回のお勧めは『将国のアルタイル Vol.1 [Blu-ray]』です。
アニメ将国のアルタイルは尺の問題で削られる部分がありましたが、それでも映像として存在することが驚きであり喜びでありますね。
帝国侵攻前の流れをおさらいする意味でアニメ版を見るのもお勧めです。
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