高校に入学した日。野田進は桜の木から落ちてきた清楚系女子、宮村花恋と運命的な出会いをし、誰もが羨む高校生活を手に入れる。だが進は、そんな普通の幸せに満足できなかった。「あなたは、青春不感症なんです」そこに、エキセントリックな孤高の天才児、西條理々が現れる。彼女の言葉で、進の日常は甘くきれいに溶けだした。「私の足を舐めろ、です。大人の味を教えてあげます」友人も、家族も断ち切って、世間から孤立する。進と理々だけの秘密の共犯関係―“楽園追放計画”が始まった。目を背け、逃げ続ける。ふたりだけの幸せを信じて。第30回ファンタジア大賞“審査員特別賞”受賞作。
『青春失格男と、ビタースイートキャット。 』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
Twitter上でフォロワーさんや、ラノベブロガーさんが話題にされていたので購入しました。
私のアンテナ能力ではこの作品は見逃していましたし、購入して読む機会もなかったはずです。
そういう意味でフォロワーさんやラノベブロガーの皆さんの眼力に感謝ですね。
ネタバレなしの感想
友達や恋愛に全く興味がなく、むしろ面倒くさいと感じている主人公の野田進。
彼は自分が友達や恋愛に興味がないことを隠し、周りに合わせて過ごしていたが、そんな彼の本質を見抜いたヒロインの西條理々と出会う。
野田進と西條理々、共に普通の青春に適用できない2人が出会い、自分たち以外のすべてを切り捨てて2人以外のすべてを切り捨てる計画を始める。
という感じで、世間一般で良きものとされている友情や恋愛に共感できない2人が、理解してくれない世間を切り離し2人だけで過ごすために奮闘していく物語ですかね。
主人公たちが高校1年生という設定もあり、思春期特有の自己特別視と世界の狭さが描かれている気がしますね。
読者である私は思春期を懐かしむくらいには年を重ね大人になりましたので、主人公たちの心情に共感は出来ません。
ですが、思春期の渦中にいる方や思春期を抜け出したばかりの方であれば、きっと共感できる内容なのではと感じました。
世間では素晴らしいとされる友情や恋愛といった青春の要素を素晴らしいと思えない自分たちは他の人たちとは違うという思い。
そんな自分たちは決して世間一般には理解されることは無いという考え。
理解されることがないはずの自分を理解してくる特別なヒロイン西條理々の存在。
そんな特別なヒロインである西條理々と行う隠微で背徳的なprpr(ぺろぺろ)プレイ
高校一年生にしてprprプレイとかマニアックすぎてヤバいですね!
普通ではない自分を理解してくれる唯一無二の存在とマニアックなプレイとかハマる人にはハマりますし、刺さる人にはメチャクチャ刺さりそうなシチュエーションですよ。
そんな特別な存在と共に世間を切り捨てて互いだけを必要とする世界を築こうとする二人ですが、2人ともまだ高校生であり、大人ではないという点が障害となり、計画を実現するために苦戦していきます。
最も大切な存在を切り捨てることが出来ず、計画が破たんする寸前に行った野田進の選択は、賛否両論が出てくるかと思います。
少なくとも私は野田進の選択には全く共感できませんでした。
大切な存在だけを選び他を切り捨てるほど強くなく、世間に合わせて自分を周りを偽ってくほど覚悟もない、子供だからこそだせる狡さというものを野田進から感じました。
私がこの作品を好きになれない理由の大半はこの野田進というキャラクターの存在にあると考えています。
いやいやネタバレなしで感想が書きにくい作品ですね(笑)
この作品が好きか嫌いかで言えば、私はこの作品のことを嫌いですね。
ですが、面白いか面白くないかでいえば面白かったですし、先の展開も気になります。
野田進の選択の結果、小康状態となった楽園追放計画の行く末が描かれることを望んでしまいますね。
現状の小康状態のまま楽園追放計画が上手くいくはずがないと思いますし、上手くいってほしくないと個人的に思っています。
色々と思わせぶりな描写や伏線もありますし、続きが気になるんですよね。
続刊が出てくれれば発売日に購入して読みたいなとは思いますね。
ネタバレありの感想
ここから下は『青春失格男と、ビタースイートキャット。 』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
主人公 野田進について
ネタバレなしの感想に書きましたが、私は野田進のこと嫌いですわ。
野田進の傲慢さと半端な優しさ、そして自己特別視が本当に合わなかったですね。
思春期故の状態だから仕方ないのだろうし、野田進に共感を抱けるのは同じ思春期の方だけだろうから私が合わないのは当然なんだろうけど、一つ一つの考えが本当に合わなかったですわ。
周囲に理解されるわけがないと考えるのは仕方ないにしても、そんな周囲に理解される様に何か行動を起こしたわけでもなく、逆に周囲を理解するように行動したわけでもない。
何故に周囲の側が野田進の考えを理解するように努め、野田進の考えを尊重しないといけないのか?と疑問視をしながら物語を読んでいましたよ。
一度切られたフォロワーを戻さず、切った人間は自分のことを信用してくれない上辺だけの友人と述べていましたが、上辺だけにしていた原因は野田進側にあるのに何言ってんだろうなと思いました。
野田進が楽園追放計画を継続するために宮村花恋の好意を利用したところは最も狡猾に感じました
目的を達成するために相手の好意を利用する。
周囲を騙すために1人の人間の好意を犠牲にする。
そんな野田進の行動に全く共感できるわけがありませんわ。
宮村花恋からすれば納得した上での行為なのでしょうが、読者視点の私はまったく野田進に好意を抱くことが出来ませんよ。
覚悟をもって非道な行為を行えるのなら理解はできないまでも、納得はできるんです。
ですが、野田進の行為って中途半端で小賢しいとしか思えないんだよなあ。
友情や恋愛を面倒くさいと思うところは野田進だけが特別ではないでしょうが、この周囲への無関心さと非情さは十二分に特別だといえます。
自分に好意を抱いてくれている相手を自覚したうえで利用し傷つけられるって本当に凄いですよ。
人の心があればそんな行為はできませんし、やったしても罪悪感でつぶれると思いますから。
楽園追放計画の成否には宮村花恋の献身が必須の要件となっています
野田進が今の心情で今後も宮村花恋と仮面恋人を続けていけるのか?という点もネックになっていくと思います。
野田進と宮村花恋の関係が変化するのか?という点と、楽園追放計画が継続していけるのかという点が本当に気になりますね。
私個人としては今のまま野田進が幸せになるなんて許せないので、このままいかずに波乱が起きることを期待です。
この作品の結末としてこのまま波乱もなく野田進と西條理々の意識が変わらぬまま、2人だけの閉じた世界に引き籠るのは決してハッピーエンドとは言えないと思うので、どういった結末を迎えるかは気になりますね。
シリーズ感想
青春失格男と、ビタースイートキャット。
お勧めの作品
周囲と違う自分たちを隠すための共犯関係という事で『〈小市民〉シリーズ』と悩みましたが、今回は性的要素もあるこちらの『ナナとカオル』の方をお勧めします。
主人公であるカオルも自身の性癖が特殊であり理解されないという閉塞感がありましたが、野田進と違って不快感はありませんでしたね。
周囲から理解されないという点は両者同じでしたが、理解してくれない周囲を切り捨てるのではなくそれを受け入れたうえでヒロインであるナナと共に理解してくれない世間をうまくやり過ごすところが違いなのかもしれないですね。
理解を求めないのであれば世間との共存を図るべきなのかもしれないですね。
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