『Fate/strange Fake 4巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
この感想は旧ブログサイトの記事を修正と改編したものになります。
シリーズの新刊『Fate/strange Fake 5巻』の発売がいよいよ後一週間!
その興奮を落ち着けるために旧ブログの記事を移転することで作品の振り返りをいたしました。
あらすじ
成田良悟が書き下ろす『Fate』スピンオフ、待望の第四巻登場!
十三柱の英霊達が揃った瞬間から始まった『七日間限定』の聖杯戦争。スノーフィールドは一見して平穏のまま二日目の朝を迎える。だが街は静かに、しかし確実に蝕まれていた。
全てを見通すクラス『ウォッチャー』を召喚した兵士の青年は、狂信者の『アサシン』と対峙し、そしてさらにもう一組の乱入者を迎える。
神を憎む英霊の前には『女神』を名乗る女が現れ、機械仕掛けの『バーサーカー』による猛威が魔術工房に吹き荒れる。
己の正体を求める『殺人鬼』は時計塔の麒麟児とともに、一人のか弱き少女を救うため強者へと挑む。
連鎖する衝突、日常への浸食。新たな局面を迎えた各陣営の思惑はいかに。
ネタバレなしの感想
偽側、真側の英霊とマスターが揃い、偽りの聖杯戦争の幕が上がるというところが前巻の引きでした。
ですので、今巻ではその引きに描かれていた戦闘シーンの続きから始まるのであろうと思っていましたが、続きの部分は今巻のクライマックスになっていました。
遂に始まった英霊同士のガチンコバトルですから、クライマックスに持ってくるのは正解でしたし、大いに盛り上がっていましたね。
謎の英霊アルケイデス対切り裂きジャックの戦闘シーンは熱い戦いでしたし、アルケイデスを相手に奮闘したジャックの戦いは聖杯戦争序盤とは思えぬ決戦といえましたよ。
単純な力量差といいますか英霊の質からすればアルケイデスが圧勝してもおかしくないところを、ジャックが持つ英霊としての逸話を拡大解釈することでアルケイデスを圧倒する力をえるところが本当に盛り上がりました!
間違いなく強者である英霊アルケイデスすら聖杯戦争序盤で敗退するのかとすら思わせてくれましたからね。
アルケイデスの方も自身の持つ逸話をモチーフにした能力を用いてジャックの驚異的な力に対応するところなどは、互いに英霊としての力を存分に発揮する戦闘シーンの巧みさを感じましたよ。
アルケイデスもジャックもどちらも魅力的に描かれており、こんな魅力的な英霊がバトルロイヤルを繰り広げるからこそ聖杯戦争というモチーフが面白いし興奮するのだなと納得できる出来でした。
誰にも退場してほしくないと思ってしまいますが、徐々に減っていくのがバトルロイヤル物の面白さだし仕方ないですよね。
でも、4巻まで描かれていて脱落した英霊ゼロってことはこれからどんどん脱落していくのか、巻数二桁を越える長編になるのか気になります。
面白さのあまりアルケイデスとジャックの戦いばかり触れてしまいましたが、真バーサーカーの戦いの方も盛り上がっていました。
真バーサーカーの正体と真バーサーカーのマスターであるフィリアに憑りついたというか乗っ取った存在が気になります。
真バーサーカーコンビの事も掘り下げたらギルガメッシュやエルキドゥも絡んでくるでしょうし、これあと数冊で終わるの無理じゃないかしら?
私的には面白い物語が小さく畳まれてしまうくらいなら、巻数を使って大きく広げてから畳んでほしいと思いますので、どんどん話を大きくしろって思っています。
英霊という存在のお蔭で戦闘場面は大いに盛り上がりますが、聖杯戦争の面白さとして欠かせないマスターの存在、マスターと英霊の関係についても今巻でもきちんと描かれています。
今巻でスポットが当たっていたのはジャックとコンビを組んでいるフラットくんですね。
フラットくんについては気づいたら本作より『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』の方の印象が強くなっています。
これは『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』の方が定期的に刊行されていたし、あちらでも活躍する場面が増えてきていたというのが大きいと思います。
今巻ではフラットいという人物の成り立ちや根幹が描かれております。
フラットにとってのエルメロイⅡ世や教室の仲間たちは他に変えることの出来ない貴重な存在であり、フラットが信ずるに足るものだということが分かります。
何物にも代えられない貴重なものを、他者に譲ることの出来ない存在を、自身が信ずる存在をもっているものが、今回の聖杯戦争の舞台にマスターとして立つための資格なのかもしれません。
そういった自身の中にある貴重なものを持たない存在であるシグマは聖杯戦争には参加していますが、マスターとして聖杯戦争の舞台に立っているとは言えないのかもしれません。
だからこそ、シグマが視点のシーンが【幕間】となっており、聖杯戦争の舞台とシグマがいる場所はは別であるとされているのでしょう。
シグマは偽アサシンに己が信ずるべきものを持たぬことを告げています。
そんなシグマが信ずるにたる何かをこの偽りの英雄戦争で見つけることが出来るのかも楽しみです。
ネタバレありの感想
ここから下は『Fate/strange Fake 4巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
シグマについて
ランサーのチャップリンを相棒として偽りの聖杯戦争を戦う生存率限りなくゼロのマスターシグマくんです。
チャップリンってあの手にしているステッキで相手を突くのか?という冗談はほどほどにしておきますか。
ネタバレなしの感想にも書きましたがシグマくんは己が中に譲れないものを持つわけでもなく、聖杯に願う強い思いもありません。
マスターとして参加はしていますが聖杯戦争という舞台には立っていない、それがシグマくんの立ち位置です。
己が中に強い何かの存在がないのですから、そもそも命を懸けて聖杯戦争を戦う必要はありません。
だからこそ命を拾うために、生き残ることのみを目標に足掻いているのがシグマくんなのです。
ですが、これが悪いわけではありません。
己の内にある強い思いを叶えんと欲しながらも夢破れて絶望の中で死んでいく聖杯戦争という舞台を考えれば、強い想いのないシグマくんは死亡フラグを回避しているともいえますしね。
でも、個人的な好みで言いますと、無力であり大切な物を何も持たなかった人間が戦いの中で物語の中で他者には決して譲れない大切なものを見つける展開や、その大切な物を守るために自分が劣っていることを理解しながらも必死に足掻く展開が大好きなんですよね。
だからこそ、何も持たないシグマくんには大切な物を見つけてほしいですし、それを得て成長する姿を見せてほしいです。
フラットとジャックについて
今巻のメインは間違いなくフラットとジャックの陣営といえます。
彼の特異性は本作を始めとしたFate関連作品でもみてきましたが、想像以上に重い過去があったことに驚きました。
飄々としたフラットの人物像からは想像もしていませんでしたよ。
フラットには誰にも理解されないし受け入れられないという素材感、他者と根本的に違うことからの孤独感がありました。
偽りの自分ではなく本当の自分でも受け入れてくれる場所であるエルメロイ教室の仲間たちと出会えたことで、フラットはこの世界にも居場所を見つけられたのです。
魔術師でありながら家名よりもエルメロイ教室のフラットであると語るところにフラットの中にあるエルメロイ教室の重さが伝わってきて胸が熱くなりましたよ。
フラットの根幹、エルメロイ教室との出会いや想いの大きさを知ると『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』を読み直したくなるな。
そしてフラットのサーヴァントである偽バーサーカー ジャック・ザ・リッパー
今巻ではアルケイデスと死闘を繰り広げていましたが、大英雄アルケイデスを倒せる存在がいるとすれば第一の候補はこのジャックであると考えていたので、この戦いは興味深かったです。
神を憎み人である自分に固執しているアルケイデス、そんなアルケイデスを倒せる存在がいるのならば殺人に特化した存在であるジャック・ザ・リッパーこそが適役ではないかと考えていました。
夜の闇を恐怖に染め上げたフォークロア ジャック・ザ・リッパーが、アルケイデスを一方的に蹂躙する姿には本当に興奮しました
神代の大英雄アルケイデスをあと一歩まで追い詰めたジャック・ザ・リッパーの姿こそが聖杯戦争の恐ろしさであり、面白さだと思います
アルケイデスをあと一歩まで追い詰めたところで、アルケイデスの奥の手である「天つ風の簒奪者」により宝具「悪霧は倫敦の暁と共に滅び逝きて」を奪われ破れてしまいました。
敗れはしましたが、人としての力(フォークロア)で神代の大英雄を追い詰め認められた訳ですから大健闘ともいえます。
ただ、能力を奪われ一敗地に塗れたジャック・ザ・リッパーが、今後正面からの戦闘で神代の英雄相手に戦うのは難しいのは確かです。
続刊でジャック・ザ・リッパーが聖杯戦争に残ることが出来るのか? 退場するにしても納得した上での退場になるのかが気になります。
シリーズ感想の索引
Fate/strange Fake 4巻 感想
Fate/strange Fake 5巻 感想
お勧めの作品
今回のお勧めはもちろん『Fate/strange Fake(5) (電撃文庫)』です。
待ちに待ったシリーズ最新刊である『Fate/strange Fake 5巻』の発売日は2019年4月10日になります。
後一週間辛抱すれば遂にあの激闘の続きが読めますよ!
続きを読むまでにで2年も待つことになるとは思いもしませんでしたが、待っていた分きっと面白さも桁違いのはずなので期待大です。
KADOKAWA (2019-04-10)
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