『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 1巻 ~ヘンダーソン氏の福音を~』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
小説家になろうで掲載されているWeb版『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す ~ヘンダーソン氏の福音を~』は既読です。
Web版からのファンなので書籍化は嬉しかったですし、迷わず購入いたしました。
大凡の内容はWeb版に沿っていますが、修正・加筆があるのがうれしいところです。
特にこの巻の締めにあたるクライマックスのエピソードは面白かったですし、熱さに胸が震えましたよ。
とってつけたようなただのオマケではなく、本編に関わる内容かつ書籍としても面白くなるように加筆されている点は高評価です。
全体的にオーバラップ文庫の作品はいい感じに加筆・修正が行われている様なので、Web版が好きな方なら書籍版の購入をお勧めできますね。
あらすじ
「データマンチ」――それは、データ上可能であれば神殺しにさえ興じる変人。
そんな「データマンチ」だった前世を持つ少年・エーリヒは、異世界への転生時に授かったキャラビルドの権能を活用して理想の強キャラにならんと画策する。
妙に蠱惑的な幼馴染との遊戯やブラコンな妹のお世話をする中、頭を捻ってデータを隅まで舐め回し、熟練度をやりくりしながら極悪コンボを模索していくエーリヒ。
しかし彼が思うよりも早く物語(セッション)が動き出し、エーリヒは大切な者を守るため戦いに身を投じる(サイコロをふる)ことになり……!?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、ここに開幕!
ネタバレなしの感想
TRPG大好きで和マンチ(マンチキン)の気のある主人公が異世界に転生し、その特質を発揮して効率的かつ理想主義的な成長を遂げていく異世界ファンタジーです。
和マンチというのはTRPGのシステムやルールに精通しているが故に、ルールで認められた範囲内で強力なキャラクターを作るTRPGプレイヤーの事だそうです。
私もTRPGは学生時代に何度か遊んだことがあるくらいの疎さですが、それでも本作品を十二分に楽しむことができました。
主人公エーリッヒが自重している風で全然自重できずにスキルを取得したり、スキルを上げる姿も面白かったですし、
そのスキルを取得するきっかけとなった出来事や取得した結果の描写が本当に面白いんですよね。
いくら将来的に無駄にならないからと自分に言い聞かせても、かくれんぼで勝てないからって複数のスキル取得するのはやりすぎでしょ(笑)
経験値のため方は効率主義の権化なのに成長については意外とロマンビルドなところは、エーリッヒの主人公としての魅力の一つに思えますね。
といった感じで成長についてはあまり自重しないエーリッヒの活躍が楽しめるのが本作の第一の面白いポイントです。
ただ和マンチの特性を生かして驚異的な成長を遂げてはいますが、転生先の異世界ではヒト種は種族的に能力に優れた種族ではありません。
そのため、エーリッヒも圧倒的な強者ではないという点もあり、きっちりとバランス調整がなされているところも本作が面白くなっているポイントかなと考えています。
強い主人公が活躍する作品はそう快感がありますが、一方で大人役や敵役が弱すぎると物足りなさが出てしまいますからね。
それにエーリッヒが最強ではなく足りないところがあるからこそ、その不足を埋めようと試行錯誤してスキルを取っていく姿が興味深いですし、取得したスキルがハマった時の爽快感が増すんだと思いますよ。
エーリッヒ1人で何でもできてしまうと他のキャラクターの見せ場もなくなってしまいますからね。
書籍化にあたり追加されたクライマックスのエピソードで見せてくれたヒロインのマルギットちゃんの活躍は良かったです。
マルギットちゃんのフォローが無ければエーリッヒは冒険に出る前にお星さまになった可能性が高いですものね。
エーリッヒのことを信じているから発揮できた強さと、彼を失ってしまうんじゃないかと思い見せてしまった弱さのギャップが良く実によくマルギットちゃんが本当に魅力的に思えました。
マルギットちゃんのエーリッヒへの思慕というか獲物を狙うかのような強き想いを見ちゃうと、正ヒロインはマルギットちゃんで決まりですよ。
アラクネという種族の特性で幼く見える外見と、そんな外見と反比例するかのような精神年齢の高さは中身アラフォーのエーリッヒも抗えない魅力ですよね。
ヘンダーソンスケール1.0でみせてくれたifストーリでの大人になったエーリッヒとマルギットちゃんの姿は本当にあり得る一つのハッピーエンドとして十二分に楽しめましたよ。
挿絵のちからもありますがあんな蠱惑的な魅力があり、好意をぶつけてくれるマルギットちゃんに抗えるわけないですものね、エーリッヒ仕方ないよと思います。
書籍化にあたり挿絵がついたことでマルギットちゃんの魅力がマシマシです。
人外ヒロインが好きな方ならぜひ本作品を読むことをお勧めいたします。
そして、主人公エーリッヒの成長要素、ヒロインのマルギットちゃんの魅力以外にも転生した先の異世界の世界観の作りこみも本作品の面白さのポイントであります。
エーリッヒが住む荘園やその荘園が所属する三重帝国での暮らしや生活様式が、エーリッヒの日々の暮らしの中で描かれているところは説明臭さが感じず自然に頭に入ってきた気がします。
主人公エーリッヒの考えの根底があり、彼が生活する世界が地に根付いていると感じられるからこそエーリッヒの行動に違和感を覚えず物語にハマることが出来たのだと思います。
きっちりとした国家だからこそ身分の壁はとても厚く、その厚き壁を超えるには縁故の力か完全実力主義の冒険者化というのは身につまされるお話ですね。
エーリッヒは冒険者となることでその厚き壁を破り、どのような未来を手に入れるのかが今後の物語の楽しみとなるかなと思います。
クライマックスで現れた長命種の美女の口から発せられた「半妖精」の言葉
この言葉の意味と重要性さ次巻にお預けです。
続きもとても気になりますので、続刊が出たら購入してまた感想を書きたいと思います。
ネタバレありの感想
ここから下は『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 1巻 ~ヘンダーソン氏の福音を~』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
クライマックスの戦闘について
Webで掲載されている原作の方を読んでいただけにクライマックスの展開にはいい意味で驚きました。
えーとエリザが半妖精であることが村に来た魔導士の口から語られて物語が動き出すんだよなって思ってたら、まさかのエリザ誘拐の流れにびっくりですよ。
しかも、その誘拐犯がエーリッヒと同様に前世の記憶もち&転生特典もちとか中々に面白い流れで、書籍版を購入したことに大満足の内容でした。
現状のエーリッヒでは届かない強力な敵を相手を前にしながらも、大切な妹を助けるために必死に立ち向かう姿は熱い展開で大好きです。
マルギットちゃんを危険視する姿や、エーリッヒを独り占めできなくて拗ねてしまう姿とか見ていると、Web版に比べてエリザの可愛さと庇護欲をそそる描写が増している気がするんですよね。
エリザを可愛く守るべき存在だと描写されているからこそ、エーリッヒが命がけで奮闘する理由の裏付けになっている気がします。
エーリッヒ以外の転生者が登場するのってWeb版の最新話までの内容にも無かったですよね?
エーリッヒの転生の理由を考えればエーリッヒだけが特別に転生とも考えられませんし、書籍版では他の転生者がこれからもでてきたりするのかしら。
おおよそWeb版の内容を踏襲しながらも書籍版の追加要素があると今後も書籍版を購入する楽しみになりますね。
次巻はWeb版の内容を踏襲すると考えるとエリザを護るために親元を離れる展開になるのか。
続きを早く読みたいので今年にもう一冊出てくれるとうれしいな。