ヤケ酒の帰り道に、家出JK・沙優を拾ったサラリーマンの吉田。そのまま始まった微妙な距離感の同居生活にも慣れてきた頃、沙優から“お願い”を切り出される。「バイトをさせてください」「いいぞ」「いいぞって!…え、いいの?」遠慮ばかりだった沙優が「自分のやりたいこと」を教えてくれた。それだけのことがなんだか嬉しい吉田。そんななか、元片想い相手である後藤さんに、なぜか2人きりの夕食に誘われて―「吉田君のお家に行きたいって言ってるんだけど」サラリーマンと女子高生の日常ラブコメディ第2巻。
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 2巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
年の差カップル作品として人気の本作品ですが、今回の内容は随分と深く重たいところに切り込んできましたね。
ファンタジー要素を控えめ(可愛くスタイルのいいJKや勤務先の女性陣も美人ぞろいというファンタジー要素は仕方ない)の本作品では触れずに済ませられないとは思いますが、『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 2巻』で触れてくるかとチョイ驚きましたね。
その辺の話は感想で触れて生きたいと思います。
ネタバレなしの感想
とある事情から北海道の家を飛び出し身体を提供することで一夜の宿を得ていた女子高生 沙優と、そんな沙優を拾い無償で居場所を提供した 吉田の物語の第2弾です。
面白かったですよ。
家出女子高生を拾い、善意から無償で自宅に匿うという多くの男性陣が夢見たファンタジーを物語化してくれる素敵な内容です。
主人公の吉田、ヒロインの沙優は当然ですが、その周囲の人物たちも人間性が良いので読んでいて精神を削られないのがとても良いです。
沙優にできた新しい友人のあさみは、本当にいい子過ぎますね。沙優にもあさみにも幸せになってほしいですよ。
もう一人の新キャラクターについては読んでみて判断してほしいですね。
この新キャラクターの行いは許せない部分が多いのですが、指摘事項については反論が難しく考えさせられる部分もあったと思いますから。
家出女子高生を匿って同棲生活をするというファンタジー物語の良さは1巻に引き続き描かれています。
ですが、2巻ではファンタジーな良さだけにとどまらず、その行いの現実的な問題やリスク、大人としての責任の取り方がしっかり描かれており考えさせられる内容であありました。
主人公を社会人としているのも、現実世界を舞台にしているのも、2巻の内容を描くためにあったといえると思います。
吉田と沙優の関係が社会的には正しい関係ではなく、その関係を続けていくことも許されるものでもない。
善意で匿っていたとしてもその行為自体は決して正しい行いではない。
吉田と沙優がそれぞれ目を逸らしていた辛い現実を告げられ、今の関係が永遠に続く関係ではないと自覚するところこそ今巻の一番面白く心動かされる部分だと思います。
沙優の緊急避難的な家出から始まった2人の関係ですから、緊急避難の原因である事情を解決し沙優が帰れるようになるまでの一時的な関係に過ぎないですし、永続的に続けてはいけない関係でしょう。
この関係を一時的なものとするために吉田と沙優が何を行い何を変えていくのか、次巻『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 3巻』の内容もとても楽しみです。
楽しみにしているのは2人の関係の変化だけではなく、吉田自身の恋愛事情も進展するのかも楽しみにしています。
今巻の内容からすると後藤さんを好きになった人と嫌いになった人とで大きく別れていそう気がします(笑)
私自身は1巻のころより好きになりました。
ネタバレありの感想
ここから下は『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 2巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
吉田と沙優について
2人ともいい人たちなので幸せになってほしいと思っていますが、今の関係を継続して欲しいし結ばれて欲しいとは思いません。
このまま吉田と沙優が結ばれたとしたら、これまで沙優を受け入れた男性たちとの違いは何だったんだろうなと考えてしまいます。
性欲目的で沙優を受け入れていた他の男達は悪であり、性欲目的ではなく沙優を受け入れた吉田は正しいのでしょうか?
どちらも沙優の一時的な居場所を作り避難所を提供したという点は一緒であり、匿う以上の責任を取っていないという点でも一緒だと思います。
矢口が指摘したとおり吉田の行いと性欲目当てのほかの男達に大きな違いはありません。居場所を与える代償としての性行為が介在するかしないかの違いだけに過ぎません。
他の男と吉田の行為に大きな違いはないと指摘する矢口の言葉は鋭く、吉田だけではなく吉田の行為を是としてきた読者にも痛烈な皮肉になっていますよね。
その前の場面で襲われかけている沙優の助けに吉田は間に合うのか?といったとても気になる展開だったのに、その展開よりも矢口の痛烈な指摘の方が印象に残りましたよ。
矢口の指摘に反論する術は私にも無いです。
家出女子高生に大人として責任が取れる行為とは、一時的な避難場所としてただ匿うことではないはずです。
家出の原因となった事情に対して関わり、一助となることではないかと考えます。
相手の抱える問題に対して責任を持つ覚悟が無いのならば大人として関わるわけにはいかないとも思います。
ですから、矢口に指摘されたことで吉田自身が今の沙優と関係の欺瞞に気づき、「沙優に普通の女子高校生に戻って欲しい=沙優を家に帰すという」という大人としての責任ある行動をとろうとしたことは大きな転換期なのだと思います。
吉田と沙優が結ばれるにしても今の関係のままでは結ばれることは無いと思います。
吉田が沙優を守っている理由の一つに「子供を助けたい」という気持ちがあります。
吉田が沙優のことを「大人として困っている子供を匿っている」のであれば、吉田は沙優のことを子供としかみず、対等の人間であり恋愛対象としてみることもないのでしょう。
吉田と沙優が結ばれるためには、対等の人間となるためには、今の関係を清算し改めて出会いをしなおす必要があると思います。
今巻で今の関係をもう少しだけ続ける決断を2人はしましたが、その関係が終わったときに初めて吉田と沙優が恋愛関係になれるか否かが決まってくるのだと思います。
もしも今の関係のままで吉田が恋愛対象として沙優を受け入れたら、矢口ではありませんが私も吉田のことをあざ笑ってしまいますし、本作を読むのはやめようと思います。
後藤さんについて
やっぱり吉田に対して好意をもっていましたね。
後藤の心情が少し分かりましたので、思わせぶりな面倒くさい女性という側面は若干減った気がします。
吉田の行いを知っている周辺人物が吉田の行為を是としていたため、常識的な面から行為のリスクを伝える役割を果たしています。
沙優には辛い事実ですし、沙優への好意だけではなく後藤にとっての過去の自分に対しての代替行為でしかないのかもしれませんが、後藤が伝えたことは沙優にとっても吉田にとってもプラスであったと思います。
後藤の行為は沙優のためではなく、代償行為や好意ある相手のためと利己的な行為ですが構わないと思います。
後藤の行為は利己的な分、問題に深く踏み込まず自分も相手も傷つかないで済みますからね。
むしろ無償の行為に見える吉田の行いこそ特異であり、吉田のリスクを度外視した行為の源泉はなんなのかが気になります。
なんだろう後藤の背景や過去には今の沙優のような問題や悩みがあっただろうと描写されているのに、過去の描写がない吉田の方に闇を感じてしまうな。
リスク度外視の無償行為とか怖すぎてやばいよ。
後藤は面倒で重たいし、沙優は手を出すこと自体がアウトだし、三島と結ばれるのが一番全うな関係を築ける気がしてきたぞ
シリーズ感想
ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 1巻 感想
ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 2巻 感想
お勧めの作品
今回のお勧めは『29とJK4 ~夢のあとさき~ (GA文庫)』です。
この作品も『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』と同様に社会人主人公とJKヒロインの都市の差カップル物ですが、背徳感を感じないのはJKと付き合うことが身内公認だからかしら?
29とJKも面白いのですが恋愛ものというよりは仕事奮闘ものとしての面白さの比重の方が高いですね。
そろそろ私も積んでいる『29とJK4 ~夢のあとさき~ (GA文庫)』を読まねば。。。
SBクリエイティブ
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