『
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
王国へ仕掛けられたテロは、レイたちルーキーの活躍によって鎮静化しつつあった。しかし、“勝つ”ためには手段をえらばないフランクリンによる最後の切り札が発動し、大量のモンスターが王国へと進撃を開始する。限られた人数、閉じ込められた上級マスターたち。再び王国が危機に陥ったその時――あの男がついに動き出す!! 『今夜お前が開いたゲームで、お前は最大のミスを犯した』『――それは“弟”と“俺”を敵に回したことだ』
ネタバレなしの感想
『インフィニット・デンドログラム』第一部完結ということで、フランクリンが仕込んでいた諸々の陰謀策略との対決も今巻『インフィニット・デンドログラム 5巻』で一区切りです。
プランA,プランBをレイたちの手によって阻まれたフランクリンが、これまでのプラン以上に凶悪なプランCを発動し、絶体絶命の窮地に追い込まれた王国とギデオン、そしてレイを助けに謎の人物が現れます。
実際は謎の人物というほど謎じゃありませんし、大凡の読者も察しているでしょうし、そもそもあらすじの時点で隠す気もないのでしょうが、ついにクマニーサンの真の実力が発揮されるわけですよ。
クマニーサンの真の実力は隠されたもので、その力を発揮した時は大活躍するんだろうなと考えていましたが、私の想像以上の実力と桁違いの活躍を見せてくれました。
出陣シーンと登場シーンは挿絵の効果もあって、読んでいて心の底から熱さを感じました。
本当、フランクリン最大の敗因はレイとシュウの兄弟の逆鱗に触れてしまったことなんでしょうね。
あんだけいろいろ事前に用意した悪辣な陰謀や策略が、完膚なきまでにぶっ壊されちゃうんだもの。
でも、悪辣な陰謀であった分、その陰謀を叩きのめすクマニーサンの活躍に爽快感を覚えました。
『インフィニット・デンドログラム 4巻』『インフィニット・デンドログラム 5巻』で高まっていたフランクリンのヘイトが吹き飛ぶくらいにはスッキリしましたね。
むしろフランクリンのことを可愛そうに思っちゃうくらいでした。
超大物助っ人クマニーサンの活躍に興奮しましたが、主人公 レイももちろん活躍しますし見せ場もあります。
クマニーサンを始めとした仲間たちの助力があったとはいえ、初心者のレイが<超級>であるフランクリンに一矢報いるところは良かったです。
いまだ実力はフランクリンに届かないとはいえ、主人公のレイが悪役に対して何もしないと盛り上がりませんしね。
締めのバトルはレイ対フランクリンの形をきっちり作ってくれていますから、クマニーサンの活躍から続く熱さが最後まで活かされているといえます。
ギデオンを舞台にしたフランクリンによる一連の陰謀は解決しましたが、皇国に押されている王国の休場がすべて解決したわけではありません。
また、当然のようにフランクリンの負の感情もレイから離れてはいませんし、執着の度合いが増しています。
フランクリンの性格を考えるに、レイに対する敗北感を覆すために偏執的に思えるぐらいのレイ対策をしてきそうですね。
これなら確実にレイに勝てるという用意(あとクマニーサン対策も)が整ったときに、レイの前に再度現れるのでしょうね。
その時には
そんな脅威を相手にしてレイがどう戦いどのように勝利するかを読みたいです。
本編はフランクリンとの決着がつきエピローグが終わったのちに、外伝形式の短編が2つ載っています。
一つはレイの装備というかファッションセンスにまつわるエピソードです。
確かに性能は良いのでしょうが外見は聖騎士にはみえない装備していますものね。
ネメシスの気苦労はたぶん一生なくならないんだろうなあ
もう一つは現実世界でのレイのお話が半分、インフィニット・デンドログラム内でのお話が半分のエピソードです。
レイの本名や大学生活などふつうのお話なのでしょうが読んでいて違和感を覚えるのは、これまでインフィニット・デンドログラム内のお話ばかりだったからでしょうね。
何と言いますか都合のいいくらいにインフィニット・デンドログラムでの知り合いが、現実世界でも身近にいますね(笑)
まあ現実でも近くにいた方がお話的にも都合がいいというのは当然あるんだろうなあ。
それにしても現実世界でのクマニーサンも超人ですが、レイだってかなりのハイスペックな人ですよね。
比較対象のレベルが高すぎるだけで、最高学府に現役合格しているレイが低スペックな訳ないですわ。
次巻『
その辺を楽しみにして次巻も読んでいきたいと思います。
ネタバレありの感想
ここから下は『
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
破壊王
ネタバレなしの感想でも書きましたが、クマニーサンの真の実力が披露されました。
クマニーサンこそ王国が誇る超級<三巨頭>の一人であり、正体不明であった破壊王の正体だったのです。
まあ、読者の大半は気づいていたと思いますし、作者も隠す気は全くなかったと思いますが。
真の実力をあらわにしたクマニーサンの強さと格好よさはは別格でしたね。
レイのピンチに駆けつけ助けるところなど、主人公の兄貴キャラクターはかくあるべしというレベルです。
フランクリンの作成した5万のモンスターを、しかも一体一体が上級戦闘職レベルのモンスターを苦も無く殲滅するとかバランスブレイカーっぷりにも程がありますよ。
クマニーサンのステータスはSTR全振りというロマンビルドなのに、現実世界で培った格闘技術でそのロマンビルドを補って最強クラスの戦闘力となるとかね。
今回クマニーサンの理不尽な強さに直面したフランクリンや、現実ではハイスペックを持たないプレイヤーは納得いかないだろうな。
クマニーサン単体でも現状無敵なんじゃと思える強さでしたが、クマニーサンの<エンブリオ>バルドルも半端ない強さでしたね。
作中でも描かれていましたが個としての力では、数の暴力に押し切られる危険があるわけです。
個の戦力として最強に近いクマニーサンが及ばぬ部分である数の暴力に対抗する力を与えてくれるバルドルとの相乗効果で、クマニーサンの対応能力に隙が無くなっています。
クマニーサンを苦戦させたり敗北させる可能性があるのは、クマニーサンに匹敵する個の強さと状況対応能力を備えた相手なんかな。
途中、ルークがクマニーサンの<エンブリオ>バルドルの特質が殲滅力にあることに疑問符を浮かべていました。
ルークはいったいどんな部分で違和感を覚えたのかな?
クマニーサンの性格を考えるとエンブリオはクマニーサンの強さを上乗せするような特質を覚えるはずで、殲滅力に特化したエンブリオになるのは違和感があるってことかしら?
クマニーサンの性格とエンブリオの特質に相反する部分があるとすれば、まだクマニーサンのエンブリオに隠されたの特質や能力があるということかもしれないです。
フランクリン相手には使わなかったのか、使えなかったのか分かりませんが、バルドルのスキルが明らかになった時に、ルークが感じた違和感が明らかになるか、解消されるかするのかもしれないですね。
クマニーサンが真の本気を出す戦いが描かれるのが楽しみですわ。
フランクリン
レイによっていろいろ準備した策謀を木端微塵にされてしまった中ボスさんです。
リリアーナ暗殺計画を阻止された時点でレイに対する執着が半端なかったのに、レイに今回のでっかい陰謀を阻止されたあげくに殺されちゃったわけですから、レイへの執着の度合いが深まりそうですね。
今回のギデオンでの事件も十分以上に悪辣な陰謀や策略を行っていたのに、あれでまだユーゴの手前甘さが残っていたとか本当にヤバいやつですよ。
プランCやプランDが成功していたら大多数のティアンの命すら失われていた訳ですし、それでもまだ枷があったということに驚きですよ。
ユーゴという枷を自ら取り外したフランクリンが、どこまで悪辣で非道な手を打ってくるのか見たいような見たくないような複雑な気持ちです。
インフィニット・デンドログラムの世界をゲームではなく別の現実と考えているフランクリンが、良心の呵責に苛まれることもなくティアンの虐殺すら行えるというのは、フランクリンの根幹に関わるからなのでしょう。
フランクリンの根幹である、他者に負けることが許せない、他者に自分の道を歪められたくないと想いが、他者を蹴散らすことに
そんなフランクリンの根幹を揺るがすことができるのは、レイではなく身内であるユーゴなんじゃないかなって思います。
人の想いを変えるほどの影響を与えるのは身内レベルの繋がりの強さが無いと難しいと思うんですよね。
それこそレイの根幹の一つにクマニーサンの影響があるように。
ですから、今巻で姉フランクリンから一時的に離れたユーゴこそ、フランクリンに影響を与えてもおかしくないんじゃないかなって考えます。
姉から離れ独り立ちしたユーゴが、戻ってきてフランクリンと再会した時に影響を与えるんじゃないかな。
シリーズ感想の索引
お勧めの作品
2019年2月時点の最新刊であるインフィニット・デンドログラム 9巻の発売日は2019年2月1日です。