『かげきしょうじょ!! 7巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
文化祭開幕☆少女たちの音楽学校ライフ! 文化祭で発表する「ロミオとジュリエット」オーディションの結果、ティボルトの役をいとめたさらさ。一方、敗れてしまった杉本の心境は…!? さらさの指導役・中山リサの番外編も収録!!
ネタバレなしの感想
今巻もすごい面白かったです。
帰宅後すぐに読み始めましたが集中して圧倒間に読み終えてしまいましたし、新刊を読んだばっかりだというのに早くも次の新刊を読みたくて堪らないですよ。
次巻『かげきしょうじょ!! 8巻』へ向けての引きも凄かったし、続きが気になるところで終わったというのもありますが、本編の話数が思った以上に少なかったというのもありますね。
ただ、本編の話数が減った分、あらすじにもある中山リサのスピンオフが収録されていて、こちらはこちらでとても衝撃的な内容でした。
『かげきしょうじょ!!』を読んでこられた読者の方には是非、このスピンオフを読んで貰いたいです。
さて『かげきしょうじょ!! 7巻』の内容ですが、オーディションにて見事にティボルト役を射止めたさらさ、そしてさらさに敗れティボルト役を逃した沙和。
今巻では敗れた側の杉本沙和にスポットライトが当たり、努力家の秀才タイプである杉本沙和の内面にある天才への葛藤、あと一歩足りない側の気持ちが描かれます。
どんなに努力しても届かぬ大きな壁を前にすると後ろ向きになってしまい気持ちが沈んでしまうのも分かります。
でも、自分の気持ちが沈んでいるときにでも自分の事を見てくれている、良いところを分かってくれている先輩や友人がいる沙和でしたら、いつまでも沈んだままでいないし、前向きになって立ち直っていけるという姿が描かれていて読んでいて爽やかな気持ちになれました。
さらさにオーディションで負けて気持ちが沈んでいて後ろ向きになりかけていた時でさえ、さらさの良さを認められる沙和の強さがあれば、今回のオーディションでの敗北も沙和自身の成長の糧になるんじゃないかと思います。
オーディションでさらさが選ばれた理由、あの理由を聞くと確かに納得せざるを得ませんでしたね。
コメディチックに描かれていましたが、勝敗を分けた部分は本当に大事な部分であることは分かりやすかったです。
一方、オーディションに勝利したさらさが文化祭でどんなティボルトを、演劇を見せてくれるかと期待していましたがまさかの事態ですね。
個人的にはトラブルなく演劇を行うさらさたちの姿を見たかったのですが、そうは順調にいかないものですね。
ただ、トラブルが発生した際のさらさの反応、それをフォローする奈良田愛の行動と見どころは十二分にありますし、その後の展開が凄い気になりますよ。
果たしてこの後の展開はどうなるんだ?という処で次巻に続いてしまって、本当本当に続きが読みた過ぎる。
本当に「ロミオとジュリエット」はどうなってしまうんだろうな?
連載誌を追っかけてしまいたいですが、単行本が出て読めた時の楽しみを優先したいので連載を読むのは我慢します。
早く新刊が『かげきしょうじょ!! 8巻』読みたい。。。
ネタバレありの感想
ここから下は『かげきしょうじょ!! 7巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
さらさについて
ティボルト役のオーディションに受かり順調にステップアップしていたさらさでしたが、公演当日に唯一の肉親である祖父が倒れたため実家に帰り公演に出ることは叶いませんでした。
今巻を読み返してみれば、年末年始にさらさが実家に帰省した場面でさらさのお爺ちゃんは早々に寝落ちした姿で描かれていましたので、加齢による疲労や体力の減少が明らかでしたし、疲労で倒れてしまうのも仕方ない面があります。
祖父が倒れたという連絡を受けて公演の舞台よりも自分の家族を優先して帰宅を選んださらさですが、連絡を受けた際の動揺した姿では正常に演技が出来たとは思えませんので、帰宅を選んだことは正解であったと思います。
さらさの気持ちを理解して厳しい言葉ながらもさらさの背中を押してくれた野島聖はただの嫌味なキャラとは違うという面をここでも明らかにしていました。
帰宅途中の新幹線の中で祖父が無事であること、見にいけないけど舞台頑張ってと暁也から連絡をもらい堪えていた涙を流すさらさの姿がありましたが、この涙は祖父が無事であったことの安堵もありますがそれだけではない気がします。
「舞台頑張って」の言葉を見た後に涙する姿からは、公演を辞退してしまったことを悔やむ気持ちも大きかったのだろうなと感じました。
年末年始の帰省からの帰り際、暁也に演技を認めてもらえるように頑張りますねと伝えていたように、予科練の公演にはさらさなりの踏ん切りというか決意があったと思うのですよ。
性別の為に歌舞伎を大好きな歌舞伎を諦めざるを得なかったけど、いまは歌劇の方で頑張っているし暁也に負けないくらい演技が出来ているという姿を見せたいという気持ちが。
その決意が実現できなかった失意や悔しさがこの時に流した涙に籠っていた気がします。
それにしても、公演を見てもらいたいと告げた時の言葉を考えると暁也くんとさらさの関係は恋人というよりは、役者仲間や同志という意味合いの方が強い気がしますね。
そして舞台立つことが出来なくなったさらさの代役は杉本沙和ではなく、奈良田愛が選ばれます。
普通に考えればさらさと同じティボルト役希望であり、最後までさらさと役を争った杉本沙和が適任といえるでしょう。
ですが、その杉本沙和ではなく奈良田愛が選ばれたのは、突然の事態の中で舞台に立つ覚悟が出来ているかどうかという点が重視された気がします。
話を振られて僅かながら躊躇ってしまった杉本沙和と、自ら立候補して自分が適役であるという理由を告げることができた奈良田愛の差なんでしょうね。
そういう意味では野島聖が言うように奈良田愛は持っている人といえます。
奈良田愛が代役となった予科練の公演は次巻に持ち越しになってしまいましたが、どの様な舞台になるのか凄い気になりますよ。
巻末にあるスピンオフの一コマで公演の顛末について僅かながら語られていますが、称賛されないまでもそこまで悪しざまには言われておりませんでしたので、最悪の事態は避けられたように見えました。
果たしてどのような公演になったのか次巻『かげきしょうじょ!! 8巻』で楽しみたいと思います。
野島聖
スピンオフは中山理沙編のはずが、野島聖が主役のスピンオフになっていました。
それくらい野島聖の存在感が強かったですし、彼女の退団に衝撃を受けたと言えます。
このスピンオフを読んでから改めて『かげきしょうじょ!! 7巻』を読み直すと、彼女の言葉の一つ一つに芯の強さや優しさを感じさせてくれます。
野島聖自身の最初で最後の主役公演が行われる直前であるにもかかわらず、さらさの気持ちを慮りさらさが望んでいる方向に背中を押す言葉を投げかけるなど野島聖が優しくなければ言葉を出すことは出来ませんわ。
「この文化祭が永遠に続けばいいのに」という言葉も文化祭が終われば演劇が出来ないという諦めも含んだ言葉だったのでしょう。
どんなに才能があっても、スター性があっても経済力が無ければ続けていくことが出来ないというのが演劇界の厳しい現実を表していて、歌劇という輝かしい夢との対比がきつかったです。
卒業式の際に野島聖が浮かべていた穏やかな笑顔と、入団式に向かう同級生を見るときの無表情とに野島聖自身の諦めが感じられてやるせない気持ちになりました。
野島聖が退団すると知って聖のもとに駆けつけた中山理沙との最後のやり取りは、二人の間の絆を感じられてよかったです。
去ってゆく野島聖と先に進む中山理沙という立場が異なる二人でしたが、だからといってそれを感動的に書くでもなく淡々と言葉をまじわス姿最高でした。
中山理沙の芸名を聞いて名前負けしそうと告げる聖と、負けないよ!と反論する中山理沙の姿はこれまで通りの普段の二人の姿に重なりましたよ。
先に進む中山理沙も、ここで立ち去ることになる野島聖もこの先に希望があることを願ってしまいます。
シリーズ感想の索引
お勧めの作品
今回のお勧めは『かげきしょうじょ!! シーズンゼロ (花とゆめCOMICS)』です。
こちらは集英社版のかげきしょうじょ! 1巻と2巻を再編集した、かげきしょうじょ!!の前日譚になります。
以前のかげきしょうじょ!! シーズンゼロを1冊にまとめて新規描きおろしのショートマンガ&元宝塚トップスター凰稀かなめさんとの対談も収録した内容の様です。
今では仲良しのさらさと愛ちゃんが仲良くなる前の姿とか今では本当に考えられないですわ。
白泉社 (2019-03-05)
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