『賢者の孫 1巻 常識破りの新入生』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
《規格外》主人公の型破り異世界ファンタジーライフが今始まる!
事故で死んだはずの青年が、赤ん坊の姿で異世界に転生!
そして救国の英雄「賢者」マーリン・ウォルフォードに拾われた彼は、シンと名付けられる。
孫として育てられたシンはマーリンの技術を吸収し、驚くべき力を習得するのだが、
十五歳となった時に祖父【マーリン】は言った「常識を教えるの忘れとった」!
かくして常識と友達を得るためアールスハイド高等魔法学院に入学するシンだったが――。
《規格外》な少年の型破り異世界ファンタジーライフ、ここに開幕!!
ネタバレなしの感想
2015年から刊行されている『賢者の孫』シリーズの感想です。
今巻『賢者の孫 1巻』の内容ですが、シリーズの1巻ということもあり、主人公シン=ウォルフォードの凄さを説明する描写と、シンの育ての親マーリンを始めとする周囲の親たちの説明と、魔法学校で知り合う友人たちの説明、これから敵対するであろう悪役の顔見せという部分がメインです。
今後、シリーズ展開するにあたり必要な部分の描写はしっかりと提示されていると思います。
本作のストロングポイントは、やはりシンの桁違いの力とその力を用いた無双っぷりという事でしょうね。
シンの育ての親であるマーリンも賢者と称えられる英雄ですが、シンの実力はそんなマーリンを凌駕する桁違いのものがあるように描かれています。
そんな桁違いの力を持つシンが無自覚に力をふるい、そのことで周囲が振り回されたり、周囲から称賛されるというのが作中のよくある流れです。
転生後の異世界は、シンが気分よく無双するために用意された世界なんじゃないかなと思ってしまうほど都合のいい状況と人々が揃っていますね。
なので深く考えずシンの無双っぷりと、シンの起こす騒動を素直に楽しむのが本作を楽しむコツだと思います。
主人公のシンは、賢者マーリンを始めとした各分野のトップクラスの実力者から直々に鍛えられたことにあります。
教われば教わった分以上に成長しているようで、魔法も格闘技も剣技もなんでも完璧な実力を身につけているところは、本当に主人公とはいえ自重なしの成長力です。
なんというか『賢者の孫 1巻』時点で既に「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」というほどの実力を身につけていますし、実際に1巻ではシンの活躍で全てが解決してしまった感がありますね。
こんな桁違いの強さを持つ主人公シンを苦戦させる敵とか出てくるんだろうか?
またシンはこの世界にはなかった常識外の魔法(空間転移、光学迷彩など)を独自開発するバランスブレイカーともいえますので、今後シンの行動が原因で世界が変わっていく気がします。
ただ、そんな凄い能力を持ったシンなのですが、彼自身は何をしたいのかという目的や意思を感じられないのが気になるります。
世界や人々がシンを活躍されるために用意された設定だとすれば、シンの存在は称賛を受けるために存在するだけの人物にも思えるのですよね。
シン自身の想いや行動がみえにくいので、彼の心理描写が軽く見えてしまいます。
ヒロインであるシシリーには好意を抱いているようですので、その感情をもっと前面に押し出して行動の原動力にして貰えば少しは違うのかな?
今巻では国家規模の危険がある敵との邂逅を果たしましたので、当面はその敵の巻き起こす騒動を解決するというのがメインストーリーになるのかな
そしてその敵が起こす騒動とは別に、この異世界の常識を無視したシンが起こす騒動とその騒動の影響で変化する人々や世界も見られるはずです。
その騒動を多々あるであろう突っ込みどころは無視して楽しんでいきたいと思います。
ネタバレありの感想
ここから下は『賢者の孫 1巻 常識破りの新入生』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
今巻の突っ込みどころ
ネタバレなしの感想にも書きましたが、本作を楽しむためには明らかに突っ込みたいポイントをスルーする能力が求められます。
賢者の孫の世界はシンの活躍するための舞台であり、枠役たちはシンと仲間たちをを称賛し、シンに自分を投影する読者の気分良くするための存在であるという認識です。
ただし、いくらそう認識していたとしても、展開にしたいして突っ込みを入れたいという欲求が抑えられないところがあります。
そのような突込みを入れたいところを、ネタバレを気にせずに発散させてもらおうと思います。
シンが現実世界から転生した意味があるのか?
シンが転生前に過ごした時間と異世界で過ごした時間を考えると、精神的に幼すぎないか?
そもそも常識を学ぶ気がないし、無自覚に桁違いの力を奮っているのも賞賛をうけるためじゃないか?
という誰もが思う疑問点はスルーです。
ここに引っかかりを覚えると、もう本作を読まない方がいいまであります。
もちろん、私も引っ掛かりを覚えていますし、突っ込みたい設定なんですけどスルー力を磨いてスルーしていますよ!
じゃあ、お前はこの作品のどこに突っ込みを入れるんだ?というご指摘を受けると思います。
今回、私が突っ込みを入れさせてもらうのは、魔人と化したカートと戦う場面になります。
このカートというキャラクターは今巻の中ボスであり、シンの強さの引き立て役であり、シシリーと結ばれるためのキューピッド役です。
身分を笠に着てごり押しをする嫌味な貴族キャラクターのテンプレートでした。
シンにとってカートは、やたら突っかかってくる嫌味な男であり、シシリーに迷惑をかける困った男にすぎません。
そんなシンとは交流や友誼もないカートが、魔人となりシンに襲い掛かってきたので返り討ちにするという展開です。
カートとの戦闘シーンではカートを傷つけることに葛藤を覚えるシン、カートによる被害を防ぐためとはいえ殺害したことを悔いるシンの描写がされます。
本当に取っ手付けたような葛藤や公開をみせられて笑ってしまいました。
葛藤するほどカートに対する思い入れなかったし、さっきの葛藤がなんだったんだってくらい確実に殺す気で首を刎ねているのに何を後悔しているんだと。
例え敵でも元人間を傷つけることに葛藤するシンさんカッコいいし、優しすぎる!という描写のための葛藤にしか見えず、本当に軽い内面描写だなと笑ってしまいました。
その後の後悔も本当に救えなかったことに後悔しているの?ってくらい軽いです。
※この時の後悔がシンの内面に何か残したわけでもないですし、続刊で雑魚魔人を大量殺害してます。
何でこの時だけ後悔したのか?
シンがこの時の後悔を引きずったり吹っ切るような描写もありません。
本当に取って付けたような後悔の描写、笑えるので大好きです。
シンの反応や言動がおかしいだけなら異常な主人公なんだなと考えるだけですが、サブキャラの言動にも異様さを感じました。
カートを倒したシンを、周囲への被害を防いだシンを称賛するのは理解できます。
でも、カートを倒したシンが葛藤や後悔する描写をした直後なのに、元々カートと友誼の有ったサブキャラクターの方が全く葛藤や悲しむ描写が皆無です。
カートの死を嘆くよりも、シンの剣技と魔法を称賛し魔人討伐に歓喜する流れ最高にクールですね。
直前でシンが葛藤や後悔を見せているだけに、サブキャラたちの反応には笑いが出ましたわ。
まず書きたいシーンがあり、そのシーンに合わせてシンの考えや言動を作っているので、シンの言動に私が違和感を覚えるのかもしれないです。
例え敵でも傷をつけることに葛藤するシン、葛藤しても周りを守るために心を殺して敵を倒すシン、それでも救えなかったことを後悔するシン。
シンは強さだけではなく内面も優しい魅力的な人物なんだという描写をしたいのだろうと理解しています。
ですが、描写の仕方がおかしくいせいか、シンの凄さや魅力を感じるよりも、世界のいびつさに目が行き、異常さを感じました。
シンさんTueeeやSugeeが売りの作品であることは理解できています。
でもTueee描写やSugee描写に違和感があると、素直にTueeeムーブを受け入れて楽しむことを阻害しますね。
カートとの戦闘、戦闘後の賞賛の描写中盤の山場程度のイベントで、ページもさほど割かれていません。
それでも、シンの言動の軽薄さ、シンを称賛するために用意された世界の歪さが表れています。
『賢者の孫』という作品の突っ込み要素の大半がこの部分を読めば理解できるんじゃないかと思います。
次巻『賢者の孫 2巻』ではいったいどんな我慢できない突っ込みどころがあるのか、ちょっと楽しみです。
シリーズ感想の索引
賢者の孫 1巻 常識破りの新入生 感想
賢者の孫 2巻 破天荒な新英雄 感想
賢者の孫 3巻 史上最強の魔法師集団 感想
賢者の孫 4巻 天下無双の魔王降臨 感想
賢者の孫 5巻 狂瀾怒濤の三国会談 感想
賢者の孫 6巻 英姿颯爽の神使降誕 感想
賢者の孫 7巻 豪勇無双の英雄再臨 感想
賢者の孫 8巻 豪勇無双の英雄再臨 感想
賢者の孫 9巻 驚天動地の魔人襲来 感想
お勧めの作品
今回のお勧めは『賢者の孫 (10) (角川コミックス・エース)』です。
漫画版賢者の孫も遂に大台の10巻ですね。人気がある証です。
アニメ放映直前の発売なので、放映中にもう一冊くらい発売されそうですね。
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