「小説家になろうと思うのだ」突然俺にそう宣言したのは『剣聖』とも名高い美少女剣士―シルフィだった!?パーティ仲間の俺やサービスシーン担当(!?)のロリ魔術師ユーリも巻き込まれて、彼女の小説執筆の取材のためにダンジョンへ向かうことになったけど…?「私の弁当を食べてくれ!はい、あーん」マジメに取材を始めるかと思ったら「スライムが服の中に!―あんっ!」なぜかサービス満点な方向に…。「さあ、今日もダンジョンに出発だ!(いい加減、私の恋心に気付いてほしいのだが!?)」大好き度MAXから始まる、ドタバタラブコメファンタジー!第30回ファンタジア大賞銀賞受賞作
『剣聖の私がお前を好きだと? 笑わせるな! 大大大好きなのだ!』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
ライトノベルの感想を中心とした感想サイトを名乗っている以上、受賞作品は積極的に読んで感想を上げようと思いまして購入しました。
毎年受賞作がでてきて作家デビューされているのですが、残っていける人は限られているというのが厳しい世界を表していますよね。
私好みの新人作家の方を見つけたら積極的に応援して、生き残れるよう少しでも力になりたいなと思います。
ネタバレなしの感想
鈍感なヒロインであり剣聖と呼ばれるシルフィ・ライトグラスと、シルフィのパーティーメンバーでありシルフィの想い人であり鈍感な主人公ミストを中心としたラブコメディ作品です。
好きなミストへ想い素直に伝えられないシルフィが、想いを直接伝える代わりに恋心を綴った小説を執筆するため、ミストとの仲を深めるために取材を兼ねたモンスターの生態調査の冒険に赴きます。
その冒険の中で色々とトラブルが発生してお色気シーンになったり笑いが生まれたりというお話ですね。
発生するトラブルやイベントは、お約束のものが多く展開が予想できてはしまいますが、逆にお約束物故の安定感があるかなとも感じました。
狭い通路で体型が原因でつっかえたり、スライムがローション代わりになったり、ヒロインたちの下着姿を事故で見てしまったりという感じで、お約束のイベントが目白押しですよ。
ミストやリスティを中心とした軽快な会話やネタ話が多く、楽しくサクサクと読み進めることが出来ます。
逆に冒険中でもその会話ペースは変わらないため緊張感は全く感じず、冒険はコメディ部分を生むためのシチュエーション以上のものではないかなという感じです。
総じてコメディ部分が多いため、軽快な作品や緩いラブコメ作品を求めている人ならば楽しく読めることが出来ると思います。
欠点としてはミストもシルフィも相手の気持ちを察する能力に低く、鈍感この上ないところですかね。
メインキャラクターが気持ちに鈍いのはラブコメ物のお約束ですが、そのお約束を受け入れることが楽しむための前提になっていると思います。
また全体がコメディに大きく寄っているため、終盤に向けてミストやシルフィがシリアスになるところがちょっと浮いている気がしますね。
締めるところは締めて欲しいというのはありますが、それがちょっと唐突というか雰囲気変わり過ぎに感じましたので。
という感じでラブコメ作品としては楽しく読める作品でありました。
モンスターの生態調査という要素がクライマックスでの戦闘で活かされるというのも良かったです。
ただし、難を言うならばラブコメとしてのお約束に則っていますが、そのお約束の中からはみ出すもの飛び出すものが無かったかなと。
この作品のウリとしてここが凄いお勧めですって部分が私には残らなかったです。
ヒロインであるシルフィの魅力がもっと描かれていれば剛速球で好意を伝えてくれる可愛いキャラクターを売りにした作品としてもっと楽しめたんじゃないかなって思います。
剣聖と呼ばれるほどの冒険者の実績の部分をシリアスに書き、恋する乙女としてのポンコツなところとの対比で魅力的に描いていただければ、個人的にはシルフィのことを好きなキャラクターになったかなって気がしますね。
まだ互いの想いに気づいていないので続きを書くことも可能な引きだと思いますが、いつまでも想いに気づかないままと言う訳では面白さより不快感が出てしまいそうですし、続刊では恋愛として仲が進展して欲しいなとは思います
ネタバレありの感想
ここから下は『剣聖の私がお前を好きだと? 笑わせるな! 大大大好きなのだ!』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
ラブコメ主人公の魅力について
ラブコメ作品の楽しさってまずは主人公とヒロインの魅力にあり、その魅力的な二人が起こす騒動を楽しめるかにあると思うのですよ。
そういう意味で言うと本作は主人公であるミストの魅力を描く部分で失敗しているように思えました。
なんであそこまで鈍い主人公が周囲の女性キャラクターの皆に惚れられているのかなと思ってしまったのですよね。
コメディ重視の作品でも普段はオチャラケ気味の主人公が、ここぞの場面でシリアスに活躍するというギャップから魅力的にみえたりするのですが、ミストの場合は最後までシリアスになりきれていなかったのが中途半端で魅力を感じることが無かったです。
物語クライマックスに向かってシリアスな姿を見せようとはしていたとは思うのですが、シリアスになる方向が違ったり、シリアスになりきれずコメディ重視でいってしまったんじゃないかと感じました。
コメディとシリアスを混ぜるのなら締めるところはしっかりと描いて欲しかったです。
コメディ部分はお約束要素こそ多く感じたとはいえ、楽しく描けていたからちょっと勿体無かったなと思います。
シリアスになりきれていない部分の例を挙げれば、バジリスク討伐の依頼がシルフィの元に届いた際にシルフィの執筆活動を優先するために依頼を断るところですね。
この場面で描きたかったのはシルフィのことを案じ彼女を陰ながら支えるミストの魅力だと思いますが、そもそもバジリスクが出てきた原因がミストたちにある訳で、無責任だなや勝手だなと思って魅力には思えなかったのですよ。
コメディ作風でトラブルを起こしたのなら、そのトラブルにより派生した騒動への対峙もコメディ風に断ってしまえばよかったんじゃないかなと。
またはシリアスに描くのならせめてミストに冒険者としての責任感とシルフィを支えたいという願望を折衷して、シルフィを巻き込まない形で討伐の依頼を受けるとかでいいと思うのですよ。
そうすれば少なくともミストの冒険者としての責任感やまじめな部分が描けて魅力になったんじゃないかなあ。
主人公の魅力が薄いため、それに恋しているヒロインの側にも想い入れができないのが難点かなって気がします。
続刊が出るのでしたら、ミストの活躍をシリアスに書いて欲しいなと思いますね。
物語り当初から相思相愛の主人公とヒロインですと安定感はありますが、恋の駆け引きや仲が深まっていくさまが読者からは見られないので、恋人へ至る過程を楽しめないという欠点にもつながりますね。
続刊がでるのでしたら、この二人が出会い好きになっていく過程が描かれるのかもしれないですが、やっぱりそれは1巻の時点ですこしでも書いておくべきだと思います。描写があれば、読者として想い入れが生まれてきますから。
シリーズ感想
剣聖の私がお前を好きだと? 笑わせるな! 大大大好きなのだ! 感想
お勧めの作品
今回のお勧め『エロマンガ先生 妹と開かずの間』です。
まあ、愛の告白に小説を執筆する点が共通しているという安直な発想ですね。
ただし、こちらの作品は主人公が本業の作家だけありまして物語を作る、執筆するという点に重点が置かれております。
剣聖さんの方は物語を作る、執筆するという要素に重点が置かれていないので執筆する苦労という点が省かれていましたね。
続刊出るとして小説家になるという要素は、別の要素に置き換えてもいいと思います。
それにしてもアニメ終わってからエロマンガ先生の続刊の話が聞こえてこないな。
早く新刊が読みたいですわ。
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