『メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
目次
あらすじ
その事件、俺たちに解決させろ! 連作ミステリ!
柳町北署の新人刑事・牧野ひよりは、念願かなって刑事になったものの、仕事はお茶汲みやコピー取りばかり。
そんなある日、所轄内で殺人がネットで生中継されるという事件が発生。
どうやら四年前に起きた事件の模倣犯らしい。
ひよりは上司の刑事から、四年前の事件を担当していた元刑事・夏目惣一郎の話を聞いてこいと命じられる。メモの住所を頼りに辿り着いたのは、蔦で覆われた大きな三角屋根の古びた洋館だった。
その門前で掃き掃除をする惣一郎に声をかけるが、惣一郎は「断る」の一点張り。
すると謎の老人が現れ、「まあお入り。ちょうどお茶の時間だ」と告げて洋館にひよりを招き入れた。
そこはなんと、退職刑事専用のシェアハウス<メゾン・ド・ポリス>だった!元熱血刑事、元科学捜査のプロ、元警視庁幹部、元事務員。
老眼、腰痛、高血圧だが、腕は一流のくせ者おじさんたちと事件を追うと、思いもよらぬ真相に辿り着き――。
ネタバレなしの感想
新米刑事の牧野ひよりは念願の刑事に離れたものの、周囲からの侮りもあり満足に捜査をさせてもらえず不平不満を漏らしています。
そんなある日、所轄内で起きた殺人事件が4年前の事件の模倣犯ではないかとの疑いがあり、ひよりは4年前の事件の担当刑事 夏目惣一郎から聞き込みをするよう命じられます。
夏目惣一郎の住居に赴き声をかけるが、惣一郎は「断る」の一点張りで聞き込みに応じてくれません。
困ったひよりを助けるかのように表れた老人の声に従い住居に踏み入れます。
その住居こそ退職刑事専用のシェアハウス<メゾン・ド・ポリス>だったのです。
新米刑事のひよりと退職刑事たちが出会い、ジェネレーションギャップや感性の違いを乗り越え理解していき、事件を解決していく物語です。
といった感じで始まる新米刑事とベテラン退職警官のバディものといえる作品ですね。
ひよりは26歳で夏目惣一郎が52歳ですので、恋愛ものというよりは親小物に近い内容であると思います。
『メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス』は短編5話の連作短編形式のようになっており、個々の短編で小出しにされた情報が最終話にあたる5話につながる伏線になっています。
そのため、個々の事件の捜査を楽しむと同時にメインストーリーが徐々に明らかになっていくことを楽しむこともできます。
そしてそのメインストーリーとは主人公である牧野ひよりと、第一話でパートナーを組んだ夏目惣一郎のしがらみと心残りに関係する事件であり、その事件を解決したことでひよりも夏目惣一郎も心のしこりを解消し、事件解決の爽快感を味あわせてくれます。
事件の捜査と解決の主役は新米刑事の牧野ひよりではなく、彼女とバディを組む実務経験豊富な元警察官であり<メゾン・ド・ポリス>に在住のおじさんたちになります。
この<メゾン・ド・ポリス>のおじさんたちが皆個性的で面白いのが本作の魅力的な点でありますね。
おじさんたちが事件捜査を行い事件を解決に導くとともに、牧野ひよりがおじさんたちの心にある蟠りやしこりを軽くしてくれるところも本作の良い点です。
どちらか一方が助けられるだけではなく、互いの得意な分野で助け合うという点がバディものとしての面白味に繋がっていると私は思いますよ。
夏目惣一郎や迫田といった年齢ば倍以上離れていて、しかも気難しい男性とコンビを組むことになる日和の苦労を思うと同情してしまいます。
ですが、ひよりの方も大ベテランの職場の先輩にあたるおじさんたちに物おじせず、ずけずけと相手の心に踏み込むところが牧野ひよりの魅力的なところかなと思います。
彼女が真っ直ぐな気持ちでおじさんたちの懐に入っていくからこそ、おじさんたちも彼女を拒絶できず、その胸に抱える後悔やわだかまりをひよりに伝えることが出来たのだし、前向きに考え直せたんじゃないかなと思います。
事件捜査物としても楽しめますが、ひよりとおじさんたちのバディものとしても楽しめる面白い作品であると思います。
今巻『メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス』で大半の人物の紹介が終わったので次巻からはひよりと因縁のある事件に踏み込むのか、大きな謎を十人全員で解いていくのか気になりますね。
『メゾン・ド・ポリス2 退職刑事とエリート警視』では伊達さんメインの話があるのかが気になりますね。
ネタバレありの感想
ここから下は『メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
第一話 新人女子刑事VSくせ者おじさん軍団
被害者はタキシード姿に正装させられた上でガソリンをかけられ、生きたまま焼き殺される。
加害者はその様をネット動画配信サイトに生中継するという恐ろしい事件です。
過去に発生した同様の事件「デスダンス」の模倣犯による犯行かと疑われた事件ですが、模倣犯というのは正しかったのですが犯人=被害者という形の自殺が真相でした。
犯人であり被害者である薗田政二が「デスダンス」を模倣した理由は、自身の死を自殺ではなく他殺と見せかけることで保険金を受け取るためでした。
政二の息子が闇金に借金した3000万円を返済するために命を捨てたというお話となります。
家族を、そして老舗の店を守るために自らの命を捨てたという美談風になっていますが、自分はそうは思えなかったな。
自分のつまらぬ借金のために父親が死ぬことになった息子は救われたといえるのでしょうか?
相談もされず夫に命を絶たれた妻は、夫の好意の真相を知った時にどう思うのでしょうか?
そして真相が判明するまで犯人に対して憤っていた思いが、実は自殺だったと知った時の喪失感はどれくらい大きかったのでしょうか?
なんというか、政二が良かれと思ってやった行為は独りよがりの自己満足であり、家族の事を本当に考えていたのかが疑問に思います。
本人が良いと思った行為も残された側に伝わらなかったら、望んでいた行為ではなかったら自己満足にすぎないんじゃないでしょうか?
エピローグで伊達有嗣の伝手から弁護士を雇い闇金に対応したこと、真相を知った常連客が店を支えようと言ってくれたことは救いにも見えますが、政二が死ななくても店も息子も救われる方法はあったと分かるので余計に政二の死が無駄死にのように思えます。
第二話 犯罪ウィルス!? 連続暴行事件の謎
この話でひよりとバディになるのはベテラン捜査官でった迫田保です。
仕事に人生をかけ退職と共に離婚を切り出されてしまった、正に昔気質の仕事人間ですね。
家族のために、仕事をしている自分を尊敬してくれた息子のために仕事に打ち込んだ結果、家族をないがしろにしてしまい愛想を尽かされたという悲しき事実です。
迫田さんは捜査のときは相手の身になって考えることが出来るのに、ことが私事になると融通が利かない不器用すぎるところが難点ですね。
本人は良かれと思っていたのでしょうが、仕事だけに集中したいなら結婚するなというひよりの言葉は辛辣ですがごもっともです。
迫田の心の中にある家族へ会いたいという気持ちをひよりに指摘されたことで、迫田も自分のわだかまりや後悔と向き合えたと思います。
いつか迫田さんが別れた息子さんに自然い合えるようになればいいな。
事件については復讐の互助組織と言える闇サイトの存在と、そのサイトで暴行を請け負った人たちの心の闇が怖かったです
なんの恨みもない人間を襲うことができるという事実、襲ったことに心の痛みを覚えない事実に恐怖ですよ。
その闇サイトを作成し、この事件の黒幕である蓮斗は、最も心の闇が深い様に思えました。
尊敬している大切な兄を守りたいという想いと、その他の人間に対する無関心さの落差が人間性の欠如のようにも見えました。
蓮斗の無自覚な残酷さは、『メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス』の犯人の中で一番理解できなかったですよ。
第三話 科学者が迫る 密室OL自殺の真相
この話のバディは元科学警察研究所の博士、藤堂雅人です。
ひよりのいうように、一昔前の色男という感じで気障なセリフや仕草がとても寒々しくて笑えました。
3回の結婚と離婚をしてまだ恋や愛に生きる姿勢は自分にはちょっと理解に苦しみます。
あまり感情移入できるキャラクターではなかったので、藤堂さんについてはサラッと流して事件の方を。
鑑識で見逃していた証拠を藤堂の現場捜査でみつけて事件を解決という流れでしたが、これまでの事件以上に現役の担当者は何やっているんだろうと思ってしまいました。
これは『トレース』や『科捜研の女』を視聴したせいか現役の捜査官が見落とすとは考えにくいとおもってしまったからなんでしょうかね。
ちなみに私は科学警察研究所と科学捜査研究所を混同してしまっていましたが別組織なんですよね。
違いが分からず気になってググってしまいましたよ(笑)
第四話 ペンキ事件と犯行声明文の秘密
この事件はなんというか犯人の動機と犯行内容が理解しきれなかったなと。
自分の部屋から見える風景を害されてしまう建物の建設を止めたいという勝手な動機と、その建設を妨害するためにペンキをぶっかけるという行為、どちらとも同意できなかったです。
百歩譲って動機はまあ分からなくもないですが、じゃあ建設を止めるためにペンキをぶっかけてどうにかなるんだろうか、ならないよなと。
この事件の迫田と夏目は誤認逮捕しかけたわけで、ベテラン捜査官元警察官としてどうなのかなと。
ここまでの各話でひよりのバディ担当が変わってきていたので、今回の話は高平さんがバディ役かなと思いましたがちがいましたね。
いつか高平さんの担当回もあるといいな。
第五話 重なり合う過去 さらばおじさん軍団!?
今回の事件は数々の事件を共に解決してきたひよりとメゾン・ド・ポリスのおじさんたちが総出で事件に挑む『メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス』の総決算でしたね。
夏目惣一朗が過去に担当し警察を止めるキッカケとなった事件とひよりの父が失踪した過去が重なり、夏目とひよりの過去のわだかまりが解消するという話でした。
夏目惣一朗が警察を止めた理由は事件の被疑者であった池原信吾を自殺させてしまったことにありました。
今回の事件を解決し池原信吾の妻である美砂から許しを得たことで、夏目惣一朗は囚われていた過去とも決別できわだかまりなく事件の捜査を行えるようになりました。
わだかまりがあった時にも結構パワフルに捜査していた夏目惣一朗が、わだかまりなく捜査に打ち込めるようになるとひよりがついていくの大変そうですね。
まだひよりの父が表に出てこれない原因であろう大いなる敵を表に引きずり出し逮捕するまで、メゾン・ド・ポリスの一員として捜査に口や顔を出していくことでしょう。
仕事に打ち込み家族を顧みておらず、しかも失踪した父親に隔意をもっていたひよりですが、今回の事件を捜査することで父の事情を知ることが出来ました
何らかの事件に巻き込まれ家族を守るために姿を隠したという事情を知ったことで、父に対するひよりの隔意が少しは減ったんじゃないでしょうか。
まだ何かしら事情があり、表に出てこれない父親とひよりの再会の場面が楽しみです。
エピローグで父から送られてきた地図、あの地図に何かしら父が表に出てこれない事情が隠れているのかもしれませんね。
でも、何故父親はひよりのメールアドレスを知っていたのでしょうね?
もしかして父は母と何らかの繋がりを残しており、その伝手からひよりのことを聞いていたのかもしれないですね。
そうだとすると父親はひよりが言うほど家族を蔑ろにしていないのかもしれません。
父親側の事情は続刊でわかるのかしら?
気になるので続刊も読んでみようと思います。
シリーズ感想の索引
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