『俺だけレベルが上がる世界で悪徳領主になっていた 1巻』のネタバレありの感想になります。
全編ネタバレの感想ですので未読の方やネタバレを見たくない方はご注意ください。
あらすじ
異世界を舞台にした戦略ゲームでランキング1位となった男は、ゲームの運営によって「特典」としてゲームの中の世界に転生させられてしまう。しかも自分はプロローグで死んでしまう悪徳領主エルヒン・エイントリアンになっていた! ゲームのストーリーそのままに進めば明日には他国の軍隊がエルヒンの領地に攻め入ってきてしまう。エルヒンは自分の身を守るため、彼だけが持つレベルアップシステムとゲーム知識で軍備を整えようとするのだが、悪徳領主の軍隊がまともに動けるはずもなく……!? 本格派戦略ファンタジー、開幕!
ネタバレありの感想
どんなお話か
異世界を舞台とした戦略SLGのオンラインランキングで1位となった主人公はゲーム運営による特典としてゲームの舞台となった異世界へ転生させられてしまいます。
主人公が転生したのは主人公がランキング1位となったゲームの登場キャラクターであり、ゲーム開始時には既に死亡している悪徳領主エルヒン・エイントリアン。
しかもゲームのプロローグ通りに進むと翌日にはエルヒン・エイントリアンは死亡することが確定しています。
ゲーム中では死亡することが確定している悪徳領主エルヒンとして異世界に降り立った主人公は、
自らがもつゲームの知識と戦略SLGのオンラインランキング1位となった技量とそして主人公のみが持つゲームシステムの恩恵を活かし、
死亡フラグを叩き潰して生き残り、戦乱に突入する異世界で覇権を握り栄光をつかむことを目指していくといったお話です。
公式のあらすじを読みますと、死亡フラグをいかに避けて生き残るかというところが主題に置かれているように見えますが、そこは物語の導入部にすぎません。
物語のメインはゲーム上の物語の死ぬ運命から逃れたエルヒンが、己の力を試すため異世界の戦乱の世で天下統一を果たし覇権を握ろうとする戦記物です。
エルヒンは覇権を握るため、自身が飛躍する時に備えて優秀な人材を集めたり、己が名声や威明を高めるために隣国の侵攻軍を撃退するというのがこの1巻の内容となっています。
ですので、悪徳領主という要素はあまり物語のメインとは関係ないかと思います。
スタート時点で主人公の勢力を弱小とするための制約としての機能なのかと考えられます。
エルヒンの悪徳領主との悪名も今巻の活躍による救国の英雄としての名声で上書きされるでしょうしね。
エルヒンの行動は自らが覇権を握るためという点に集約されており、行動の軸がしっかりしているところが良いですね。
人心をつかむ行動もすべては領国を富ませるためだったり、優秀な人材を部下にする・忠誠心を抱かせるためであったりと打算や計算の上での行動なところが自分は好きです。
急に女子供相手に善性に目覚めて温い言動や、目的である覇権を握るにはらしからぬ行動をしないところは好印象です。
エルヒンが戦略戦術を用いて自軍に不利な状況を覆し、勝利を遂げるところも好印象ですね。
エルヒンはゲーム上の歴史の知識を用いて敵と味方の行動を先読みしています。
敵の動きの意図を読むことができれば、敵の意図をつぶせますし裏をとることもできます。
歴史上の知識があるアドバンテージをエルヒンが自らの戦略・戦術に用いることで大きな戦果をあげる部分が描かれると面白いと思いますし、興奮するのですよね。
また、戦略戦術といった将として働きだけではなく、一騎討といった武人としての活躍もエルヒンは行っています。
ゲーム上、エルヒンの武力のステータス値は60程度とランクでいえば低く、一騎討などとてもできるキャラクターではありません。
ですが、エルヒンにはレベルアップという能力値を上げることができるシステムと、転生特典としてレア武器を装備しています。
レア武器のほうは使用制限こそありますが、武力のステータス値が90を超えゲーム中でも最強クラスの武力になっています。
そのため、一般兵士を相手に獅子奮迅の無双をみせてくれますし、敵の猛将との一騎打ちもみせてくれます。
エルヒンは軍を率いる将軍としての戦いでも、個人的な武勇での戦いでも一歩抜きんでた活躍しますので、戦いのシーンが本当に面白いです。
天下統一
異世界に転移してエルヒンとして生きることとなった主人公の目的が天下統一です。
なぜゲームの世界に転生したのか?や
ゲーム世界に転生させることができたゲームの運営の正体はなんなのか?は、主人公エルヒンには関係ありません。
現実世界に戻ることよりも異世界での国盗り天下統一の方が心躍るし、エルヒンの望む現実といえるからでしょう。
転生前にはオンラインランキングで1位を取るほどにハマっていたゲーム世界に転生できたと考えると尚更でしょうね。
ハマっていたゲームの話なのでおおよそのゲーム上の歴史の流れや重要な人物、拠点やイベントを抑えているのはエルヒンにとって大きなアドバンテージです。
将来の禍根になりそうな人物なら予め排除を検討できますし、逆に味方に取り込めそうな優秀で重要なキャラクターなら予めの勧誘ができます。
しかも、エルヒンのみ使えるゲームシステムを使えば数値で能力値が分かり優秀度も分かるとなれば、かなりのアドバンテージですよ。
自らが叶わない能力値の敵ならば避けることもできますし、味方の能力値が分かっていれば優秀な人材を適材適所で動かせますしね。
エルヒンとなる前のランキング一位の実力+エルヒンとなってから自らだけが使えるゲームシステムの恩恵+優秀な人材たちというアドバンテージがあれば天下統一も難易度として高くないのかもしれませんね。
エルヒンによる天下統一の障害は現時点での国力の差くらいじゃないかしら?
でも、それをエルヒン自体も理解しているからこそ領国を豊かにするための雌伏の時を稼ぐための行動をしているんだろうな。
ナルヤ王国の侵攻を防ぐことで自らの評判をあげて領国を富ますための基盤を築いていますしね。
今巻のエルヒンの活躍によりナルヤ王国の再侵攻まで約1年の時を稼ぐことができました。
その1年という時を活かしてエルヒンがどのような飛躍を遂げるのかが楽しみですね。
エピローグで描かれていたロゼルン国を舞台に優秀な人材であり、ゲーム中では死亡することとなるユラシアを助けるため、エルナンが活躍するのかなという気がします。
人材収集
上にも書きましたがエルヒンにはゲーム上の知識や転生特典武器、エルヒンだけが使えるゲームシステムなどあり十分に最強と言えます。
ですが、戦記物作品では君主だけが優秀でも天下を取ることはできないのは明白です。
どれだけエルヒンが優秀でも彼だけでできることには限りがあります。
複数の戦場、戦域にエルヒンが同時に立つことはできません。
複数の軍を率いるためにも、領国を富まし守るためにも多くの優秀な人材が必要です。
エルヒンの天下統一の道のりを支えるであろう優秀な人材たちが、エルヒンのもとに集っていきます。
エルヒンにかかわることで彼に恩義を感じたり、彼を認めることで信奉していくところは読んでいて楽しかったですね。
エルヒン自身は相手のステータスを確認することで優秀な人材だからと心をつかもうとしていたわけですが、
今巻で臣下となったジントやユセンからすればそんな下心は特に関係ないですからね。
自分の苦境を救ってくれた、仕えるに足る武勇を見せてくれたエルヒンは主君に値するという点には偽りがないわけですしね。
今後もエルヒンの目指す天下統一のため、優秀な人材がどんどん集まってくることでしょう。
なんというか信長の野望や三国志といったSLGをやっているときに有能な人材を集めてドリームチームを作った時のような楽しさを覚えますね。
次巻では姫将軍ユラシアがエルヒンの幕下に馳せ参じてきそうで楽しみであります。
ユラシアはなんというかポンコツ風味というか純朴というか結構面白い雰囲気のキャラクターですし、本作品のヒロイン枠になるのだろうか。
シリーズ感想の索引
俺だけレベルが上がる世界で悪徳領主になっていた 1巻 感想 ネタバレ