『俺を好きなのはお前だけかよ 8巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
あの夏の日。その少女は、俺の心を奪った。そして、突然いなくなった。
おいジョーロ、知ってたか?
『勝利の女神』ってのは、体育館裏の木の上から、突然落ちてくるんだぜ。しかも、元気な『お姫様』の姿でな。
ズケズケと俺の心に踏み込んでくる天真爛漫なお姫様。ピッチャーとマネージャーとして互い距離を縮めていった……はずが、ある日突然、お姫様は『さようなら』を俺に告げ、目の前からいなくなった。
なぁジョーロ。俺はどうすればいい? あれが、彼女の本心なのか? え?
……ははっ。そうか、そうだよな。俺のやることはひとつだよな。
――っつうわけで! とある臆病な野球少年と、そいつを慕う自由奔放な女の子、俺達が過ごした一夏の物語を……まあ、聞いてくれ。
ネタバレなしの感想
串カッツアー対鳥スタン、ジョーロを巡る聖戦が描かれるシリーズ第8巻です。
となるかと思いきや、今巻『俺を好きなのはお前だけかよ 8巻』はサンちゃんを主人公とした一夏のボーイミーツガールな青春王道物語です。
『俺を好きなのはお前だけかよ 7巻』でジョーロのモノローグで語られたサンちゃんたちの甲子園での詳細も描かれています。
本編主人公であるジョーロの親友ポジションのサンちゃんの恋物語ですので、ジョーロの活躍や恋愛模様をメインで見たい読者には不満が出るかもしれないです。
しかも、サンちゃんは1巻や4巻で読者のヘイトを集めた経緯もあります。
でも、私として今巻の内容にとても満足しています。
突然サンちゃんの前に現れた不思議な少女アネモネ、アネモネと親密になっていく過程で心も野球も成長していくサンちゃん。
現れた時と同様に突然に姿を消してしまうアネモネと、そのことを悲しみながらも前向きに進んでいくサンちゃんの頑張りが恋愛ものや成長ものとして大変に面白かったです。
サンちゃんはアネモネと出会えたことで自身の弱さや臆病さを受け入れ前に進むことが出来ましたし、
アネモネは自分を必要として受け入れてくれる大切な場所と仲間たち、そして大切な人を見つけることが出来ました。
ひと夏の思い出、夏の幻といった切なさは残りますが、サンちゃんとアネモネの出会いは互いにとって必要な物ですし、運命的なつながりだったと思います。
姿を消したアネモネ、大切なアネモネのことを想い挑む甲子園の決勝戦は激熱な展開でした。
試合の結果は既にジョーロのモノローグで語られており、結果が分かっていながらも手に汗握る展開に思えたのは、
読者である私がサンちゃんを始めとした野球部にそしてアネモネに大きな思い入れが生じたからでしょう。
ライバルとの最終打席での対戦、サンちゃんが相手を圧倒できたのはアネモネの姿がそこにあったからのはずです。
モノローグでは違う彼女だと語られていましたが、まだサンちゃんたちはアネモネのことを諦めてなかったのですから、
好きな女の子であるアネモネの前なら100%以上の力を発揮するのが男の子ってものです。
あの子の姿を見つけた時、サンちゃんの勝利は確定なのです。
甲子園決勝戦後のアネモネとの再会と別れの場面は切なさを覚えましたが、それと同時に胸が暖かくなるのも感じました。
アネモネの明るさと前向きさ、そして登場人物たちが悔いを残さぬようにできることは全てやったと思わせられたからかもしれません。
エピローグでの手紙、彼女と会話する姿をみると完璧なハッピーエンドではありませんが、ビターエンドとまでは言えない結末だったと思いました。
サンちゃんと彼女が今後どのような関係を結んでいくかはまだわかりませんが、アネモネの気持ちを理解したサンちゃんなら酷い結果にはならないだろうという信頼感があります。
本編の方で今後のサンちゃんと彼女の姿が少しでも描かれるのが楽しみです。
ちなみに今巻はサンちゃんを主人公とした内容ですが、外伝ではありません。
今巻の最終ページで明らかにされた情報の衝撃と重要度からも、それは明らかだと考えます。
それに、重要な情報を明らかするためだけではなく、ジョーロの本当の窮地にサンちゃんがジョーロの事を助けられるように成長を遂げるための今巻の内容であったとも思います。
それにしても後書き読まない勢とか、最後のページ見逃してしまうんじゃないだろうか?
リアルタイムで読んでいないから分からないけど、最後のページを読み飛ばしてしまうと本当にサンちゃん主人公の外伝と勘違いしそうですね。
ネタバレありの感想
ここから下は『俺を好きなのはお前だけかよ 8巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
サンちゃん
今巻の主人公であり、大きく成長を遂げたサンちゃんです。
アネモネと出会い、自分の弱さと臆病さを仲間たちにオープンに出来る心の強さを手に入れました。
弱くて臆病な自分を守る鎧であった「サンちゃん」という仮面は、アネモネと過ごしたひと夏の経験を経て素顔に結合されたように見えました。。
弱い自分も強い自分も受け入れてくれるアネモネや仲間たちがいるという安心や信頼感がサンちゃんを心を強くしたのでしょう。
心が強くなったサンちゃんだからこそ、八方ふさがりだった内の一方をぶち破り、アネモネと再会することが出来たのだと思います。
夏祭りでアネモネが一華に戻ってしまった展開、甲子園緒戦直前にアネモネとの再会と別離とサンちゃんに厳しい展開で読んでいて本当にしんどかったです。
以前までのサンちゃんだったら、この厳しさに耐えられずに押しつぶされたんじゃないでしょうか。
でも、アネモネと共に過ごし成長したサンちゃんはその厳しさを乗り越えて、突き進んでいけたのです。
アネモネのお蔭で弱い自分をさらけ出し、ジョーロや野球部の仲間たちに助けを求めるサンちゃんの姿は弱ってはいても強さを感じました。
自分の弱さを認め、その弱さを曝け出せる勇気があればこそ、ジョーロも野球部の仲間もサンちゃんを助けようとしたのです。
特にジョーロの助けはサンちゃんにとってとても大きな支えとなりましたね。
アネモネが一華に戻ったことで拒絶され、アネモネにも拒絶されたように感じ失意に落ち込んだサンちゃんが再起できたのは、ジョーロが駆けつけてくれたからです。
大切な親友の窮地に駆け付けたジョーロは本当に格好が良かったですよ。
本編だと本心を見せず飄々とした態度の多いジョーロですが、大切な人の大事な時に発揮する強さは主人公の面目躍如です。
今回はジョーロがサンちゃんの窮地を救いました。
きっとアネモネとの出会いで成長したサンちゃんがジョーロの窮地を救う展開が遠からず来るはずです。
そう考えると今巻でのサンちゃんの成長は、いずれ訪れるであろうジョーロの窮地をサンちゃんが支えるために必要なものだった気もします。
今巻最終ページ、アネモネが残した手紙に書かれていたパンジーとアネモネが友人だったという秘密。
その秘密を知ることとなったサンちゃんは、きっとジョーロをパンジーを、2人の関係を助けてくれる存在になってくれるはずです。
なぜなら、サンちゃんはジョーロの大親友ですし、サンちゃんにとって大切な存在であるアネモネの友達がパンジーなんですからね。
そんな大切な二人の窮地を見過ごすはずがないですよ!
アネモネと一華
表紙をパンジーから奪い、単独で表紙を飾るという偉業を成し遂げたヒロインのアネモネです。
彼女の天真爛漫な明るさは、彼女の抱えていた秘密や悲しみを知ってしまうとより輝いて見えます。
アネモネはそこにいるのに誰からもその存在を求められず、認められないとか本当にキツイです。
アネモネの笑顔と明るさの裏側に存在した悲しみ、サンちゃんと再会して慟哭したアネモネの姿をみると本当に辛く切なくなりました。
そんなきつくて辛い状況の中でも明るく笑えって過ごしていたアネモネの強さといじらしさが本当に愛しいです。
アネモネが誕生してからの四ヶ月、彼女がが心から楽しく過ごせたのはサンちゃんや野球部の仲間たちと一緒にいられた時だけだったのでしょうね。
そんな大切なサンちゃんや仲間たちに別れを告げた時のアネモネの気持ちを考えるととても悲しいです。
やっと自分を受け入れてくれた仲間に自分の事を忘れてと伝えるとか本当に辛すぎる。
でも、甲子園決勝戦終了後、アネモネがサンちゃんや野球部の面々の前に姿を現し、本当に本当の最後のお別れをするシーンは悲しさより前向きさを感じました。
それはお互い悲しみのまま足踏みをするのではなく、アネモネという存在を認め、別れを受け入れたうえで先に進もうとする決意を感じたからなのでしょう。
アネモネという存在は消えてしまいますが、アネモネと共に過ごした大切な時間はみんなの中にずっと残りますから。
「何も持っていないよりも、持っていたものが失われていく時の方が辛い」というアネモネの言葉
一華として持っていた者はアネモネから失われてしまいましたが、アネモネとして得たサンちゃんや野球部との絆はずっとなくなりません。
アネモネが姿を消す前に残した最後の手紙
この手紙が存在したから一華はサンちゃんの前に姿を現すことが出来ました。
それに手紙の中で一華の事に触れている様に、自分が消えてしまうことより残った一華のことを大切にするアネモネの優しさと強さが眩しいです。
アネモネはサンちゃんの闇を振り払った暁の空というだけではなく、一華にとっても暁の空といえるんじゃないでしょうか。
アネモネの手紙を切っ掛けとしてサンちゃんと一華の交流が始まりましたが、この二人の関係がどう変化していくのかも楽しみです。
アネモネを失ったサンちゃんが簡単に一華のことを好きになるとは思えませんが、2人の関係が悪くなったり変になったりはしないという安心感があります。
サンちゃんと一華の仲を取り持ったのがアネモネなんですから、これ以上の信頼感はありませんよ。
続刊でもサンちゃんと一華の交流がちょっとでも描かれると嬉しいな。
サンちゃんとアネモネの関係をメインに描かれると思いきや、最後の最後で実はアネモネとパンジーが友人だったとかサプライズすぎる。
知り合った経緯や友人となった経緯を考えるとパンジーの明らかにしていない事情に不穏さを感じてしまいますね。
最終ページの伏線
アネモネの手紙に書かれていた驚きの情報は、アネモネとパンジーが友達であるということです。
病院へ見舞いに訪れていたパンジーとアネモネが知り合い友達になっていたということと、
アネモネが誕生する切っ掛けになった事故の被害者は軽傷1人、重体2人ということからすると、
もう一人の重体の子がパンジーの知り合いだったであり、そして軽傷ですんだ一人がパンジーなんじゃないかなと推測できます。
アネモネと知り合い友人になった訳ですから、パンジーとアネモネは一度だけではなく何度も出会っていると考えられます。
パンジーのお見舞いの相手が重体だったからこそ、パンジーが何度もお見舞いに訪れアネモネと親しくなったのではないでしょうか。
そうだとするとパンジーが軽傷で済んだ理由は、重体の子に助けられたからじゃないかなとも考えられますね。
重体の子がパンジーの命を救ってくれた相手だとすると、パンジーが「絶対に返したい恩がある」相手はこの重体の子なのかもしれないです。
前巻の感想にジョーロの昔の写真に写っていた女の子がパンジーがパンジーが「絶対に返したい恩がある」相手と考えていましたが、今巻で出てきた情報をみると外れだったようですね。
その子に助けられた恩を返すためにパンジーは「その恩人の代わりを演じて、ジョーロと触れ合っている」のかなと。
ジョーロにパンジーとあだ名をつけられたのも、ジョーロの事が好きなのもその重体の子なのかしら?
もしそうだとすると、恩人の代わりにジョーロと結ばれるためにジョーロのストーカ―をして情報を集め、
ジョーロの人となりを確かめるために地区大会決勝戦の際にジョーロの前に姿を現したのかな?
いや、事故の発生がジョーロ達が2年生になる前の春休みだとすると時間が合わないですね。
となると、その重体となった子とパンジーは元々友人関係で、そのこがジョーロという人の事が好きなのをパンジーは聞いていたという可能性もありますね。
そうだとすると、ジョーロの情報を集めたのもジョーロの人となりを確かめに行ったのもそのこのためという可能性もあるのか。
情報が少なすぎて考察や推測というより、私の妄想になってしまっていますね、、、
もしもジョーロがパンジーに告白した時、その時にパンジーの好意が「誰かの代わりを演じて、相手に触れ合う」ためだと明らかになったとします。
そのなった時にジョーロが受ける驚きと失意は大きなものになるはずです。
そんな恐ろしい展開を見たいような、見たくないような複雑な気持ちではあります。
まあ、そもそも推測が外れっぱなしの私の感想ですからね、外れる可能性が大ではあります。
でも、私の推測が当たってジョーロが絶望に沈んだとしても、今巻の内容を考えると大丈夫だと思えます。
サンちゃんが今巻で心強く成長したことと、パンジーの事情の一端を知ったことは、将来ジョーロとパンジーの関係を助ける為のはずです。
誰かの代わりではなく自分自身の気持ちで相手と触れ合っていたアネモ。
そんなアネモネの姿を知っているサンちゃんがジョーロのそばで支えてくれればきっとなんとかなるはずです。
シリーズ感想の索引
俺を好きなのはお前だけかよ 1巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 2巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 3巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 4巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 5巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 6巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 7巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 8巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 9巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 10巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 11巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 12巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 13巻 感想
俺を好きなのはお前だけかよ 14巻 感想
お勧めの作品
『俺を好きなのはお前だけかよ』シリーズ最新刊である『俺を好きなのはお前だけかよ 13巻』は、2019年12月10日 発売です。
アニメ放映中に売り出したいという思惑が見えますが、間に合うようきっちり作品を仕上げる姿勢はとても大好きです。
発売日まであと二週間、三分の二は読み終えたしきっといけますね。
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