『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
幼馴染みが負けフラグの時代は終わった? 予測不能なヒロインレース開幕!
幼なじみの志田黒羽は俺のことが好きらしい。家は隣で見た目はロリ可愛。陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きお姉系と文句なしの最強である。
……でも俺には、初恋の美少女で学園のアイドル、芥見賞受賞の現役女子高生作家、可知白草がいる! 普通に考えたら俺には無理めな白草だけど、下校途中、俺にだけ笑顔で会話してくれるんだぜ! これもう完全に脈アリでしょ!
ところが白草に彼氏ができたと聞き、俺の人生は急転直下。死にたい。というかなんで俺じゃないんだ!? 俺の初恋だったのに……。失意に沈む俺に黒羽が囁く――そんなに辛いなら、復讐しよう? 最高の復讐をしてあげようよ――と。
ネタバレなしの感想
幼なじみヒロイン好きとしては購入せざるを得ないタイトルに惹かれました。
表紙に描かれているヒロインの眼力にもメロメロですよ。
タイトルと表紙が良して大正解でした、久々に面白いラブコメを読むことが出来ました。
私と同じように幼なじみヒロインが好きな人なら満足いただける内容であると思います。
ストーリーとしては、初恋の相手である可知白草に失恋した主人公の丸末春が、幼なじみである志田黒羽の協力を得て可知白草に復讐を試みるという内容になっています。
初恋が成就しなかったという失意、自分が選ばれなかったことを受け入れがたいちっぽけなプライドが動機である丸末春くんの復讐には全く感情移入は出来ませんでした。
それでも本作品を楽しく読むことが出来たのはストーリー展開と結末がとても興味深かったからであります。
人生に一度っきりの「初恋」という存在を作品の根幹にしている事で、「初恋」に右往左往する思春期の少年少女の青さが良く描かれていますし「初恋」故の身勝手さも良く描かれています。
「初恋」だからこそ失恋相手に拘ってしまうところや、相手のことよりも自分の自尊心を優先してしまうところとか実に思春期らしさに溢れています。
そんな「初恋」を拗らせてしまった丸末春たちの行動と結果が物語をけん引してくれました。
丸末春の「初恋」への復讐は成就するのか?
丸末春は可知白草と志田黒羽のどちらを選ぶのか?
という点は最後の最後まで気になりましたし、その結果はとても面白いものでありました。
本当に本作品はストーリーのクライマックスを盛り上げるために上手く計算されて演出されていると思いましたよ。
予定調和な部分や先が読める部分など粗の部分もありますが、クライマックスのシーンを見られたことであらの部分は気にならなくなりましたよ。
いや、本当に良いエンディングでありました!
本作のヒロインの2人ははどちらも異なる魅力の持ち主です。
初恋の相手である可知白草はクールビューティー系な才女に見えますし、幼なじみの志田黒羽は包容力のある姉系ヒロインに見えます。
どちらも一見テンプレート型のヒロインにも見えますが、物語を読むといい意味でも悪い意味でも印象の変わる良いキャラクターをしていました。
どちらのヒロインも萌える部分がありますし、変なところ拗らせためんどくさい部分もありますが、物語をけん引する魅力は充分ありますね。
私の好みとしては完全に志田黒羽ちゃんの方が好きですわ。
お姉さんぶってからかって来るわりに主人公が強気で攻めると受けきれないところや、主人公の全てをを受け入れる訳では無いところがいいですね。
実質、物語を動かしていたのは主人公の丸末春くんより志田黒羽ちゃんの方な気がします。
志田黒羽ちゃんという存在があったからこそ、本作品はとても面白い作品になったと私は考えていますよ!
本作品は一度読むだけではなく二度三度読んでも楽しめる内容となっています
物語の結末を知った上で再読すると、ヒロインの台詞の意味が改めて分かり別の面白さを感じることが出来ました。
そういう部分が分かると、なぜあのキャラクターのモノローグや内面描写が無かったのか理解できた気がします。
単純なラブコメ作品としても楽しめますし、再読での裏読みも楽しめます。
幼なじみヒロインが好きでラブコメ作品も好きな方なら本作『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』をぜひ読んでみてください。
それにしてもタイトルにある通り、確かに幼なじみヒロインは負けてはいないな(笑)
ネタバレありの感想
ここから下は『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
志田黒羽について
本作品の裏主人公と言っても過言ではない志田黒羽ちゃんです。
好きな相手への告白、「初恋」への復讐と自ら能動的に動き、そして目的を叶えたという点からも志田黒羽ちゃんが物語をけん引していたとも言えます。
志田黒羽の存在こそ本作品最大の魅力であります。
クライマックスで丸末春の告白を断った志田黒羽ちゃんの姿はとても輝いていましたよ。
大舞台で告白されたのに悩むそぶりをみせず、あっさりと断るその姿には王者の貫禄すら感じました。
告白への動じないそぶりを考えるに、あの流れは志田黒羽ちゃんの想定の流れだったんだろうなあ。
志田黒羽ちゃんだけは「負けない」ではなく「勝った」と言ってもいいと思いますよ。
彼女だけが当初立てた目標を変えることがありませんでしたし、その目標を達成しているのですから。
丸末春と可知白草は意図せず「初恋」への復讐という目標は叶えていますが、クライマックス前に目標がそれぞれ変わった上に、その目標は達成できていませんからね。
丸末春 可知白草への「初恋」の復讐⇒志田黒羽への告白して付き合うこと
可知白草 丸末春への「初恋」の復讐⇒丸末春に告白されて付き合うこと
志田黒羽ちゃんの思惑に乗ってしまったというか、流されてしまったせいで2人は「負けない」けど「勝っていない」という事になっていますね。
本作品では丸末春と可知白草のモノローグと感情描写はありましたが、志田黒羽にはありませんでした。
志田黒羽のモノローグと感情描写が無かった理由は、クライマックスでの告白お断りというサプライズ要素を盛り上げるためだったと推測できます。
そのお蔭で、丸末春が可知白草ではなく志田黒羽に告白したこと、しかも告白された志田黒羽がお断りしたという二重のサプライズを楽しむことが出来ました。
ですが、志田黒羽のモノローグと感情描写が無かったため、なぜ志田黒羽から丸末春への好意が弱く見えてしまいました。
志田黒羽がどうして丸末春に「初恋」をしたのかと、その好意の大きさが描かれていれば、最後のサプライズはもっと衝撃を感じたんじゃないかと思うと残念です。
志田黒羽が平気なように見えて「初恋」に拘っていたところや、丸末春からの告白を断る決意を固めていた内面部分はちょっと読んでみたかったですね。
個人的に惜しいなって思うところはありますが、それでも志田黒羽ちゃんがとても魅力的なところは変わりありません。
丸末春への好意はありながらも、一筋縄ではいかぬところや面倒なところが良いキャラクターしていますよ。
主人公への単純な好意や包容するだけのヒロインより、自分の考えや意思を持って行動するヒロインとか本当に大好きですよ
可知白草について
クールビューティーな才女と思わせて中身はかなりのポンコツの可知白草も可愛いですね。
彼女が嫉妬のあまり阿部先輩と付き合っているとか余計なことをしなければ、丸末春と可知白草の「初恋」は拗れることなく成就していただろうに。
いや、それとも可知白草が「初恋」の復讐を完遂して終わったのかな(笑)
何度も諦めず告白したら受け入れるとか思ってそうだけど、丸末春が何度も告白するとかないでしょ。
丸末春くんは告白する前に失恋したと思って挙句に復讐を目指すメンタルの持ち主でしたから。
完全に志田黒羽ちゃんのための当て馬となってしまった可知白草さんに巻き返しを図る手はあるのだろうか?
恋に恋した様な相手を見ていなかった「初恋」ではなく、志田黒羽と可知白草を比較検討した挙句に可知白草ではなく志田黒羽を選ばれてしまうとか、完全な敗北ですよ。
こんな劣勢状態から巻き返す力が中身ポンコツっぽい可知白草さんには無さそうなんだよなあ。
結構、計算高いというか狙って行動を起こせる黒さを持つ志田黒羽ちゃんなら巻き返せるだろうけどな。
というか本作品では「初恋」に敗れた敗者であるはずの志田黒羽ちゃんがリベンジを達成するというエンディングだから、Wヒロインに見えてその実、可知白草さんはサブヒロインであった?
可知白草さんが巻き返すには彼女だけではなく有能な協力者の存在が不可避でしょうね。
誠実で協力的な阿部先輩か汚れ役もできる哲彦を味方につけてやっと志田黒羽ちゃんに対抗できるってところかな。
続刊があるかは分かりませんが、あるとしたら可知白草さんがどう巻き返すかが注目点です。
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