ロードス島戦記 誓約の宝冠 1巻 感想 ネタバレ あらすじ

ロードス島戦記 誓約の宝冠 1巻』のネタバレありの感想になります。

ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。

ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。

完結した名作『ロードス島戦記』シリーズの正統続編です。

シリーズ完結後の続編って出来がちょっとというのが多く不安だったのですが、その不安が杞憂であったと言える面白さでした。

水野先生の力量に安心の出来ですので、かつて『ロードス島戦記』シリーズが好きだったという方や、

戦記物が好きな方にはお勧めの新作ですよ!

あらすじ

“呪われた島”ロードス。戦乱に包まれたこの地も英雄達の活躍でようやく平和が訪れようとしていた。不戦を誓い合う王達であったが、時の大賢者より“誓約の宝冠”が差し出される。「この王冠を戴いた者は他国を侵略出来なくなるであろう…」―かくして、真の平和へと至ったロードスであったがその100年後、フレイムの王位継承者に禁忌を犯す者が現れる!マーモ公王の末裔ライルは、この不戦の誓いに仇なす王国に対抗すべく“永遠の乙女”の力を借りようとするのだが!?戦乱の世を駆ける王子と、伝説のハイエルフ。新たなる時代の「ロードスの騎士」を巡る冒険の旅が今、はじまる!

ネタバレなしの感想

パーンたちの努力と奮闘により平和が訪れたロードス島。

その平和は長く続くのかと思われました。

ですが、パーンたちの時代から100年後、フレイム王国によるロードス統一戦争によりその平和が破られました。

フレイム王国による戦争に正義は無いと反発し、ロードスに再度平和をもたらすため、ロードスの騎士の意思を継ごうとする新主人公ライル。

フレイム王国の侵攻に諸国が対抗できるとは思えず、戦後のマーモ王国の統治体制を見据えて、フレイム側で地盤を築きマーモ王国の統治理念を護ろうとするもう一人の主人公ザイード。

2人の主人公がそれぞれの立場でフレイム王国によるロードス島統一戦争に関わり、侵略する側と抵抗する側の姿を描くロードス島戦記の正統続編の開幕です。

ロードス島戦記』シリーズの正統な続編ですが、ファンタジー冒険譚であった前作に比べて、人間中心の戦記物の要素が強いです。

ファンタジー要素が薄れたのは『終末のもの』との戦いがひと段落し、神々や神秘の歴史が終わりを迎え人間中心の歴史が始まったことの影響なのかなと考えました。

そう考えると神々や世界の意思が大きいファンタジーより、人々の意思や想いが強く反映される戦記物になったのは必然なのかもしれません。

戦記物作品が好きな自分としては戦記物よりのない様にも大満足ですが、『ロードス島戦記』シリーズのファンタジー要素が好きだった人がこの変化をどう思うかは気になります。

内容ですが、制約の宝冠という古代魔法王国時代のマジックアイテムが戦乱の発端となっています。

この宝冠は複数あり、宝冠被ると同様に宝冠を被った他の王国を攻めた時に制約の呪いが発生するという効果があります。

この制約の力によりロードスの各国は他国を侵攻するということが無くなり、平穏が訪れるという効果がもたらされました。

フレイムとマーモを覗く諸国は、他国との争いを防ぐということを制約の宝冠に頼り切り、他国の侵略に対する備えや配慮を怠っていくようです。

一方、新興国が故に成長の活力に富み、富国強兵が進み一国で他の諸国全てに匹敵する力を持ったフレイム王国は、ロードスを統一するための戦争に踏み切ります。

誓約の宝冠の力は全ての王家が宝冠の恩恵を受ければ確かに制約の面が大きいのでしょうが、その効果に甘えてしまった時に平和の綻びが訪れていたように思えますね。

フレイム王国の侵攻に正義があるとは言いませんが、他の諸国側に正義がある訳ではありませんし、フレイムが乗じる隙をみせてしまっていた諸国の方が罪深いんじゃないですかね。

そんなフレイム王国の起こした戦争に正義は無いと断じ、フレイム王国に抵抗しようと動き出したのが新主人公のひとりであり、マーモ王国第四王子であるライルです。

ライルは、ロードスの平和の為に戦い、その功績による地位や権力などを求めなかったロードスの騎士パーンの遺志を継ぎロードスに平和をもたらそうと立ち上がりました。

パーンの遺志を受け継ごうとする気持ちは尊いのですが、ライル自身はまだ自分自身の考えや決意が定まっている訳でもなく、戦闘能力もまだ未熟です。

まさに駆け出しの英雄候補という感じの熱さと危うさを持つ主人公ですが、ライルのみせる青臭い正義感には人を惹きつける魅力を感じますね。

今後、ロードス諸国を廻り各国の国内事情や住民たちを見ていくことで、ライルの考えやパーンの遺志を継ごうといする志がどのように変化していくのかが楽しみです。

未来の英雄候補、ロードスの騎士の遺志を継ごうとするライルを見守り導く存在なのが、パーンの永遠の伴侶であるディードリットです。

前作シリーズのメインキャラクターを前に出し過ぎることなく、かといってただのサービス登場にしないところがグッドですね。

ディードリットに重要な役割を担わせていますが、未来のロードスを作っていくのはライルに任せているところが、前作メインキャラの使い方として文句なしだと思えましたよ。

逆に、もう一人いる前作メインキャラクター(リーフにあらず)はロードスの未来の行方に関わってきそうなので、どう関わってくるかも気になります。

フレイムに抵抗するライルと立場を違え、フレイム側で足場を固め戦後の統治体制での影響力確保を狙う、ある意味現実主義の考えをするもう一人の主人公がライルの兄でありマーモ王国第三王子のザイードです。

ライルの兄という事もあり、ライルに比べて考え方も戦闘力も十分の成熟した強さを持っています。

一国で他のロードス諸国のすべてに匹敵する力をもつフレイムに対して、統一された抵抗が出来ない諸国側では勝ち目がないと現実的に判断しています。

フレイムに抗することができないのなら、フレイムの勝利を前提とした生き残り策を考えるところとか地に足の着いた考え方で、夢や理想を追うライルとの対比になっているのでしょうね。

ザイードの側では己の力量を活かし、フレイム王国で裸一貫からのし上がっていくところが面白い点だと思います。

今巻でもザイードの持つ戦術眼、戦闘能力を活かし、周囲の人間や上層部に認められ地盤を築き始めています。

今後もザイードが活躍をすることで地位を上げていくことになるのでしょうし、ザイードが活躍するということはフレイムの侵攻が進んでいくことになります。

いずれは侵攻軍の側で戦況を変える地位を得たザイードと、抵抗する側のライルの直接対決が見られるのでしょうね。

その時にザイードとライルがどの様に決断し、互いを敵として戦うのかが楽しみですわ。

侵攻する側、侵攻に抵抗する側、二つの視点からロードス島全体を舞台にした戦争がみられるため、どちらの側の立場も理解できるので二重に楽しめます。

ロードス島統一戦争にライルとザイードがどの様に影響を与えていくのか、ライルはロードスの騎士の遺志を受け継ぐことができるのか、ザイードはフレイム王国で立身出世できるのかと主人公たちを中心とした楽しみ方も出来ます。

また、主人公たちの動き以外にも大いに気になる部分が多々あり、それが明かされていくときも楽しみですね。

フレイム新王でありロードス島を舞台にした大戦の立役者であるディアスが統一戦争を起こした理由は何なのか?

大賢者ウォートが将来の禍根になることが分かり切っている誓約の宝冠を諸国の王に授けた理由は何なのか?

前作主要キャラクターのあのお方は、本当にこのまま傍観者にとどまることは出来るのか?

といった点も続刊でどの様に描かれるのかが楽しみですよ。

ネタバレありの感想

ここから下は『ロードス島戦記 誓約の宝冠 1巻』のネタバレありの感想になります。

未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。

制約の宝冠

今回の大戦が勃発した原因の一端がこの制約の宝冠にあるといえます。

確かに他国へ侵略ができなくなるという制約のメリットは大きいです。

でもこのメリットに甘えしまい、各国の指導者が平和を維持しようとする意思が薄れてしまったのが問題でしょう。

平和をもたらすためにパーンやスパーク、カシューたちが奮戦しましたが、そのもたらされた平和を維持することも戦いであり努力が必要なのは明確です。

その努力を怠り、他国との国境線の諍いを解決せず、外圧が意識しないため内部の問題解決に励まなかったとき、戦争の種はまかれていたように思えます。

勃興するフレイム王国の国力を考えれば、隣国のアラニアやカノンこそ内を固めて外に備えなければいけなかったはずです。

平和の維持を制約の宝冠の機能にのみ頼ってしまった時、アラニアやカノンは滅亡のフラグを踏んでしまったのではないでしょうか。

そんなちょっと考えれば分かることを大賢者であるウォートが気づかないはず無いですよね。

となるとウォートが制約の宝冠を諸王に授けた理由は、将来の大乱の火種を蒔きロードス島統一を狙っていたのかしら?

でも、ウォートがロードス島統一王と期待していたナシェルを失い、その期待の対象を失った時にロードス島統一の意思を捨てていたはずです。

ウォートにロードス島統一の意思がないと考えれば、誓約の宝冠を授けた理由は平和を維持することの大切さを諸王や人々の改めて理解させるためなのかな?

平和は一部の英雄たちの力で手に入れることは出来るが、平和の維持は英雄を失ったあとの指導者や人々の絶え間ない努力が必要であること伝えようとしたのかしら。

でも、確かに平和の維持は大切なことですけど、それを理解させるために大戦の火種を残すとか、力ない人々にとって迷惑この上ないな(笑)

カシュー王が「してやられた」と漏らしたのは、一時の平和の為の誓約の宝冠が将来の大戦の火種であると気づいたからな気がします。

ウォートの狙いの真意もいずれ明らかにされることでしょうが、私の考えが大きく外れていることは無いんじゃないかな。

ロードスの騎士

ロードスの騎士とはパーンが残した遺志を受け継ぎ、ロードスに平和をもたらすために行動する人間すべてということなのかな。

パーンの遺志を継ぐものがロードスの騎士となるのなら、それはロードスの騎士という1人の英雄の事ではなく、その意思を受け継いだ人々すべてがロードスの騎士ということですね。

今巻のクライマックスにある通り、ロードス島統一戦争はフレイム王国(ディアス王)対ロードスの騎士(平和を求めパーンの遺志を受け継ぐ人々)になりそうです。

国対国なら戦争で決着がつきそうですが、その住民が敵に回ったら泥沼の殲滅戦と様変わりですよ。

たとえばアラニア王国やカノン王国をフレイムが滅ぼしても、滅びた国の住民たちが抵抗を続ければ、その戦争の終わりが見えなくなります。

フレイム王国がいくら強大とはいえ、住民を敵に回したら占領を続けることは困難でしょう。

ロードスの騎士の遺志を受け継ごうとするライルが目指すべきことは、フレイムの侵略に抵抗しようとする考えを
人々に根付かせることになるのでしょうね。

そして、フレイム側に与するザイードは侵攻を進めるため敵国との戦争で活躍し、占領地の住民の心をつかむことになるのかな。

パーンとディードリットの間に子孫が残せなかったのは、ロードスの騎士とは血縁ではなくパーンの遺志を受け継ぐものであるという事を明確にするためということもある気がします。

パーンの子孫が活躍するパーンの思想ではなく血縁が尊ばれるし、子孫が居るのに活躍しないと失望されるだろうし、子孫ができなかったのも作品的には納得はできます。

でも、パーンとディードリットの間に子供ができて、家族で幸福に暮らしたという平凡といえるハッピーエンドでもよかったなあ。

読者として求めすぎですし、贅沢すぎる無茶とは思いますが、ハッピーエンド主義者としてついつい考えてしまいました。

マーモ王国第一王女

マーモ王国第一王女であり、マーファの神官でもあるローザ。

その正体は小ニースが転生した存在です。

そりゃ、クリードも姉上(ローザ)がその気になれば何でもできそうに思えますが?と伝える訳ですよ。

ロードス島戦記』シリーズ、『新ロードス島戦記』シリーズで世界の危機の要因になりましたし、その世界を救う切っ掛けにもなりましたからね。

そんな重要な前作主要キャラクターをわざわざ出したことには何らかの理由があるはずなんですよね。

それこそ前シリーズから世界を見守るキャラクターを出すのならディードリットとリーフで十分なはずです。

エルフやハーフエルフなら人間世界には関わらないけど、パーンやスパークが作ったロードスの平穏や変化を見守る役割としてはピッタリですから。

そう考えるとローザ(小ニース)はロードス島統一戦争を傍観するだけでは収まらず、フレイムに対抗するために動き出しそうな気がします。

ローザ(小ニース)はマーファ教団との敵対も恐れぬディアス王のことを傲慢と断じていますし、戦う理由が出来れば躊躇わず敵対しそうに思えます。

圧倒的な力量を持つローザ(小ニース)が表舞台に立つとフレイム有利の流れにも影響が出そうです。

ただ、過去の時代の英雄が今のロードス島の人々が紡ぐ歴史の流れにどこまで関わっていくのか、その関わりが許されるのかは気になるところです。

ローザ(小ニース)としたらスパークたちと共に築いたロードスの平和、マーモ王国の理念は尊いものでしょうが、今のロードス島の住民がその考えに従うかどうかは別ですから。

あと、クリードが十年以上想いを寄せている相手ってローザ(小ニース)なんじゃないかしら。

自由を尊ぶファラリス神官であるクリードすらその想いを叶えることが出来ない相手として考えられるのがローザ(小ニース)なんですよね。

血縁者であること、クリード以上の力を持っているローザ(小ニース)だから想いを遂げられないのかなと。

でも、ファラリス信者が自分の想いを抑えたままいるとも考え難いし、どっかでクリードが何らかの行動を起こしそうにも思えます。

クリスタニア

クリスタニアにアシュラムさん達が到着した100年後、ロードス島を舞台にした大戦で滅亡した王国の第二王女が追っ手を逃れて辿りついたのがクリスタニアです。

その後、逃れた人々が大白鳥フーズィーの庇護下に入り、新しき民になったようです。

この滅亡した王国ってのがどこの国になるのかな?

候補としては第二王女の存在が明示されているフレイム、マーモです。

でも、この二王国が滅びるとも思えないんですよね。

個人的な予想ではフレイムの侵攻により滅亡寸前のアラニア王家なんじゃないかなという気もします。

果たしてロードスにあるどの王国の末裔が新しき民となるのか、本作品内で明示されると嬉しいな。

シリーズ感想の索引

ロードス島戦記 誓約の宝冠 1巻 感想

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