
竜王(将棋界最高位)の家にやってきたのはJS(女子小学生)の押しかけ弟子だった!?
玄関を開けると、JSがいた――
「やくそくどおり、弟子にしてもらいにきました! 」
16歳にして将棋界の最強タイトル保持者『竜王』となった九頭竜八一の自宅に
押しかけてきたのは、小学三年生の雛鶴あい。きゅうさい。
「え? ……弟子? え?」
「……おぼえてません?」
憶えてなかったが始まってしまったJSとの同居生活。ストレートなあいの情熱に、
八一も失いかけていた熱いモノを取り戻していく――『のうりん』の白鳥士郎最新作! 監修に関西若手棋士ユニット『西遊棋』を迎え
最強の布陣で贈るガチ将棋押しかけ内弟子コメディ、今世紀最強の熱さでこれより対局開始!!
『りゅうおうのおしごと! 1巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
2018年1月のアニメ化に備えて『りゅうおうのおしごと!』を再読いたしました。
『りゅうおうのおしごと! 1巻』の発売当事に読んで旧ブログに感想をアップしておりましたが、再読した際に改めて面白く感じましたので新ブログの方に感想を新規にアップいたしました。
昔読んだときに比べてより面白く感じたのは、私自身の好みが変わったからなのかもしれないですね。
ネタバレなしの感想
史上4人目の中学生棋士であり、史上最年少のタイトル保持者となった主人公『九頭竜 八一』
タイトル「竜王」取得後、11連敗と敗北の前に気持ちが折れかけていた『九頭竜 八一』の前に弟子志望の女子小学生『雛鶴あい』が現れる。
押しかけ弟子となった『雛鶴あい』と交流を続けるうちに『雛鶴あい』のもつ才能に気づき、彼女を育てたいと思う気持ちが大きくなっていく。
そして『雛鶴あい』と過ごすうちに『九頭竜 八一』も折れかけていた心が救われ、勝負にかける泥臭い勝利への意欲を取り戻していく。
『九頭竜 八一』と『雛鶴あい』の師弟が、互いに影響を与え合い成長をし、熱い将棋をうつお話かな。
物語の出だしはいきなりロリコン風ともシモネタとも取れる内容で面食らうかと思いますが、中身は重たくてとても熱い棋士たちの物語です。
棋士たちが強くなるために見せる努力、貪欲かつ泥臭いまでの勝利へ挑む気持ちが描かれています。
勝負にかける真剣さや才能の有無が見せる非情さは、コメディよりな日常風景との対比で、よりシリアスさを増していると思います。
作風が暖かくコメディよりに描かれているのは、勝負の真剣さ非常さで重くなりすぎるのを防ぐ意味もあるのかなと考えています。
将棋には詳しくない私ですが、将棋と将棋に挑む棋士の真剣さ、熱さ、非情さというものが伝わってきて物語に没頭できましたし、とても楽しく読むことができました。
他作品との比較で申し訳ないのですが、『ヒカルの碁』を思い起こさせますね。
『ヒカルの碁』を読んでいたときも碁のルールは分からないながらも、棋士たちの熱い戦いを楽しく読むことができました。
その『ヒカルの碁』と同じ雰囲気を面白さを、この『りゅうおうのおしごと!』にも感じました。
どちらの作品も、作品自体が持つ面白さ、読者に細かいルールを気にさせない勢いと熱さのある対局シーンがあるからだと思います。
私自身が読んでいたときは、『九頭竜 八一(以下、八一と略します。』や『雛鶴あい(以下、あいちゃんと略します)』の対局シーンで盤面をイメージすることはできましたが、あくまでイメージなので正確な盤面では無かったと思います。
それでも将棋の真剣さ、熱さ、非情さ、そして楽しさを味わえましたし、『八一』や『あいちゃん』、そして彼らと対局したキャラクターの魅力が伝わってきました。
こまかいルールが分からない私のような読者にも、将棋のもつ面白さや熱さを伝えてくれるのは「白鳥 士郎先生」の力量のすごさだと思います。
また、イラストの「しらび先生」の描くキャラクターの魅力もすごいですね。
『あいちゃん』や『空 銀子』をはじめとした女性陣のかわいさもそうなのですが、対局中に見せる棋士として姿も迫力があり、真剣さが伝わってきました。
イラストの描き方もそうですが、その使い方も効果的だったと思います。
P49、P50の挿絵の使い方は、私的にお気に入りです。
暖かい作風の中にある将棋のシリアスさ、登場人物たちの放つ魅力をこれでもかと描く物語。その魅力を十二分に引き出してくれるイラスト。この二つがそろった面白い小説でした。
シリーズ既刊文もすべて読んで感想を上げようと思います。
ネタバレありの感想
ここから下は『りゅうおうのおしごと! 1巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
九頭竜 八一
本作品の主人公『八一』です。
物語り当初は連敗続きで心折れかけていました。
『八一』自身の実力は「竜王位」を取れたことからも桁違いに高いのだと思います。
『ゴッドコルドレン』との対局の際に見せた泥臭く足掻き、勝利を決してあきらめない執念こそが『八一』の実力と才能の一端なのだと思います。
だからこそ「竜王」になれた訳ですし、だからこそ今の心折れたような『八一』の姿を寂しく思う棋士がいるのだと思います。
本作に『二海堂晴信』がいたとしたら、「お前の実力は、力はそんなものじゃないだろう!」「あきらめるのはかっこいいわけじゃないぞ」と言ってくれたんじゃないでしょうか(笑)
『八一』には『二海堂晴信』がいない代わりに、『あいちゃん』という弟子の存在がいました。
自分を尊敬し、勝利すると信じてくれている『あいちゃん』の前で綺麗な敗北などできないと、貪欲に勝利を目指し泥臭く将棋を指す『八一』の姿は熱かったです!
『八一』が弟子を『あいちゃん』を育てるというだけではなく、弟子という存在があって師匠も負けずに強くなるという師弟の熱い関係を見せてくれたことが楽しかったです。
将棋は個人競技ですが、この二人が師弟関係でつながっている限りどこまでも上位に伸びていくんじゃないかと思わせてくれました。
『りゅうおうのおしごと! 1巻』の冒頭で見せてくれた師弟対局を、『八一』と『あいちゃん』が見せてくれることを楽しみにしています。
雛鶴あい
本作品のメインヒロインであり、もう一人の主人公『あいちゃん』
『あいちゃん』は小学校3年生と年齢はロリロリなのですが可愛いだけの存在ではなく、彼女自身の持つ強さを見せてくれる主人公タイプです。
設定された年齢の割りに幼さを感じさせないのは、『あいちゃん』がもつ芯の強さにあるのだと思います。
家出までして押しかけ弟子になるところや、『空 銀子』へ金沢弁で悪態をつくところや、どんな書く上の相手でも臆さずに将棋を指すところなど、芯の強さを表してくれたと思います。
今巻のクライマックス、両親に将棋を続けることを認めてもらうため『空 銀子』と戦い、そして敗れ去りました。
家出するほど思いつめていた夢が崩れ去りそうとしてたときでも、勝負の結果に文句をつけず受け入れる姿は、一人の棋士であり、大人の精神を見せてくれたと思います。
『あいちゃん』の中に天真爛漫な子供の部分と、棋士としてみせる大人の部分があるからこそ、その対比が魅力として輝いている気がしますね。
勝負後、相土下座をしてまで『あいちゃん』を弟子として引き受けた『八一』ですが、『あいちゃん』の芯の強さをみると将来は『あいちゃん』ご両親のような夫婦になってしまうんじゃないかなって思いますね。
『八一』は将棋は強いですが女性心理に弱いし、『あいちゃん』に押されているうちに婿になりそうな気がするな。
あと、『あいちゃん』が笑顔で発する悪態は笑ってしまいましたよ。今後も『あいちゃん』の発する金沢弁は検索して調べようと思います。
今後の展開への期待
『あいちゃん』という弟子の存在と成長を中心にすえながら、その弟子の存在によって強さを取り戻しさらに成長する『八一』の姿が描かれていくんだろうなって思います。
二人の師弟愛と師弟が共に成長していく姿が熱い展開ですから、次巻『りゅうおうのおしごと! 2巻』でもその展開を見たいなと思っています。
そして、今巻を読んでいて更に胸が熱くなったのは『あいちゃん』が、『八一』が対局で死力を尽くし、自身の命を才能をすべて削ってまでも勝とうとする姿でした。
死力を尽くす『あいちゃん』と『八一』の姿と、その二人が死力を尽くすにふさわしい魅力的な対局相手の姿をもっと味わいたいなって思います。
今巻で『あいちゃん』の前に立ち塞がったラスボス『空 銀子』は、クライマックスの対戦相手にふさわしい強さと魅力を放っていました。
将棋の強さはもちろんですが『空 銀子』の将棋にかける思いと『八一』に対する想いは、ラスボスとしての風格とヒロインとしての魅力がありましたから。
現時点では『空 銀子』の将棋の強さと思いは『あいちゃん』の上を行き、『あいちゃん』は一歩及ばず敗北してしまいました。
ですが、『あいちゃん』の方も『空 銀子』に自身という存在を知らしめる爪痕を残したと思います。
この2名が今後、将棋と『八一』をめぐる戦いを繰り広げていくかと思うと先の展開が楽しみですよ。
対局者が魅力的で強さがあるほど、対峙している『あいちゃん』と『八一』も相乗して輝きを放ち、熱い展開が期待できます。
次巻『りゅうおうのおしごと! 2巻』では、どんな個性的かつ魅力的な相手が二人の前に立ち塞がるのかとても楽しみです。
シリーズ感想
りゅうおうのおしごと! 1巻 感想
りゅうおうのおしごと! 2巻 感想
りゅうおうのおしごと! 3巻 感想
りゅうおうのおしごと! 4巻 感想
りゅうおうのおしごと! 5巻 感想
りゅうおうのおしごと! 6巻 感想
りゅうおうのおしごと! 7巻 感想
りゅうおうのおしごと! 8巻 感想
りゅうおうのおしごと! 9巻 感想
りゅうおうのおしごと! 10巻 感想
りゅうおうのおしごと! 11巻 感想