りゅうおうのおしごと! 9巻 感想 ネタバレ あらすじ

りゅうおうのおしごと! 9巻』のネタバレありの感想になります。

ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。

ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。

発売して約10日、読み終えて1週間がたちやっと感想があげられました。

新刊に対する期待値の高さがありまして、私の気持ちが落ち着くまで読むことが出来ませんでした。

また、読み終えてからは新刊の面白さに気持ちが昂り過ぎましたので、落ち着くまで感想をあげることを抑止していました。

それくらい『りゅうおうのおしごと! 9巻』は面白かったですね。

シリーズを読まれている方なら当然読むべきですし、期待の高さを裏切ることは無いと断言できます。

あらすじ

夜叉神天衣。
わずか十歳にしてタイトル挑戦を決めたシンデレラは、両親の墓の前で誓いを立てていた。
「お父さま、お母さま。必ず女王のタイトルを手に入れます……私たちの夢を」
しかし彼女の前に立ちはだかるのは、史上最強の女性棋士にして師匠の姉弟子――空銀子。
二人が争うのは女王のタイトルだけなのか、それとも……?

《浪速の白雪姫》と《神戸のシンデレラ》が遂に激突!
アニメ化も果たしますます過熱する盤上のお伽話、家族の絆と感動の第9巻!
シンデレラの頬を伝う一筋の涙を、若き竜王の飛車が拭い去る――!!

ネタバレなしの感想

今巻の感想で真っ先にいいたいことは、主人公の八一がとても格好良かったということです。

あらすじからも分かる通り、今巻は天衣が主役の物語であり、天衣が対峙する銀子が裏主役の物語であります。

今巻の八一は天衣を裏から支えて成長を見守る師匠役であり、一歩引いた立ち位置になります。

ですが、その存在感と活躍っぷりは主役である天衣に勝るとも劣らないものがあったかと思います。

今巻を読むと『りゅうおうのおしごと!5巻』での出来事が八一を棋士としても人間としても大きく成長させたのだなと実感がわきますね。

そして、『りゅうおうのおしごと!5巻』での八一の立場は、今巻の天衣の立場と重なるものがありました。

あの時、名人に完膚なきまでに叩きのめされ失意のどん底に落ちた八一だからこそ、苦境に立たされた天衣の気持ちが理解できたし、天衣への救いであり期待の一手を差し伸べることができたのでしょうね。

天衣を救えたことこそ、八一が名人との決戦を行う前と比べて大きく成長した部分なのだと思います。

普段はロリコンだし、女心の分からぬニブチンで優柔不断でダメダメな八一ですが、将棋を通して相手の心を支える姿はとても格好良いですし、熱い男なんだなと実感できます。

本当に八一は良いキャラクターだなって思います。

話が八一の事ばかりになってしまいましたが、今巻の主役である天衣のことと裏主人公である銀子のことを中心にして今巻の内容についても語らせてもらいます。

天衣と銀子の対局はタイトル戦に相応しい真剣勝負でありましたし、互いの存在を叩きのめすような命がけの試合ともいえる内容でありました。

圧倒的な強者であり女王位のタイトル保持者である銀子と対局した結果、普段の天衣がまとっている傲岸不遜な態度が鳴りを潜め、年相応に弱い少女の姿が現れていました。

そんな天衣の弱い部分や辛い展開をみせられている訳ですから、読者として思わず天衣を応援してしまうのは当然なことだと思います。

だからこそ、天衣が周囲の人たちに見守られ支えられていることに気づき、自分は決して孤独では無いし家族がいると気づく場面を読んで胸が暖かくなったのでしょう。

そして、クライマックスの対局で第一局、第二局と違い本来の実力を見せる天衣の姿にカタルシスを感じたのです。

全く力及ばない存在であった銀子に対して自分(天衣)という存在を刻み込む渾身の第三局の内容は、天衣の大きな成長と未来を感じさせる内容でした。

いや本当にカッコ良かったし感動しましたよ。

天衣は弱っている姿よりも挑発的で生意気な姿の方が本当に似合うなって改めて思いました。

決着自体は読者の想定の通りかもしれませんが、決着に至る経緯には天衣も銀子も落とさない素晴らしい内容であったと思います。

周囲の人たちの支えを受け入れた天衣の棋風が今後どう変化していくのかとても気になりますね。

天衣と銀子の対局は素晴らしい内容でしたし、その決着には爽やかさや暖かさを感じることが出来ました

ですが、それだけではなく重苦しさは変わらず残っていたようにも感じました。

その重苦しさの原因は、銀子の側にあったと思います。

この対局の結果で一区切りがつき新たな一歩を踏み出した天衣と、これからが本当の戦いとなる銀子との対比からそのような印象を受けたのだと思います。

両者のこれからの道のりに明るい展望を感じるか、重苦しい展望を感じるかの違いからでしょう。

天衣が銀子との対局を通じて大きく成長したように、銀子の側も天衣との対局で得たものがあるといいのですがね。

銀子側の天衣に対する印象が描写されていない分、余計に銀子の中に天衣の存在が刻まれているのかが気になりますわ。

それにしても女流棋士からすると圧倒的な銀子でも、三段リーグやプロ棋士達からすれば勝ち星を計算できる相手という所に空恐ろしさを感じます。

次巻は銀子のプロ棋士への昇段をかけた三段リーグ戦がメインになるかと思います。

天衣との対局を経て銀子は何を得ることが出来て、何を捨てる決意をしたのか?

その結果として銀子はプロになることが出来るのかという点を注目して新刊に期待したいと思います。

『りゅうおうのおしごと! 10巻』の発売は来年ですかね。凄く待ち遠しいですよ。

個人的な評価

凄い面白かったです。

現状、私が読んだ中では2018年度のベスト作品だと思ってます。

いやいや、りゅうおうのおしごと!が5巻完結じゃなく続いてくれて本当に良かった。

良かった点

■天衣の掘り下げ
天衣って自分から結果を出してくれる優等生タイプであり、手のかからない出来の良い生徒でした。

手のかからない分面倒を見てあげる機会が少なくなり、存在感が若干薄かったのです。

今巻ではメインとして活躍し、天衣の弱さと強さが描かれ、彼女が成長する盛り上がる展開が描かれていましたので良かったです。

■あいちゃん
今巻は天衣と銀子がメインのお話でしたが、あいちゃんの活躍場面や成長を感じる場面があったのが良かったです。
いや本当にあいちゃんの存在がネタ枠で終わってしまうのか心配していたので。

2人の対局を間近に見たことで、あいちゃんが棋士として活躍してくれそうで安心しました。

悪かった点

■なし
普段ならロリコンネタ要らないですわ。って思っていましたが、今巻の重苦しさだとロリコンネタがいい箸休めになってて助かりました。

ネタバレありの感想

ここから下は『りゅうおうのおしごと! 9巻』のネタバレありの感想になります。

未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。

天衣について

まずは今巻のメインであり主役である天衣についてですね。

今巻の天衣ちゃんは二つ名のシンデレラの様に灰の中に埋もれながらも沈まず、輝きを放つ物語でしたね。

銀子との最終戦、重苦しい展開から一転して銀子に一矢報いる姿が本当に良かった。

普段ツンツンしている天衣が追い込まれて弱っている姿が痛々しかったので、将棋的にも精神的にも復活して盤外戦を仕掛ける天衣の姿には喝采を送りたかったです。

八一からの助力である<4-二銀型 角交換向かい飛車>を見せつけて、更に言葉でも伝える姿、本当に天衣の魅力が詰まっていたと思います。

そして、銀子を敗北にも等しい先手千日手に追い込んだ姿も、千日手に追い込まれた際に拒んで真向から戦うことを選んだ姿にも興奮しましたよ。

やっぱり天衣は強い子なんだなって思いました。

ツンツンしている子が見せる弱々しい姿も魅力的ではありますが、真の魅力はそこから復活してツンツンしているところを見せるところにありますよね(笑)

亡くした両親と共有していた夢<女王位>にかけた天衣の想いは、不慮の事故とその事故を利用した銀子の指し手により悪夢に代わりました

夢を懸けて臨んだ対局だけにその失意は余りにも大きいものだったと思います。

実力を出し切っての敗北ならばまだしも、自身の不慮が原因だけに悔いが残りますし、そこから精神的に立て直しを図ることも難しはずです。

そんな追い込まれた天衣を救ったのは八一の将棋であり、あいの心遣いと優しさでありました。

失意の天衣を救ってくれたからこそ天衣は両親だけではなく周囲の人たちを認め、清滝一門に属するとの最後のスピーチにつながっていったのでしょうね。

今回は夢を叶えることはできませんでしたが、銀子に一矢を報い天衣が持つ才能と実力の片りんを見せることは出来ました。

だからこそ、敗北したのにも関わらず明るさに爽やかさを覚えましたし、興奮を出来たのだと思います。

天衣は八一やあいと共に将棋を続けていき、あいを始めとしたライバルたちと切磋琢磨をする中で再度、夢<女王位>に臨みその夢を叶える瞬間がきっと訪れるはずです。

それにしても八一の恋心を自覚し、あいにその恋心を直接伝える天衣ちゃんは若いし、優しい子ですね

将棋でも恋愛でも2人(天衣とあい)がライバルとして今後も交流していってくれる姿をいつまでも見続けていきたいです。

本当にクライマックスのモノローグで八一への恋心を語る天衣ちゃんは尊いですわ。

そして、P.333の天衣ちゃんの笑顔は至高の挿絵です。本当に最高ですな。

銀子について

天衣ちゃんの姿に爽やかさを覚えましたが、一方銀子の方には終始息苦しさと重さを感じていました。

天衣が主役としての物語であり銀子が敵役になっているからというだけではなく、銀子が将棋界で置かれている現状と銀子自身の想いが息苦しさと重さの原因であったのだとおも増す。

今巻は天衣の成長物語であると同時に、銀子の置かれている状況の説明会でもあったのでしょう。

銀子は女流棋士としては絶対的であり過ぎるがゆえに敗北を望まれ、プロ棋士や三段リーグのライバル達からは侮られ勝ち星を計算される。

そんな苦しい状況の説明がされているわけですから、銀子の立場になって考えれば息苦しさを覚えるのも当然だと思います。

女流棋士からその強さを羨望されるのではなく、その棋風に辛さしか感じないといわれるのは、本当にキツイですな。

いやいや今巻は天衣にも厳しい内容でしたが、それ以上に銀子にとって優しくない内容でしたね。

両者にとって優しくない内容でしたが、先に明るい展望がみえた天衣に比べ、今後さらに辛い展開が予想できる銀子にとって余計に厳しい内容だなあ。

八一をして地獄と言わしめる三段リーグを勝ち抜くため、銀子は将棋を強くする以外のすべてを切り捨てる決意を述べていました

この点は、更に成長するため周囲の人たちの支えがあることを認め求めるようになった天衣との対比として描かれているのでしょう。

そして『りゅうおうのおしごと!5巻』で八一がドツボにハマっていた時に縋りついた考えであり、今巻で八一が改めて否定した考えでもあります。

作中で否とされたことを基にして戦うことを選んだ銀子の先行きには明るさが見受けられません。

今巻の天衣との熱い対局ですら意味がないと切り捨ててしまった姿には、寒々しさと痛々しさを覚えました。

銀子が将棋を強くなること以外のものを切り捨ててまで強くなりたいと願うのは、いまの銀子に余裕がないからなんでしょうね。

だから今の銀子の棋風に辛さしかなくゲンナリした感じを抱かせてしまうのかもしれないです。

同じ立ち位置の人間がいない苦しさ、目指す夢(プロ棋士となり八一と対局する)の遠さというネガティブな要素が銀子から余裕を奪っているのだと思いますね。

そんな苦しい状況にある銀子を救えるのは、八一なのか桂香なのか、それとも天衣なのか。

三段リーグで追い詰められた時、強くなるために捨てるものが無くなった時に銀子へ手を差し伸べる存在が現れることと、その手を銀子が受け入れることを望んでしまいます。

その他女流棋士について

今巻は色々な女流棋士に見せ場があって楽しかったですよ。

特に目立ったのはあいちゃんと鹿路庭 珠代かな。あとは供御飯 万智ですね。

あいちゃんは本当に将棋を指さなくなっていてその存在意義に心配すらしていたのですが、今巻の活躍を見て安堵しました。

あいちゃんは人が良すぎるというか優しすぎるというか、その性質的に人と争うことが苦手なんでしょうね。

だからこそ、人のためには戦えるけど自分のためには中々本気になれなかったのだと思います。

ですが、今巻で親しい2人(天衣と銀子)がタイトルを賭けて戦う姿を間近でみたことで、その熱い戦いを自分もしたいと欲求を持つことが出来たようです。

物語にして9冊かけて、やっとあいちゃんが自分の欲として戦いたいという意思を見せてくれたことに安心しました。

本当に八一の側にいられれば、八一と将棋がさせればいいという考えのままでいたら、あいちゃんはサポート要員で終わってしまいますからね。

今後、あいちゃんが作中随一という才能を磨き天衣や銀子、その他女流棋士達と熱戦を演じてくれることを望んでしまいます。

あいちゃんが想定通りの輝きを見せてくれたとしたら、鹿路庭 珠代は想定以上の輝きを見せてくれました

登場した当初はここまで美味しいキャラクターになるなんて、私は予想していませんでしたよ。

鹿路庭 珠代の立ち位置は主要登場キャラクターと適度な距離感があり、作中でぶっちゃけ話を伝えるのに丁度いいのかもしれないですね。

銀子に対する他の女流棋士たちやファンの勝手な想いを伝える役割を他のキャラクターがやるとそのキャラクターへの反感を招きそうですから。

あと鹿路庭 珠代が天衣に抱いている複雑な想いは本当に良く分かります。

自分を叩きのめした存在には、圧倒的なままでいて欲しいし輝いた存在でいて欲しいという気持ちは同意できます。

相手に対する期待(さらに強くなってほしい、更に輝いてほしい)があるから、その相手を目指して自分も頑張ろうと思えますからね。

もし、天衣が失意のまま無様に敗北していたら鹿路庭 珠代は大きな失望を抱いていたと思います。

だからこそ、天衣が輝きを取り戻した姿を見た時、家族や一門以外で一番喜んだのは鹿路庭 珠代なのだと思います。

また、鹿路庭 珠代と天衣が戦う姿が見たいな。その時、鹿路庭 珠代がどこまで食い下がりそんな彼女に対して天衣顔の様に思うかが気になります。

そして、供御飯 万智さんですが、前巻の約束通り八一とデートできてよかったですね。

あの約束はなあなあで終わっちゃうかなと心配していましたのすぐに実現して安心しました。

ただ、デートの中では色っぽい話がまったくないのは、今巻のメインが供御飯 万智ではないからでしょうな。

それでも2人で出かけたわけですし、恋愛面では一歩リードなのかな?

八一の方には全くデートだという意識は無かったのですが。ただ、八一くんは巨乳が好きっぽいので一歩リードしているのは間違いないはずです。

ただし、あいちゃんを弟子にしてしまったのは痛恨の悪手ですね。

供御飯 万智の優位な点である八一の特徴をつかむほどの観察力をあいちゃんに授けてしまう危険性が高いですから。

大人の余裕なのか悪手だったのかは次巻以降でわかるのかしら(笑)

シリーズ感想の索引

りゅうおうのおしごと! 1巻 感想
りゅうおうのおしごと! 2巻 感想
りゅうおうのおしごと! 3巻 感想
りゅうおうのおしごと! 4巻 感想
りゅうおうのおしごと! 5巻 感想
りゅうおうのおしごと! 6巻 感想
りゅうおうのおしごと! 7巻 感想
りゅうおうのおしごと! 8巻 感想
りゅうおうのおしごと! 9巻 感想
りゅうおうのおしごと! 10巻 感想
りゅうおうのおしごと! 11巻 感想

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圧倒的な才能を見せる銀子に対して、他の女流棋士が羨望ではなく諦めをみせるのは銀子の棋風にあるのかもしれないですね。

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コメント

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