『セブンス 7巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
『セブンス』シリーズも7巻まで発売されましたね。
私にとって大好きな作品ですが売れ行き好調という話題を耳にしたことがありませんでした。
その為、『セブンス』シリーズがきちんと完結するまで刊行されるのか?という部分で不安もありました。
ですが、7巻まで発売されましたし、第一部完ともいえる内容でシリーズ完了ともなりませんでしたので、今後の刊行も期待できそうです。
個人的に安心しましたよ。
あらすじ
妹と再会!? パーティー解散の危機!? 国を傾ける『邪神の子』のおぞましい力が明かされる! ここから始まる第「7」巻!
王宮貴族の企みを潰しグリフォンを討伐したライエルたちは、
事実が隠されることがないように、先んじて王都に噂を広めていた。
王宮貴族たちはサークライ家に責任を押し付け、
追い詰められたラルフは、グリフォンの死体を引き渡すようにライエルを呼びつける。
ライエルは「成長」の影響でハイテンションになっている真っ最中だったが、
交渉は想定どおりに進み、ラルフから大金を巻き上げることに成功する。
一方、街で情報を集めていると、王太子が隣国の姫との婚約を破棄したという噂を耳にする。
しかし、王都の住民は何故かそのことに違和感を抱いておらず、平穏そのもの。
王都に漂う嫌な雰囲気を警戒していたライエルは、
婚約破棄された姫君・リアーヌに会い、この国の異常の原因を語られる。
リアーヌが挙げたのは、ライエルの因縁の相手。
ライエルを屋敷から追い出した妹・セレスの存在だった――。
ネタバレなしの感想
今巻はとても盛り上がりましたし、興奮する内容でした。
序盤こそ前巻から引き続いてグリフォン退治エピソードが描かれていますが、その顛末までが描かれた後からが今巻のメインエピソードが始まります。
そのメインエピソードは、あらすじにもある通りライエルの妹であるセレスのことです。
ついにセレスがライエルの前に現れ、ライエルと仲間たちを苦しめるといった展開になっています。
本作品のラスボスともいえるセレスは、圧倒的な存在感と影響力、恐るべき力を持っていました。
セレスによって運命や未来を歪められた存在が出てしまうのも納得できる威圧感がありましたよ。
過去の経緯からのトラウマ、直接対峙した時に感じた圧倒的な力量差、そんな絶望的な状況でもライエルが挫けずセレスに立ち向かっていった展開には胸が熱くなりました。
かつての、冒険者として経験を積む前のライエルでしたら、セレスに一蹴されてここで命を無くすか、心が折れて逃げ出していたでしょうね。
ライエルがセレスに立ち向かえたのは、共にいたシャノンとエヴァのお蔭であり、ともに冒険をして成長してきたヒロインたちのお蔭であり、やかましいながらも信じて見守ってくれるご先祖様たちがいてくれたお蔭といえます。
物語当初の一人では何もできず、人の心が理解できていなかったライエルの姿からは想像もつかない成長ぶりですよ。
今後も、ヒロインたちとご先祖様たちとともに経験を積んでいければ、あるいはセレスと互角に対峙することも可能となるのではと思わせてくれます。
セレスと直接対峙したことで、決意をし覚悟を決めたライエルの成長とその先行きがとても楽しみです。
とはいえ、ライエルの目指す先はまだまだ険しいものがあります。
目標の大きさと険しさもそうですが、それ以上に仲間内に蔓延る不信感をどうにかしないといけませんね。
成長したとはいえ対人能力と女心にはまだまだ疎いライエルに果たしてその問題を解決できるのか!?
といったところも楽しみにして次巻の発売を待ちたいと思います。
まあ、ライエルがらいえるサンなれば解決出来ちゃいそうな気もしますがね(笑)
個人的な評価
いや本当に良かった。
面白かったってのは当然ですが、それ以上に遂にセレスとの再会までたどり着けたというのが良かったです。
ここまでの道のりは長かったですからね。
打ち切りエンドにはならないでくれて本当に安心しましたよ。
良かった点
■ついにライエルの目標が定まった点
ライエルは廃嫡されてから冒険者となり、冒険者としては成長していましたが、大きな目標は特になかったですからね。
それがセレスと再会したことで遂にライエルの冒険の目標が定まりました。
ここまで長かったな。
ヒロインたちやご先祖様たちとの交流は楽しかったですけど、作品として目標があるのとないのでは面白さが違いますから、目標が定まって良かったです。
ここから、ライエルたちが目標を達成するためにどう戦っていくのか楽しみにしています。
悪かった点
■らいえるサンの活躍が控えめだった点
今巻のらいえるサンはちょっと出番控えめでしたね。
口絵のらいえるサンを見て期待していただけに、ちょっと肩透かしですよ。
まあ、セレスとの戦いにらいえるサンが前面に出るわけにいかないし、仕方ないのかな。
次巻での活躍を期待します。
ネタバレありの感想
ここから下は『セブンス 7巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
ライエルについて
これまで大きな目標は持っていなかったライエルでしたが、今巻でついに決意と覚悟をもって目標を定めました。
当然、その目標はセレスの打倒です。
ここまで来るのが本当に長かった。
覚悟を決めたのが『セブンス 7巻』ですよ。既刊7冊もかけてようやく目標が定まったのですからね。
ただ巻数をかけた分、仲間たちとの信頼を築いていく姿や、ご先祖様たちに見守られ鍛えられていく姿に深みが出たのでしょう。
だからこそ、ライエルが仲間たちやご先祖様たちに決意を告げた場面に緊迫感がありましたし、読んでいて興奮したのだと思います。
今巻のライエルは本当に熱かったし、格好良かったですよ。
圧倒的なセレスの力を前にしても挫けない姿には、本当に胸が熱くなりましたね。
ライエルが挫けなかったのは、共にいたエヴァやシャノンを守りたいという気持ちが大きかったと思います。
自分のためにではなく、自分のことを想ってくれる相手のために奮起するという展開は本当に私の大好物です。
王道展開だからこそ熱いですし、王道展開だから陳腐にならないように描くのが難しいシーンですよね。
その点、このセレスとの対峙シーンは、ライエルの成長ぶりとヒロインたちとの交流を積み重ねとを見てきたので読んでいて熱くなれたのだと思います。
そして、圧倒的なセレスに一矢報いたのがシャノンの投げた雪玉だったというのも面白かったですよ。
シャノンの変哲もない雪玉をセレスが避けられなかったのは何か理由があるのかな?
このことがセレスを打倒することの切っ掛けになったらシャノンはMVPですね。
セレスと戦う決意を固めたライエルが、ヒロインたちに自身の覚悟を告げて、ヒロインたちに未来を選ばせたのもライエルらしいと思いました。
ヒロインたちの身の安全を考えればついて来て欲しいとは、ライエルなら言えないでしょうしね。
その優しさがライエルの美点であり、ヒロインにちょっと物足りなさを感じさせる点かなってきがします。
らいえるサンならヒロインたちについて来いと言っていた気がします。
俺が世界を救う瞬間を間近の特等席で見せてやるぞとか言いそうですし。
それでもヒロインたちが皆、ライエルについていくことを選んだのは、これまで見てきたライエルの姿に好意を感じているからなんでしょう。
この時こそ、ライエルのハーレムが結成された瞬間ですね。
ヒロインたち
とうとうヒロインたちの間で信頼関係が崩れぶつかり合う展開になりました!
ヒロインたちが単純に仲が良い訳じゃないってところは、セブンスの魅力的な部分だと思います。
皆それぞれ目的を持ってライエルと共にいるわけで、ヒロインたちが仲良くしているのも根本的にはライエルのためです。
不信感を押しつぶして表面的に仲が良い様にいるのがライエルのために為らないと思えば、相手のことを信頼できないとライエルに伝えた訳です。
今巻で爆発した不協和音の原因は、ノウェムを信頼できるかできないかという点です。
ノウェムが居たからライエルはセレスに殺されるに済んだのですが、その事象だけ見てノウェムを信じろと言われても不信感が積み重なっているので無理でしょうね。
ミランダからすればノウェムから説明が少ないところが悪いように見えますが、ノウェムからすればそもそも説明の必要性を感じないのでしょう。
ノウェムはライエル至上主義でありライエルの役に立つからという理由でヒロインを受け入れているだけです。
ですので、ノウェムからミランダを始めとしたヒロイン達への想い入れは無いのでしょう。
元々薄かった信頼関係が今回の件で霧散してしまったわけです。
改善するためには互いを信頼できる何かを行うか、信頼は出来ないまでもライエルのために協力関係を築くしかないですよね。
次巻でもヒロインたちの関係が不穏なままなのか、一時停戦となり冷戦関係になるのか、協力関係を築けるようになるのかヒロインたちがどうなるのか怖いもの見たさでワクワクしてきます。
セレスと戦うためには戦力となる女性が必要な訳ですから、今後もヒロインが増えるのは約束されていますしね。
どんどんヒロインが増えて、ヒロイン内で派閥が構成され、更にぶつかり合う場面が見られると思うと楽しみです。
ご先祖様たち
ご先祖様たちの存在は、ライエルにとってとても大きいものなんだなと改めて感じました。
ライエルがセレスを倒すと決意した時に、ご先祖様たちから厳しい言葉を投げられ、目を背けたくなる未来を見せつけられました。
一見するとライエルにとって厳しい行為に見えますが、その行為はライエルのためを思っての優しさ以外の何物でもないですね。
ご先祖様たちはライエルのことをからかったり、厳しくすることもありますが、ライエルのことを肉親として愛情を注いでいます。
そんな愛情を注ぐ相手に厳しいことを告げたり、目を背けたくなる未来を見せたい訳がないんですよね。
ライエルの為を想えばこそ安易な決断をしない様に、決断の結果に後悔しない様に厳しい対応を行ったのでしょう。
セレスのために実の両親から見放され肉親の情から切り離されたライエルですが、宝玉のお蔭でご先祖様と繋がり、肉親からの愛情を受けられたことはライエルの精神面でとても大きい恩恵であります。
ただ、セレスに負けた時の被害の場面で傷ついたヒロインたちの恨み言は精神的にきつすぎましたし、傷ついたヒロインたちの惨状は痛々しすぎた気もしますがね。
ライエルが自身で考え決断したことは、ご先祖様たちにとっても喜ばしいものであったとも思います。
これまで決断できず人に頼ることが多かったライエルが、自分で考え自分で厳しい道のりを歩むと決めた訳ですからね。
ライエルの成長を一番身近で感じている午前ぞ様たちですから、その喜びもひとしおであるといえます。
この成長したライエルの姿を初代や二代目にも見てもらいたかったですね。
シリーズ感想の索引
セブンス 6巻 感想
セブンス 7巻 感想
セブンス 8巻 感想
お勧めの作品
今回のお勧めは『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 1 (GCノベルズ)』です。
『セブンス』の作者である三嶋与夢先生の作品です。
コチラの作品の主人公もとても良い性格しています。
基本小物なんですが、溜まった鬱憤を解消する姿は爽快感と下種さを感じさせてくれますよ。
ただ、ヒロインたちがダメなヒロインではなく本当に良い娘なのが、三嶋与夢先生の作品らしさから外れていますが(笑)
セブンスのライエルとフィデル・トレースのやり取りが楽しめる読者なら、この作品も大いに楽しめると思いますよ。
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