『探偵はもう、死んでいる。 1巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
第15回MF文庫Jライトノベル新人賞《最優秀賞》受賞作
「君、私の助手になってよ」
四年前、地上一万メートルの空の上で聞いた台詞から、俺と彼女の物語は始まり――終わった。俺・君塚君彦は完全無欠に巻き込まれ体質で、謎の黒服に謎のアタッシュケースを持たされたあげく、ハイジャックされた飛行機の中で、天使のように美しい探偵・シエスタの助手となった。
それから――
「いい? 助手が蜂の巣にされている間に、私が敵の首を取る」
「おい名探偵、俺の死が前提のプランを立てるな」
俺たちは、世界中を旅しながら秘密組織と戦う、目も眩むような冒険劇を繰り広げ――やがて死に別れた。
一人生き残った俺は高校生になり、再び日常というぬるま湯に浸っている。
なに、それでいいのかって?
いいさ、誰に迷惑をかけているわけでもない。
だってそうだろ?
探偵はもう、死んでいる。
ネタバレなしの感想
第15回 MF文庫J 新人賞 最優秀賞受賞作。
特設サイトも開設されており、作家やライター、ブロガーなどが多数の推薦文をあげていることもあり話題の作品です。
「お客様の中に、探偵の方はいらっしゃいませんか?」というキャッチ―なセリフから始まる異能バトル小説です。
探偵というワードが頻発しますし、推薦文でもミステリーという言葉がでていますが推理小説要素は薄いというか皆無です。
神秘や伝奇の方の意味でのミステリーであるという認識でいれば、肩透かしはないはずです。
世界の敵と戦っていた名探偵の助手であった主人公の君塚君彦の前にひとりの少女が現れます。
その少女、夏凪渚からの依頼を受けたことで停滞していた君彦の世界が再度動き出します。
「探偵はもう、死んでいる。」のですが、その探偵の遺志は死んではいません。
名探偵の遺志を継ごうとする新たな名探偵 夏凪渚、新たな名探偵の助手足らんとする君塚君彦
新たな名探偵と助手の戦いがここから始まるといった内容になっています。
かつていた偉大な名探偵の遺志を継ぎその面影を追いながらも、
いずれは現名探偵コンビが実績を積み先代を越えていくというお話となりそうな期待感があります。
『探偵はもう、死んでいる。 』はタイトルにナンバリングがされていません。
ですが、来月には『探偵はもう、死んでいる。 2巻』が発売される通り続刊前提の内容になっています。
そのため、今巻では主要キャラクターたちの紹介がメインの内容になっています。
今後、主要キャラクターとして活躍するであろう君彦、夏凪、斎川やシャーロットたちの会話は軽妙でノリが良く楽しめます。
反面、1冊の中で複数のキャラクターを登場させたために一人一人の掘り下げが浅いと感じました。
物語の中心となる存在である名探偵と助手に絞って掘り下げて描いても良かったのではと感じました。
名探偵と助手の掘り下げが浅かったことが原因で、彼らの行動や言葉に違和感を覚えてしまいました。
名探偵と助手が積み重ねてきた想いや喪失感、その喪失感を埋めようとする新たな名探偵と助手の関係はしっかり見たかったなという思いがあります。
本来なら彼らの決意や覚悟、熱さ感じるはずの場面やセリフに説得力が薄く違和感が残ってしまいました。
なぜこの場面でその言葉がでてくるのか、そしてその言葉で本当に納得したのかという点が読者として説得力や熱さを感じなかったのです。
この辺は次巻以降でキャラクターの過去や関係をもっと掘り下げて描いてくれれば改善するのかもです。
全体的に不満な点ばかり書いてしまってますね。
私の期待値が大きすぎたという点や、探偵というワードに推理小説部分を求めてしまったせいかなと思います。
作品が悪いのではなく、私が作品に求めているものとミスマッチしてしまったせいですね。
キャラクターたちの軽妙な会話劇、次から次へと事件が発生して退屈させない物語構成、
そして名探偵というキャラクターの魅力点は賞を受賞するに値する面白さとは思います。
今後関数を重ねることでキャラクターの掘り下げが進み、世界観が明らかになればさらに面白くなるんじゃないでしょうか。
ネタバレありの感想
ここから下は『探偵はもう、死んでいる。 1巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
シエスタ
既に亡くなっている名探偵 シエスタです。
シエスタと夏彦が再会したところが本作のもっとも盛り上がる場面であることは間違いないでしょう。
夏凪の身体を借り受けたシエスタと君彦の会話は付き合いたての恋人同士の様に仲睦まじく見えて良かったです。
2人の仲睦まじい姿を見るとシエスタと君彦が過ごした3年間の内容も見たくなりますね。
今回、クライマックスのバトルで一時的に復活したシエスタですが、今後はもう復活しないのかな。
ここぞという場面でシエスタの復活を見たい気もしますが、そうすると夏凪の活躍や成長が描けないし難しいかな。
既に亡くなっていますが本作のメインヒロインのシエスタ。
彼女に関する謎や秘密はまだ全然明らかにされていません。
なぜ、彼女の血液を浴びると逆らえなくなってしまうのか?
なぜ、世界の敵たる秘密組織≪SPES≫と戦っていたのか?
そして、なぜ彼女の心臓は夏凪に移植されたのか?という点は明らかにされていません。
君彦との出会いもシエスタが仕込んだ形跡あるし、いったいどこまで秘密が多い女性なんだ。
死してなお影響力が大きすぎるシエスタ、そのシエスタの遺志を継いだ夏凪はシエスタを超えることができるんだろうか。
今巻のラストバトルで対峙したカメレオン怪人がシエスタの仇でした。
でも、カメレオン怪人さんあまりに小悪党というか小物じみて有能に見えなかったんですよね。
聞かれてもいないことべらべらしゃべるし、船を沈めるチャンスなんていくらでもあったのに無駄にしているし。
偉大な名探偵シエスタの仇なんだから、せめてもう少し有能で居て欲しかった。
敵が無能すぎると有能であるはずの名探偵も有能に見えなくなってしまいますよ。
シリーズ感想の索引
探偵はもう。死んでいる 1巻 感想
お勧めの作品
ギャラリーフェイク(19)
『探偵はもう、死んでいる。』を読んでいた時に、
ギャラリーフェイクの「ショパンの心臓」というエピソードが思い浮かびました。