『トレース 科捜研法医研究員の追想 1巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
科学捜査研究所。通称、科捜研。警察組織にありながら、被害者でも組織のためでもなく、ただひたすらに真実究明のためにのみ存在する特異な機関。
犯罪捜査の最前線を、『元科学捜査官』の異色作家が描く、本格警察サスペンス。
ネタバレなしの感想
科学捜査研究所(科捜研)の法医研究員を主役にした事件捜査物のミステリー作品です。
主人公の真野礼二は有能な法医研究員であり、23年前に起きた「練馬一家殺人事件」の唯一の生き残りでもある。
ヒロインの沢口ノンナは新人法医研究員であり、真野の指導を受けていくことで成長を遂げていく。
この2人が数々の事件の物証の調査や証拠の鑑定を行うことで客観的に事件の真実をみつけていく物語です。
1つ1つの事件は一話完結や中短編(2-3話)で描かれていますので読みやすくテンポ良く進んでいきます。
また物語洗体のメインストーリーとして、真野の過去である23年前に起きた「練馬一家殺人事件」があるため、そちらの事件の動機や犯人、真野の思惑といったところもストーリー全体を通して楽しめます。
『トレース 科捜研法医研究員の追想』が2019年1月よりドラマ化するということで原作であるこちらの作品に手を出しました。
私は元々海外ドラマ『CSI:科学捜査班』が好きでしたので、同系統である本作品も楽しむことが出来ましたよ。
『CSI:科学捜査班』とは違い、被疑者たちと主人公たちが対峙することはありませんが、調査や鑑定を通じて被害者の残した想いである証拠を見つけていくところは、本作品の魅力的な部分であると思います。
主人公の真野礼二は鑑定について膨大な知識量を誇り、感情を露わにせず冷静に鑑定をしていきます。
その姿は正に鑑定する機械のようにも見ることが出来ますが、実際は被害者や被疑者の残した痕跡(想い)を残さずにくみ取り、客観的な真実を拾い上げようというところから彼の心の奥には強い想いがあるのだなと感じざるを得ませんでしたよ。
彼が感情を感じさせない一風変わった人物になっている理由は、彼自身が遭遇した23年前の「練馬一家殺人事件」にあるのだと考えられます。
真野礼二というキャラクターの根幹である「練馬一家殺人事件」
その事件を個人的に調査している真野礼二の動きと、事件の原因と犯人、その犯人に対して真野礼二がどの様に対峙するのか、本作品の結末が気になります。
ヒロインの沢口ノンナは新人法医研究員です。
法医研究員として知識や技術が不足している彼女の存在することで科捜研とは何を行うところなのかや、どのような鑑定方法があるのかという点を読者にも紹介することになっています。
また沢口ノンナの視点は一般人や読者に近いものがありますので、事件に対する苛立ちや不満などを代弁してくれる存在でもあるかと思います。
そんなまだ一般人目線の沢口ノンナが真野礼二に師事することで、法医研究員としてどのような成長を遂げていくのかも本作品の見どころの一つであると考えられます。
現状、彼女は真野に支えられるだけの存在ではありますが、今後物語が進展していく中で逆に真野を助ける成長を見せてほしいです。
本作品は『CSI:科学捜査班』『科捜研の女』といった作品が好きな方なら十分に楽しめると思います。
一つ一つの事件に被害者と被疑者の想いや人生が隠されており、その隠された想いや人生を真野達が証拠品を鑑定することで浮き上がらせていきます。
一つ一つの事件やエピソードを事件捜査物、人間ドラマ物としても楽しむことが出来ます。
また、メインストーリーである23年前に起きた「練馬一家殺人事件」という大きな事件が徐々に明かされていく姿と、その事件に対する各登場人物の思惑も行動も楽しむことが出来ます。
ドラマでは最後まで描くのかしら?
その辺も含めてドラマの原作である本作品を楽しんでいきたいと思います。
ネタバレありの感想
ここから下は『トレース 科捜研法医研究員の追想 1巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
真野礼二について
ネタバレなしの感想にも書きましたが、真野礼二は一見感情が読めず何を考えているかも分かりにくい人物です。
ですが、事件の証拠品を鑑定している時の真野礼二は表面上無感情に見えますが、被害者や被疑者の残した痕跡を絶対に見逃そうとせずに全て洗い出そうとする熱い姿を見せてくれます。
彼のこの行動の根幹には彼自身が遭遇した23年前の「練馬一家殺人事件」が正しく捜査されておらず、彼の中では未解決事件のままであるという想いがあるのでしょう。
だからこそ、家族の葬式でキモチワルイ(正しくない)と呟き、自分自身の手で真実を暴こうと決意し、法医研究員になったのだと思います。
そして優秀な法医研究員となった今でも過去の事件を追っており、作中でも徐々に事件自体の概要が露わになっています。
事件の真相を真野礼二自身が知った時に彼は一体にどんな行動を起こすのか?という点も作品を興味深くしている要素だと思います。
作中に何度となく表示されるキーワード「法医研究員なら完全犯罪できる」
この言葉から不穏な気配を感じますが、果たして真野礼二は私的な復讐や制裁を行うのか?
もしも彼がそのような行為を行った時にヒロインの沢口ノンナがどう思いどんな行動をするのか?
メインストーリーの方がどうなるのかとても気になります。
23年前の事件について
事件の根幹にある「練馬一家殺人事件」ですが、『トレース 科捜研法医研究員の追想 1巻』では断片的な情報だけであり、どんな事件で犯人が誰かを推測するにも材料が足りません。
現状判明していることは真野の両親と姉が殺害され、たったひとり真野礼二が残され、そしてその事件の結末に真野礼二が納得していないという事です。
何故、幼い真野礼二がその事件の結末に納得がいっていないのか?
そして、そもそも事件の原因はなんなのかといったところが明らかにされていません。
作中に描かれている内容から被害者3人が1室に倒れており、全員が抵抗や逃亡する間もなく殺されている事しかわかりません。
何故、3人もの人間を殺すことになったのか?
そして、何故に真野礼二のみが被害を免れることが出来たのか?という点が事件の真相を追っていくうえで重要な要素になるんじゃないかと個人的に思っています。
事件の関係者として、かつてこの事件を捜査していた警察官である虎丸良平が、現在は刑事として真野礼二と関わってきましたので、今後もこの事件の関係者が叙情に現れてくるのでしょう。
関係者から語られる事件についての情報が提示され、更なる関係やが登場していくことで事件が露わになっていくのだと思います。
個々の事件解決も物語として楽しめていますが、こちらのメインストーリーは情報が小出しにされていく分、余計に事件についてが気になっていきます。
次巻『トレース 科捜研法医研究員の追想 2巻』で新たな情報が提示されるともう少し事件を推測できるんでしょうね。
シリーズ感想の索引
トレース 科捜研法医研究員の追想 1巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 2巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 3巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 4巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 5巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 6巻 感想
2019年冬ドラマ関連作品
ゆうべはお楽しみでしたね 1巻
ゆうべはお楽しみでしたね 2巻
ゆうべはお楽しみでしたね 3巻
ゆうべはお楽しみでしたね 4巻
ゆうべはお楽しみでしたね 5巻
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お勧めの作品
今回のお勧めは『トレース 科捜研法医研究員の追想 6巻』です。
シリーズ最新刊は当然ドラマ放映開始時期に合わせて発売です。
ドラマの方で人気が出たらきっと原作の売れ行きと知名度も上がるんでしょうね。
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