『トレース 科捜研法医研究員の追想 3巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
科学捜査研究所研究員・真野礼二。
誰の言葉にも耳を貸さず、真実だけを求める彼のもとに、また新たな鑑定資料がやってきた。
撲殺され、埋められ、焼却され、遺体の痕跡が抹消された不良少年。
真野は残る手がかり”土”を鑑定する。
彼は言う『僕はただ真実がほしくてもがいてるだけだ』と――――。
そして23年前、真野の家族を奪った練馬一家殺人事件が動き出す。
ネタバレなしの感想
科学捜査研究所(科捜研)の法医研究員を主役にした事件捜査物のミステリー作品の第3巻です。
『トレース 科捜研法医研究員の追想 1巻』と同様に数々の事件の証拠物品を主人公の真野礼二とヒロインの沢口ノンナが鑑定していき、客観的事実から事件の真実を洗い出していきます。
今巻でも個々の事件に対して真野礼二と沢口ノンナが証拠物件を詳細に鑑定し、被害者が残した想いの痕跡を見つけだし、残された被害者の関係者に想いを届けるところが描かれています。
個々の事件の一被害者である彼ら彼女らにもそれまでの人生があり、そして残された人間はその人生の一部を受け取っていくという所に切なさと温かさを感じます。
メインストーリーである23年前の事件に関する情報は今巻でも描かれています。
いままで事件の情報については抑え目に開示されてきていましたが、今巻『トレース 科捜研法医研究員の追想 3巻』では一気に情報が増え色々と想像や推測する余地が増えてきました。
開示された情報の中で特に大きいのは「練馬一家殺人事件」が起こったそもそもの発端となったであろう要因が描かれたことです。
読者である私はこれまでは事件の背景や詳細が分かっていなかったため、興味や先の展開が知りたいという願望から「練馬一家殺人事件」の情報が提示されることを求めていました。
ですが、今巻『トレース 科捜研法医研究員の追想 3巻』で「練馬一家殺人事件」が発生したであろう原因を知ることが出来たため、興味本位ではなく、真野礼二の家族を襲った悲劇の原因である犯人を許せないという気持ちになり、一刻も早く真相と犯人逮捕を願うようになりましたよ。
本当に事件の新情報が次々と開示されていき、事件の詳細が深くわかっていくにつれて、その詳細に息詰まりましたし、事件の裏側にあった人の悪意を知り胸糞が悪くなりました。
これまでは事情があるとはいえ真野礼二が私的制裁を加えることに若干批判的でしたが、事件の背景をしったことで彼が行おうとしている復讐を諌めることが正しいのか疑問を覚えました。
過去の情報が開示されただけではなく、現代では真野礼二が事件の証拠物件の収集や被疑者や関係者にたいして聞き込みを行い事件の調査が進んでいく描写も描かれています。
事件の関係者であり真野礼二たちが真犯人と疑っている3人の人物の顔見せが行われましたし、そのうちの一人が深く関係する事件についての鑑定も真野礼二が行っています。
メインストーリーである「練馬一家殺人事件」が大きく進展を遂げていくために、事件関係者と対峙する場面が増えていくことでしょう。
「練馬一家殺人事件」の背景にある人の悪意には不快感を覚えますが、被害者たちの想いに応えるためにも、真野礼二が事件の呪縛から解放されるためにも、3人の被疑者たちとの対峙は外すことの出来ない要素になっていきそうです。
3人の被疑者の中で壇浩輝という人物は、その能力や彼の持つ権力、そして悪意はさくちゅでも別格の人物に思われます。
そんな強敵を真野礼二は打ち崩すことが出来るのか?
そして本当に3人の被疑者たちの中に真犯人は存在するのか?
そういった点を注目して続刊である『トレース 科捜研法医研究員の追想 4巻』を読んでいこうと思います。
次は真野礼二の過去エピソードがメインになるのかな。
彼が事件の真相を暴こうとするにいたる過程や法医研究員に至る過程や、先生と知り合う過程が描かれるのかな。
過去エピソードで真野礼二の根幹がより鮮明になり、彼のキャラクターを深く知ることできるといいですね。
ネタバレありの感想
ここから下は『』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
続々23年前の事件
ネタバレなしの感想に大きく取り上げましたが、事件の情報が一気にいろいろと開示されました。
特に気になった点であり、その悪意に不快感を覚えた点が、事件が発生するに至った背景の一端です。
それは、真野礼二の兄であり「練馬一家殺人事件」の犯人と見なされている義一は、学校でいじめを受けており、そのいじめの一環として姉の仁美が襲われて妊娠をしたという事実です。
虐めを受けた兄の義一が姉の仁美を体育倉庫に呼び出すよう命令され、そして仁美が虐めの主犯たちに襲われるとか本当救いが無い展開です。
読んでいて一気に気分が悪くなりましたし気が滅入りましたよ。
ただ、この事実を知ったことで『トレース 科捜研法医研究員の追想 2巻』で描かれていた兄が父に殴られていた理由が理解できました。
そして仁美の妊娠という事態が真犯人が一家全員を殺すという凶行に走らせた原因であると考えられます。
つまり姉が妊娠した子供の父親=真犯人という確率がかなり高いんじゃないかと考えられます。
今巻『トレース 科捜研法医研究員の追想 3巻』で真野礼二は、仁美の司法解剖をした医師よりDNA鑑定が可能になる証拠物品を譲渡されています。
3人の被疑者のDNAを取得することで鑑定が可能になり、父親の鑑定が出来るようになっています。
既に壇浩輝以外の2人からはDNAサンプルを取得済みであり、その上で鑑定で父親ではないとされていますので、今一番疑いが強い人物が壇浩輝になります。
その壇浩輝という人物は現在、刑事部長をしており警察側の幹部ですから事件を調べていくうえで障害になりうる存在といえます。
そういった事情が分かると虎丸良平が真野礼二に事件に深入りするな忠告した理由も見えてきます。
忠告した理由は警察幹部である壇浩輝を敵に回すようなことをするなという意味なのでしょうね。
ですが、虎丸良平が忠告した理由が分かったことで更なる疑問が湧いてきますね。
なぜ虎丸良平が23年前の事件に壇浩輝が関わっていたことを知っていたのかという点です。
現時点では分かりませんが、虎丸良平は事件にかかわるキーマンの可能性がありそうですね。
彼も23年前の事件を独自調査しており、その線から壇浩輝に結び付いたのかもしれないです。
真野礼二が23年前の事件を解決するためには虎丸良平から彼の知っている情報を得る必要がある気がします。
そして、事件の重要参考人物である3人の容疑者の1人である新妻大介が殺害されてしまいました。
この殺害事件にもいろいろと疑問点が湧いてきます。
なぜ、態々今になって新妻大介を殺したのか?
殺害現場がなぜ「練馬一家殺人事件」の跡地の公園だったのか?
殺害現場に残された物的証拠である手袋は、なぜ「練馬一家殺人事件」でも使われたであろう手袋であったのか?
そしてなぜその手袋を残してきたのか?
といくつもの疑問が湧いてきますが現時点では満足な答えを返すことが出来ないです。
新妻大介を殺した犯人=「練馬一家殺人事件」の犯人であると思いますが、新妻大介を殺害したことで真野礼二にどのような意図を伝えようとしていたのかが凄い気になりますよ。
今後、「練馬一家殺人事件」の調査を進めていく中でこの新妻大介殺人事件の真相も明らかにされていくのでしょうが、上記疑問の答えが明らかになるのかな。
いや本当、一気に情報が出てきたので、語りたくなっちゃう内容も多いですね。
ダラダラと自分の感想や考えを書いちゃってすみません。
壇浩輝
現時点で最も犯人の可能性が高い人物、それが壇浩輝になります。
今巻『トレース 科捜研法医研究員の追想 3巻』での出番はわずかなものだったのですが、そのわずかな登場シーンで見せた悪意の強さは作中でも随一でしたよ。
真野礼二の兄である義一を虐めていた3人のリーダーであり、義一に自殺してもらうために虐めていたと平然と語るサイコパスですわ。
壇浩輝なら一家を殺し、義一を犯人に偽装したとしてもおかしくないと思える人物です。
そして現代では警察の幹部を務めるほどの有能なキャリアであることからも、主人公の真野礼二の宿敵としての役割を十分に果たせる人物だと思います。
壇浩輝と対峙するときには有能といわれている真野礼二でも油断できないでしょうし、勝利をつかむことは難しいんじゃと思わされました。
ただ、敵として真野礼二の前に立ちふさがる壁としては壇浩輝は適役でしょうが、果たして事件の真犯人であるのかと考えると、私は壇浩輝は真犯人じゃないのではと考えています。
上記しました通り、壇浩輝は義一に『自殺してもらいたかった』のです。
その彼が一家を惨殺し義一も殺すことはしないんじゃないかと思えました。
人を自殺に追い込むために平然と虐めを行うような人物が、女性を妊娠させたからと言って一家を惨殺するとはちょっと思えないんですよね。
事件のトリガーが姉である仁美の妊娠ということとすると、私は犯人は壇浩輝ではないだろうと思います。
では、誰が犯人かということを今時点の情報で推測すると、味方である先生のことを怪しく思っています。
姉である仁美の先生であり、仁美から事情を聴いていたという話を先生からしていましたが、その話をどこまで信用していいのかという点で怪しんでいます。
先生の話には客観である真実ではなく、真野礼二や先生の主観にすぎないんじゃないかと疑っているという前提です。
現状、仁美と繋がる男性は真犯人と目されている3人以外では先生しかいないんですよね。
先生が子供の父親である可能性もあるんじゃないかなって疑ってもいます。
果たして私の推測というか邪推が当たっているのかを注目して続刊『トレース 科捜研法医研究員の追想 4巻』も読んでいこうと思います。
シリーズ感想の索引
トレース 科捜研法医研究員の追想 1巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 2巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 3巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 4巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 5巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 6巻 感想
2019年冬ドラマ関連作品
ゆうべはお楽しみでしたね 1巻
ゆうべはお楽しみでしたね 2巻
ゆうべはお楽しみでしたね 3巻
ゆうべはお楽しみでしたね 4巻
ゆうべはお楽しみでしたね 5巻
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お勧めの作品
今回のお勧めは『トレース 科捜研法医研究員の追想 6巻』です。
シリーズ最新刊は当然ドラマ放映開始時期に合わせて発売です。
ドラマの方で人気が出たらきっと原作の売れ行きと知名度も上がるんでしょうね。
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