『トレース 科捜研法医研究員の追想 4巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
あらすじ
科学捜査研究所研究員、真野礼二。確かな真実を求め、また新たな鑑定資料が彼の元へとやってきた。
電車内で被害者女性の膣内に指を入れる痴漢事件。捕まった参考人の男は卑劣な犯人か?それとも冤罪か?
犯人の皮フ片、被害者のDNA、痴漢現場に残された真実への糸口。
真野の地道な鑑定が、混迷極めた事件を解決へと導く。
そのほか「危険運転致死傷罪」「科捜研であった本当に怖い実話」など収録。
ネタバレなしの感想
科学捜査研究所(科捜研)の法医研究員を主役にした事件捜査物のミステリー作品の第4巻です。
前巻ではメインストーリーの23年前の事件の情報が一気に出て盛り上がってきましたが、今巻ではメインストーリはあまり進展がなかったです。
真野礼二が過去を回想する形式で23年前の事件を自身の手で再調査することを決意したのかと、法医研究員を目指す理由が描かれています。
彼が事件の再調査を行おうと決めたきっかけはとても些細な物証なのですが、ただその事実が意味する意味は大きいと思います。
あの物証から私もいくつか疑問点が湧いてきましたよ。
たぶん、メインストーリの事件が気になる読者の方なら私と同じような疑問が湧いてくるんじゃないかなって思います。
そして真野礼二の唯一の協力者である”先生”との出会いと協力に至る流れも描かれています。
頑なに事件を調べていることを他者に明かさない真野礼二が”先生”のことを協力者として受け入れる部分は若干の違和感を覚えますね。
まあ、この辺は私が”先生”のことを胡散臭く思っているというフィルターがあるが故の邪推かもしれませんが。
真野礼二のルーツから始まり、クライマックスでは真野礼二が事件を解決するための最大の敵であり立ち塞がる壁である壇浩輝と対面します。
いったいなぜ、壇浩輝が真野礼二の前に姿を現したのか?
そして壇浩輝を前にして真野礼二はどのような思いでいるのかといった気になるところで次巻に続きます。
いやいや本当に読者を惹きつける気になる引きで終わってしまいましたね。
ただでさえ23年前の事件の情報が断片的にかつ少しずつで読者の飢餓感を煽ったところで、直接的と対峙させるんだから展開が気にならないわけないじゃないですか(笑)
早く続巻である『トレース 科捜研法医研究員の追想 5巻』を読んで壇浩輝の狙いを確かめたいですわ。
作品のメインストーリーである「練馬一家殺人事件」の方も楽しめましたが、個々の事件の鑑定も十分楽しめる内容でした。
電車内での痴漢事件の鑑定、飲酒ひき逃げ事件の鑑定と事件の内容と証拠品鑑定の流れは安定の面白さがありますね。
どちらの事件の犯人も擁護できる点が無く胸糞の悪い犯罪者でありましたので、真野礼二たちの鑑定により事件の真相が暴かれたときにはスッキリしましたわ。
個々の事件も品質が高く楽しめるのですが、単純に楽しいだけではなくメインストーリーの事件に関する情報や示唆が含まれている点が作品に深みを与えている気がしますね。
今巻でいえば電車での痴漢事件の際に真野礼二が発した言葉は、真野礼二自身にも跳ね返ってくるじゃないかと思わされましたよ。
ネタバレありの感想
ここから下は『トレース 科捜研法医研究員の追想 4巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
続々続 23年前の事件
ますます壇浩輝の異常さと敵意が前面に押し出されてきましたね。
23年の事件の真犯人と目されている3人の内で壇浩輝が最も怪しく犯人に近い人物として描かれ、真野礼二の当面の敵役と思われるように描かれています。
他の二人は単なる取り巻きであり、事件の犯人という可能性はもうないでしょうね。
新妻大介に至ってはすでに何者かによって殺害されていますし。
そんな当面の敵役である壇浩輝が真野礼二の前に態々姿を現した理由はいったい何なのでしょうね?
義一を虐めていた時の様に真野礼二を弄びいたぶり、自殺に追い込もうとしているのか?
壇浩輝自身は自分が23年前の事件を探られることに痛痒を感じてないのが不気味です。
事件の証拠は完全に抑えており、事件自体が表面に出てくる恐れが無いからなのでしょうか。
それとも壇浩輝自身も警察の幹部でありますし、父親は現役法務大臣であり、司法関係は抑え済みであるという自信からの行動なのでしょうかね。
私個人の予想としては壇浩輝が23年前の事件の犯人ではないからこその行動だと思うんで有珠よね。
ただ、新妻大介の殺人現場に落ちていた手袋は23年前の事件の証拠物品であることも確定しましたし、新妻大介殺しについては壇浩輝が関わっていたのだと考えています。
新妻殺しの犯人 = 23年前の事件の犯人とは限りませんし、別事件別犯人と考えてもおかしくはないはずです。
壇浩輝が23年前の事件の犯人ではなくとも、その事件にかかわったことを今さら新妻大介に公表されるのを嫌がり殺害したとも考えられますから。
じゃあ、誰が23年前の事件の犯人なのかといえば、いまだに”先生”のことを私は疑っています。
物語の登場頻度や重要度といったメタ的な考えが多分にありますが、23年前の事件の犯人に該当する人物は、壇浩輝か”先生”しかいないと思うのですよ。
今巻の回想シーンで重要視されていた真野礼二の母が大事にしていた茶碗が1つだけ失われていたことから、当時の源家(真野の家)に訪問していたのは1人と考えられます。
壇浩輝が一人で謝罪に訪問するとか考えられないんですよね。
訪問するにしても壇浩輝の親か弁護士か同席すると思えますし。
一人で訪問するということは、責任を一人でもとれる人物であり、大人と認められている人物であると考えられるのですよ。
そうなると当時の該当者でいえば”先生”しかいないんじゃないかなと。
姉の仁美を妊娠させた相手こそ”先生”だったんじゃないでしょうかね。
という感じで私の中では”先生”真犯人説が最有力候補です。
もしも予想の通り”先生”が犯人だったとするのならば、今巻で真野礼二が捜査官に放った言葉が自らへのブーメランに他ならないでしょうね。
「自分の憶測だけで さも真実であるように主張する」
この言葉は3人の被疑者の内に犯人が必ず存在すると主観で考えている真野礼二に突き刺さるのかもしれないです。
果たして私の予想というか妄想は当たっているのか、続刊を読んでいき確かめたいと思います。
シリーズ感想の索引
トレース 科捜研法医研究員の追想 1巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 2巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 3巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 4巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 5巻 感想
トレース 科捜研法医研究員の追想 6巻 感想
2019年冬ドラマ関連作品
ゆうべはお楽しみでしたね 1巻
ゆうべはお楽しみでしたね 2巻
ゆうべはお楽しみでしたね 3巻
ゆうべはお楽しみでしたね 4巻
ゆうべはお楽しみでしたね 5巻
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お勧めの作品
今回のお勧めは『トレース 科捜研法医研究員の追想 6巻』です。
シリーズ最新刊は当然ドラマ放映開始時期に合わせて発売です。
ドラマの方で人気が出たらきっと原作の売れ行きと知名度も上がるんでしょうね。
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