アドモフ帝都を目指し進軍を続けるレオナート。しかし東より迫る新たなる脅威―草原最強の騎馬軍団クンタイト・ダラウチ氏族襲来!さらに若き皇帝ウィランがただひとり友と呼ぶ男、眠れる獅子ダノールが国家防衛のために目を覚ます。だがレオナートは自覚していた。強敵との出会いに武者震いをする己を。そしてこの一戦が歴史に深く刻みこまれるであろうことを―「我ら、これより神話に入る!!」あまねく神々よ照覧あれ、我が驍勇にふるえよ天地!宿敵アドモフ帝国征服に挑むアレクシス軍飛躍の戦い、成るか?魔法がないから熱く燃える痛快戦記、激闘の第7巻!
『我が驍勇にふるえよ天地 7巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
発売日からすでに一月以上経過しちゃっていますね。。。
本当は読んですぐに感想をと思っていたのにもかかわらず積本に埋もれさせてしまいました。
読んでみたらとても面白く、何ですぐに読まなかったのかと後悔いたしましたよ。
まあ、読む時期が遅くなったお陰で、面白い戦記ものライトノベルを続けざまに読めたという利点もありましたが(笑)
面白い戦記ものライトノベルの『ファイフステル・サーガ』と『天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~』の感想も近々あげようと思います。
ネタバレなしの感想
アドモフ帝国遠征編が完結、『我が驍勇にふるえよ天地』第一部完!といえる内容でした。
これまでレオナート達と激しい戦いを繰り広げてきた宿敵アドモフ帝国との戦いに決着がつきます。
綺羅星のように多種多様な有為の人材をそろえたレオナート軍の勢いは、大軍事帝国アドモフといえども止めること能わずでした。
本物語のラスボスとも言える国を相手にしてのレオナートたちの快進撃は、読んでいて爽快感を覚えました。
そんなレオナート達と対峙したアドモフ帝国側ですが、皇帝ウィランとその友ダノールについての描写が多くされていましたので、敵側の事情や実力も分かり決戦が盛り上がりました。
主人公陣営が強く爽快感を覚えるには、敵側への思い入れと強さが必要だと思います。
無能な敵を相手に無双をしても爽快感を覚えませんし、思い入れがない敵を倒しても達成感が足りないと考えますので。
敵側の事情や背景を知った上で、その敵をどうやって打倒するのかを描くのが戦記ものの面白いところだと個人的に思います。
そういう意味で『我が驍勇にふるえよ天地 7巻』は、敵側である皇帝ウィランとその友ダノールについての描写がバランスよく描かれており、最終決戦も盛り上がったのだと言えますね。
アドモフ帝国遠征編である『我が驍勇にふるえよ天地 6巻』と『我が驍勇にふるえよ天地 7巻』の面白さは、敵側である彼らの存在あってこそとも言えるでしょうね。
皇帝ウィランとその友ダノールこそがアドモフ帝国遠征編の裏側の主人公とだとも言えます。
そしてその裏側の主人公とも言える二人を打倒してしまうレオナートとレオナート陣営の強さは際立っていますし、輝いています。
レオナート陣営は個々の武勇、軍としての強大さがともに破格過ぎて劣勢となる場面が少ないです。
劣勢になることが少ないため爽快感はありますが、劣勢からの逆転というカタルシスを味わえる場面はほぼ無かったです。
この爽快感とカタルシスのさじ加減が作品としての特色ですので、本作品は主人公陣営の無双による爽快感を楽しみたい人向けといえると思います。
無双や爽快感を楽しむという点で言えば、粗筋にもある「我ら、これより神話に入る!!」というシーンこそが最大の盛り上がりの場面になると思いますね。
上記台詞が表すとおりレオナートの強さが神話や伝説として描かれています。
もはやレオナートを打倒できる人間はいないんじゃないでしょうかね(笑)
その場に立ち会った人間がレオナートの強さを語り継ぎ、その語り継がれた物語が伝説伝承として神話に変わっていくのかもしれないですね。
レオナートたちの無双を楽しんだ一方で、レオナートたちが強くなりすぎた気もします。
強くなりすぎたレオナートたちを苦しめる敵や情勢を用意できるのでしょうかね?
本作品を更に盛り上げるには必要な点だと思いますので、どういった敵や情勢が用意されるのかが凄い楽しみです!
その点を期待して『我が驍勇にふるえよ天地 8巻』の発売を待とうと思います。
ネタバレありの感想
ここから下は『我が驍勇にふるえよ天地 7巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
皇帝ウィランとその友ダノールについて
ネタバレなしの感想でアドモフ帝国遠征編の裏側の主人公と書いた二人ですが、私はこの二人のことが好きでした。
『我が驍勇にふるえよ天地 7巻』を読んでいたとき、この二人がいたからアドモフ帝国側を応援していたまであります(笑)
レオナート側が強すぎたことからの判官贔屓な部分もありますが、ままならない情勢に対して努力や奮起する姿が好きだからという理由もあります。
ですので、ダノールがついに表舞台に現れその能力でレオナート陣営を苦しめた姿に喝采をあげていましたよ。
いや、本当に最後のレオナートとの一騎打ちはダノール優勢なときが一番楽しかったな(笑)
まあ一騎打ちではレオナートが更なる高みをみせることでダノールが負けてしまいましたが、あの一騎打ちがあればこそアドモフ帝国の滅亡に流れた血が少なく済んだのだと思います。
ダノールの驍勇を認め、そのダノールすら退ける驍勇をもつレオナートを相手ならば降伏も已む無しとうい空気をうみだしたのでしょうね。
伝説伝承に謳われるであろうレオナートと互角に戦ったダノールの強さもたいしたものだと思いますよ。
後世、裏切り者として誹られることが信じられないですわ。
一方皇帝ウィランについては、『我が驍勇にふるえよ天地 6巻』を読んだ段階では皇帝らしい有能な指導者と捉えていましたが、『我が驍勇にふるえよ天地 7巻』を読んで印象が変わりましたね。
優秀な人物ではありましたが、帝国の皇帝の器ではなかったなと。
姉皇女への扱いや配下への対応、レゴ帝の再来になる夢を諦めた後の帝位はいらないという言及、どれも帝国皇帝として国を統治する執念や野望を持った人間では無かったですね。
姉皇女との皇位継承を争ってはいましたが、既にある帝国を譲り受ける立場であるが故に帝位や国への執着が薄かったのかもしれないですね。
もしも帝位に執念をもち国に執着があれば、一騎打ちの前にも後にもレオナートたちと戦う術はまだまだあったと思います。
姉皇女派閥のアドモフ兵士の心をせめても良かったですし、姉皇女を人質にしても良かった。それこそ国を守るだけなら姉皇女に帝位を譲っても良かったんですよ。
そのどれも行わず自己満足の一騎打ちを提案した点こそ皇帝の器ではなかったと談じられる理由だと思いますよ。
読者としてはダノールとレオナートの奮戦は面白かったですし、皇帝の潔さに爽やかさを感じましたが、一国の統治者として許される行動ではないです。
ウィランの帝位や国に対する執着心の薄さと、国を建国し独立するという強い野望を持ったレオナートとの対比のためなんでしょうけどね。
エピローグで皇帝をやめ史家として生きていったウィランが描かれており、ウィラン個人は幸せに暮らせたようで読後の後味は悪くなかったですが、国を滅ぼした指導者としての責任を取っていないことは気になりますね。
ウィランなりの責任の取り方が、自身のことを愚帝と断じて歴史に残したのかもしれないですね。
今後の展開について
ネタバレなしの感想にも書きましたが、強くなりすぎたレオナートたちを苦しめる敵や情勢を用意できるのでしょうか?
新たな敵となりえる存在としては母国に残っているレオナートの父や兄がいますが、アドモフ帝国を相手に劣勢だった母国の人間が、アドモフ帝国を征服したレオナートたちを苦しめるとも考えにくいのですよね。
一応は母国では一貴族ではありますから父王に命令権はありますが従う必要が無いほどの戦力がありますしね。
父王がレオナートに贈った軍刀の力を見るに父王は実は有能なのかもしれないですが、今更立ちふさがってくる展開も考えにくいしなあ。
周辺国が成長著しいレオナートたちに対して連合を組むという展開も、周辺国がシェーラの策謀でいいように動かされているのを見ると考えにくいしなあ。
国対国で戦えないなら新興勢力であるレオナート陣営の弱点である”レオナートがいることで纏まっていられる”点をつけばいい気もしますが、伝説伝承に残るであろうレオナートの個人武勇を見てしまうと無理っぽいですよね(笑)
以前に出てきていた毒のスペシャリストさんや小さな巨人さんなど、ある一点でレオナート達より高みにいる個の力を終結すればもしかすれば可能かもしれませんが、その個の力を終結する存在が見当たらないんですよね。
いやいや、本当に今後の展開どうするのかしら?
いきなり敵対する宗教集団やテロ組織とか出てこられても興ざめだしなあ。
そもそもアドモフ帝国滅亡を予想していなかった節穴な私が予想しても当たらないだろうし、戦記ものを面白くするための要点である強い敵をどう新たに出すのか? この部分を期待して新刊の発売を楽しみにしたいと思います!
シリーズ感想
我が驍勇にふるえよ天地 6巻 感想
我が驍勇にふるえよ天地 7巻 感想
我が驍勇にふるえよ天地 8巻 感想
我が驍勇にふるえよ天地 9巻 感想
お勧めの作品
今回のお勧めの作品は『天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)』です。
いやタイトルと表紙絵に惹かれて買いましたがこれは当たりですね!
天才王子という名前に偽りないですし、その天才王子が打った手の一つ一つが相手に過大評価や勘違いされて更なる成果あげてしまうところが楽しすぎますよ。
もちろん天才王子と表現されている以上、主人公ウェインの優秀さもしっかり描かれています。
そしてヒロインのニニムが本当に可愛いし、ウェインとの関係が堪らないですね。
戦記物がお好きな方にはぴったりの作品だと思いますよ。
SBクリエイティブ
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