『我が驍勇にふるえよ天地 8巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
FGOのイベント「サバフェス」に時間を奪われてしまったせいで感想のアップが遅れてしまいました。
本当にスマートフォンというものは時間を奪う魅力的なものが多数できる魔の機器ですね。
私の読書量低下の原因の半分はスマートフォントとスマホゲームにあるといえると思います。
※残り半分は年を取ったことによる集中力の低下ですね。。。
ちょっとスマホをいじる時間を減らして読書と感想アップの方に時間を割いていこうと思います。
あらすじ
三皇子、三つ巴の激戦へ――!!
魔法がないから面白い!
あわむら赤光が紡ぐ、いま最も熱い本格ファンタジー戦記!!
大人気痛快ストーリー第8弾!!アドモフ帝国、陥落! 遂にレオナートは一国を担う為政者となった。
その驚くべき報せは諸国へと轟き、パリディーダ帝国へと出征中だった”冷血皇子”キルクスの耳にも届く。
「今だ。俺の帝国を獲りにいく」一方、レオ台頭の報せに揺れる首都クラーケンの混乱は、ありえざる客――南方帝国ガビロンの侵略軍を招き入れてしまう。
その四太子にして武の麒麟児、兵にも慕われるカトルシヴァが陽気に親征を開始する!レオ、キルクス、カトルシヴァ、それぞれの想いを胸にした、三つ巴の戦いの行方や如何に――!?
魔法がなくても熱く燃え上がる痛快戦記ファンタジー、第8弾!!
ネタバレなしの感想
今巻の内容
前巻でアドモフ帝国征服編が終わり、今巻では次期シリーズの開幕を告げる導入編というところになりますかね。
征服したアドモフの地を治めるための組織改編を行い、新たに得た人材の紹介エピソードが描かれ、そして新たな敵の登場という内容で描かれています。
レオナートの覇道の前に立ちふさがるのは、これまでも優秀な皇子として描かれていた兄皇子 キルクスと新たに登場した南方帝国ガビロンの皇子 カトルシヴァです。
各々が優秀な皇帝になるであろう器であり、その配下にも優秀な人材がそろっている三つの勢力が覇権を争い始めるという興奮する展開の幕開けを告げる内容です。
各勢力についてはネタバレありの感想の方で触れていこうと思いますが、敵方にも魅力的で優秀な存在がいると本当に面白くなりそうで楽しみですよ。
レオナート陣営の動きや新たに幕閣に加わった人材のエピソードも描かれていますが、私が注目したいところはアドモフ帝国の妖怪ベルリッツェンと妹皇女フェリスですね
妖怪ベルリッツェンの方は真に使えるべき主をやっと見つけた忠臣であり名臣として輝いていますね。
帝国内に巣食う老害や悪役といった感じではなく、腹に一物をもち一癖も二癖もある面倒な人間ながらとても優秀で忠義に厚いとか面白いキャラクターとなりましたね。
アドモフ皇帝に対する忠義の持ち方や遇し方でこの妖怪を嫌いになる人がいるのも当然だと思いますが、個人的には私はこのキャラクターが大好きになりました。
忠誠とは無条件に捧げられるものではなく、捧げられる側にも忠誠を受けるに値する価値をみせないといけませんからね。
ウィラン皇帝は優秀だったかもしれませんが、妖怪が要求する水準に満たなかったのが敗因なんだろうな。
レゴ帝の再来を目指すあまり現実が見えておらず、硬直化した組織を変えることができなかったのがウィラン皇帝が忠誠を捧げるに値しなかったのかもしれないですな。
レオナートが覇道を歩み、忠誠に値する才華を見せ続ける限り、この妖怪ベルリッツェンはレオナートの有能な臣下であり忠臣でありつづけるのでしょうね。
そして、ウィラン皇帝の閨に入るために寵愛してくれていた姉皇女メリジェーヌを売った妹皇女フェリスが再登場するとは思わなかったですよ。
確かにウィラン皇帝についてフェリスもリントへ行ったとの描写がなかったので気にはなっていたけど、まさかレオナートに単身取り入るとは思わなかったな。
いやいや機を見るに敏というか、生存能力に逞しいというか年若いにしては凄い逞しいですね。
傾国の女、魔性の女というよりは今回見せてくれた逞しい女性という方が個人的に大好きなので、このキャラクターも応援したくなりましたよ。
マザコン気味のレオナートを年若いフェリスが落とすことができるのか楽しみです。
新たに仲間に加わったキャラクターがいれば、戦記物のサガとして退場するキャラクターも当然出てきます。
今回退場したキャラクターのうち片方はあからさまなまでに退場フラグをどんどん立てていましたからね。
そりゃ退場しても驚きは少なかったですわ。
ですが、その人物がいなくなったことで起きる影響はレオナート陣営にとってかなり大きくなるのではないかと思います。
実際の活躍よりも精神的支柱としての存在が大きく、この人物がいたからこそ集団としてのまとまりが生まれ躍進してきたのだと思えますからね。
この重要な人物が抜けたことでレオナート陣営がどう変貌し、物語にどのような影響を与えるのかが気になりますね。
もう一人の退場者についてはネタバレ有の感想で触れようと思います。
この二人のキャラクターが退場した後にもレオナートたちの戦いは続いていくわけで、レオナート陣営がどんな戦果をあげていくのか次巻も楽しみです。
個人的な評価
前巻の結末を受けて今後シリーズをどう続けていくのかなと勝手に心配していましたが、その心配を吹き飛ばすような面白さでした。
新たな敵は、あからさまな格下のやられ役ではなく優秀な指導者であり、主人公陣営を脅かす要素があるところがいいですね。
やっぱり、まじめに戦記物を面白くしようとするのなら優秀な敵の存在は欠かせないと思いますのでね。
良かった点
■新たな敵が優秀で魅力的だった点
キルクスの掘り下げ、カトルシヴァの紹介が行われましたが、それぞれの陣営に強みがありますね。
その陣営にいる諸将も優秀でありますし、ヒロインズも魅力的ですしいうことありませんよ。
各陣営好きになりすぎて、レオナートに勝てないまでも滅亡や敗死してほしくないなあ。
■主人公陣営が無謬で無敵ではなかった点
主人公陣営の快進撃や勝利といった爽快感が楽しいのは確かなのですが、あまりに一方的に勝ちすぎると面白みを感じないというわがまま読者なので(笑)
だからこそ、今巻のようにレオナート陣営も苦戦・窮地に追いやられる展開があってよかったですよ。
快勝での爽快感、劣勢からの逆転というカタルシスの両方があってこそ名作だと思えます。
悪かった点
■退場フラグがあからさま過ぎた点
いうても難癖に近い部分ありますね。
ただ、退場フラグを立てるにも数巻前から徐々に積み重ねていくかフラグを感じる間もなく急遽倒れるとかの方が読者視点として衝撃を受けたかなと。
急なフラグの連続のせいか作中人物たちほどに退場に喪失感を感じませんでした。
ネタバレありの感想
ここから下は『我が驍勇にふるえよ天地 8巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
新たな敵
ネタバレなしの感想でも触れていますが、アドモフ帝国征服後の新たな敵は兄皇子 キルクスと南方帝国ガビロンの第四皇子 カトルシヴァです。
キルクスは以前より登場していた冷血皇子として感情の起伏をみせない優秀な人物として描かれていました。
ただ今巻の冒頭に描かれていたキルクスを見た限り、感情の起伏が無い訳ではなく、表に出さない分内面の感情は激しいものを持っているように感じました。
冒頭のキスシーンとか激しいにもほどがありますよ(笑)
ただの冷静で有能な皇子でしたらシェーラに行動を読まれて敗北する未来しか見えませんでしたが、この内面に秘められた激情こそがレオナートの強敵たり得る素質ではないかなと思います。
ティキに匹敵する頭脳を持つもいますし、馬上戦ではレオナートと伍するもいますからね。
戦場での争いでは引けを取らないんじゃないでしょうか?
ただキルクス陣営の弱みとしてはレオナート陣営に比べ勢力と兵力が劣っている点がありますね。
クロード帝国の地をキルクス陣営が抑えられれば互角かなと思いましたが、その場合はレオナート陣営とカトルシヴァ陣営に挟まれてしまい劣勢だしなあ。
クロード帝国の地を各勢力で各勢力で3分割して覇権を争う感じになるのかしら?
新たな敵である南方帝国ガビロンの第四皇子 カトルシヴァですが、モチーフは島津家なのかな?
四兄弟それぞれ優秀で、それぞれ政治、謀略、軍事、武勇と秀でているものが異なるところも島津家っぽいですよね。
※島津義弘、家久がそれぞれ軍事武勇という点で有名ですし、ガビロンの第三皇子と第四皇子のモチーフと考察してます。
カトルシヴァ自体は勢力の主というわけではありませんので、レオナートやキルクスとは立場が異なりますね。
カトルシヴァ自身が一敗地にまみれても、その背後にいる帝国の主力が残っているわけですからね。
そして、そもそもクロード帝国への遠征ということですから戦場として荒らしてもカトルシヴァ自身が困ることはありませんから、民衆を犠牲にする無茶な戦術もできるという利点もあります。
あと、今巻ではカトルシヴァ自身の武略や武勇を戦場で発揮する場面がありませんでしたが、その個人武勇は破格に見えました。
戦場でレオナートと対峙した時、どのように戦いレオナートをどのように苦戦させるかが楽しみですね。
あと、軍略は不慣れなれど天真爛漫で兵士から好かれる要素をみせてはいましたので、ティキやシェーラの想定外、理解の範疇外の戦法で軍としても苦しめてくるのかも期待です。
クロード帝国 皇帝
ただの無能な皇帝に見せかけているだけで実際は無能な人物ではないのだろうなと推察していましたが、実際に無能な人物より害悪な皇帝でしたね。
無能な振りをして臣下を操っているとか、時期が来たら有能なところを見せてレオナートの前に立ちふさがるとか予想してたんだけどな。
なんだよ、レオナートの母とレオナートだけを肉親として愛していたから、忘れ形見であるレオナートに国を譲るために無能と偽り臣下の操り人形となり国を疲弊させたとか酷すぎるわ。
いや本当に皇帝の器である人物ではなかったですね。この皇帝が治める国で暮らす民衆が哀れすぎますわ。
キルクスは間際の皇帝を見直していましたけど、人としての意地はみせていましたが為政者としては見直すところがなさすぎるよ。
皇帝が明敏な頭脳を持っていたのならやりようは有ったんじゃないかなあ。
百歩譲ってレオナート母とレオナートを愛していたとか言うのなら、直接その敵を討つなり害されないように守るなりしろやとしか言えず、この人物に対して憐憫の情とか持ち合わせることできないですわ。
大貴族たちは一枚岩じゃなかったから仲違いさせて一家ずつ滅ぼしても良かったはずだし、何もしないことが復讐であるとか回りくどすぎる。
レオナート本人が皇帝の意向と意思を知ったとしても感謝することはないだろうし、見直すこともないだろうなあ。
ジーラッハとの一騎打ちで不利な状況を打破する切っ掛けとなった刀が伝国の宝刀だったのですが、あの宝刀を譲ってくれたことくらいしかレオナートは感謝しなさそうですね。
バウマンの死に対する想いとは対照的に皇帝の死に対する想いは無いのだろうなと思いましたよ。
唯一、感謝するとしたらジーラッハとの戦いの勝利のカギとなった剣を譲ったことだけでしょうね。
シリーズ感想の索引
我が驍勇にふるえよ天地 6巻 感想
我が驍勇にふるえよ天地 7巻 感想
我が驍勇にふるえよ天地 8巻 感想
我が驍勇にふるえよ天地 9巻 感想
お勧めの作品
今回のお勧めは『銀河英雄伝説 10 (ヤングジャンプコミックス)
』です。
クロード皇帝サマラスの真意が分かった時、思い浮かんだのがフリードリッヒ4世陛下でした。
あのお方も自身の帝国の滅亡を望んで無為に過ごしていましたが、愛した女性のためや子供のためと言った肉親の情ではなく、個人的な感情を感じさせない退廃的なところが大物感につながっていた気がします。
フリードリッヒ4世の滅びを願う真意が読めないことからくる不気味さもありましたしね。
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