『我が驍勇にふるえよ天地 9巻』のネタバレありの感想になります。
ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。
ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。
本編の内容に全く関係ないのですが、表紙に描かれているレオナートの姿が集合写真撮影時に欠席した生徒の枠みたいに見えませんか?
自分はそう思えてしまいなんか笑ってしまいましたよ。
本当にどうでもいい話を最初に書いてすみません。でも、どこかにこの想いを書きたかったもので、、、
あらすじ
キルクス、カトルシヴァ両皇子との緒戦、勝ち負けつかず。
その結末は引き分けというにはあまりにも重い代償をレオナートに突きつけた。一方、中央帝国パリディーダでは、ツァーラント帝国、ガビロン帝国を一つに束ね、三国同盟でレオナートを滅ぼす邪悪な秘策が蠢動していた。
恐るべき絵図を描くは、千里をも見通すとされる《魔女》シェヘラザード。
混乱の情勢を不敵に操る魔術のごとき企みが、レオたちを新たな戦いへと誘う――。いざ示さん、王者の戦い!
強大なる三帝国を堂々迎え撃て!!
痛快にして本格なるファンタジー戦記の大本命、激動の第9弾!!
ネタバレなしの感想
テヴォ河にて相対した三皇子たち、緒戦は痛み分けという形で終結し、各々クロード帝国の領土を分割する。
アドモフ帝国領土、クロード帝国領土の大半を抑えたレオナート陣営の躍進に危機感を覚えた周辺三カ国(中央帝国パリディーダ、ツァーラント帝国、ガビロン帝国)は、パリディーダの《魔女》シェヘラザード主導のもと対レオナート包囲網である三国同盟を締結する。
一国同士の争いならば優勢であるレオナート陣営も三国を同時に相手に戦争を行う余力はなく、郵政から一転窮地へ陥る。
8月15日、一斉にレオナート陣営に襲い掛かる三国の軍勢
迎撃を行うためレオナート陣営は軍勢を三つに分けて相対する。
緒戦となるは北方の強国ツァーラント帝国とそれを迎撃するアドモフ駐留軍。
苛烈なる騎士公アルフレッドの侵攻を、アドモフ最高の知将レイヴァーンと最高の優勝だのーるが迎え撃つ。
果たしてレオナート陣営は三国による包囲網を打ち破ることはできるのか?というシリーズ第9巻です。
アドモフ帝国という大国を併呑し、更に滅びかけの国とはいえクロード帝国の過半を抑えたレオナート陣営に対して、周辺国が座して勢力を拡大を見守ることなどありえず、周辺3国による包囲網が結成されました。
包囲網は参加国間の利害関係の調整、攻勢のタイミング合わせなどが難しく、包囲網とは名ばかりの単なる軍事同盟にすぎなくなる懸念があります。
ですが、今回のレオナート包囲網はパリディーダの《魔女》シェヘラザードという稀代の調整家の存在により成し遂げられました。
彼女が提唱する包囲網はとても単純なものですが単純だからこそ懸念していた部分が解決されています。
包囲網側からすれば特定の日付に一斉に攻勢をかけるだけという単純な行動ですが、侵攻される側からすれば同時に三つの戦線に対応する必要がでてくる苦境になりますからね。
単純な策ですがこの一大包囲網を締結した点だけでもシェヘラザードが有能である証といえます。
主導者であるシェヘラザードは軍を率いるのではなく、策謀でレオナートたちと対峙するようです。
戦場では無敵の強さを誇るレオナート陣営ですから、むしろ直接対峙するより裏で暗躍される方が苦戦を強いられるかもしれないですね。
またシェヘラザード自身にもシェーラと何らかのつながりや関係性がありそうですので、その情報が提示されるときが楽しみです。
確実に言えるのはシェヘラザードの方がシェーラよりは色恋に詳しいということでしょうかね。
結成された包囲網(中央帝国パリディーダ+キルクス陣営、ツァーラント帝国、ガビロン帝国)の同時侵攻に対応するため、レオナート陣営は軍勢を分け各戦線に派遣せざるを得ませんでした。
その軍勢は、北方のツァーラント帝国に対応する旧アドモフ軍、南方のガビロン帝国に対応するレオナート主力軍、パリディーダ+キルクス陣営に対応するレオナート主力より分けられた別同軍の3つになります。
北方戦線の戦況は相手が有能なアルフレッドであったため、かなりの苦境と凄惨な戦況となっています。
そんな苦境だからこそかつての強敵、宿敵の知将レイヴァーンと勇将ダノールの活躍が光りますね。
この二人を配下にしてなお人材不足に嘆くレオナートの気宇の大きさが凄いですわ。
これ以上、メインキャラクター増えちゃうと活躍させる場面の調整に苦しみそうですよね。
一方、南方戦線ではレオナート主力軍とガビロン帝国の戦いが開戦するといったところで次巻に続いています。
ともに常勝不敗の名将同士の戦いということもあり、否が応でも次巻の戦闘の盛り上がりに期待してしまいますね。
ガビロン帝国側からすれば短期決戦を挑む必要が無い一方、レオナート陣営としてはパリディーダ+キルクス陣営に対応するために短期決戦にする必要があります。
どのようにガビロン帝国側を短期決戦に追い込むのか?
レオナート主力軍が決戦を終えるまで、パリディーダ+キルクス陣営を抑えることが出来るのか?
といった点を楽しみにして次巻『我が驍勇にふるえよ天地 10巻』を読みたいと思います。
『我が驍勇にふるえよ天地 10巻』の発売は2019年5月ごろとのことなので、そんなに待たずに読めそうなことが幸いですよ。
ネタバレありの感想
ここから下は『我が驍勇にふるえよ天地 9巻』のネタバレありの感想になります。
未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。
シェヘラザード
勢力として頭一つとびぬけたレオナート陣営に対抗するために結成された同盟軍です。
レオナート陣営をどうにかするために周辺国で同盟して包囲するのが一番と分かっていても上手くいかないのが外交調整ですが、その問題を解決できたのはシェヘラザードの能力とレオナート陣営に対する恐怖なんでしょうね。
己が美貌と才能を活用し、中央帝国パリディーダをほぼ乗っ取ったシェヘラザードの能力はレオナート以上ともいえます。
有能な教師や師匠に習い幼少から鍛えられたわけでもなく、周囲の力に翻弄され後宮にいれられながらもその運命に抗い至尊の位に迫っているわけですから、シェヘラザードの有能さも分かるというものです。
シェヘラザードはその能力を用いてレオナート陣営を裏側から苦しめていきそうで楽しみですよ。
正直、戦場でレオナートが遅れをとる可能性が考えにくく、レオナートが苦境に陥るとしたら陰謀の方が可能性高い気がするんですよね。
レオナートには後宮を仕切る存在がありませんし、武官に比べ文官の影が薄いという点もありますし、戦場外での戦いにどこまで対峙できるのかなって点も気になりますね。
また、シェヘラザードが容姿がシェーラにそっくりな理由も気になります。
理由もなく容姿をそっくりにするとは考えにくいですし、レオナートだけではなくシェーラを苦境に追い込む役目もシェヘラザードが担っていくのかも気になりますね。
北方戦線
北方戦線はツァーラント帝国対旧アドモフ軍であり、騎士公アルフレッド対レイヴァーン、ダノールです。
レイヴァーンとダノールに対峙する騎士公アルフレッドのキャラクターについては今巻で掘り下げられています。
苛烈であり異常な騎士道をもつ騎士公アルフレッドの有能さは今巻で描かれていました。
己が信じる騎士道に殉じ名誉すら捨てて行うアルフレッドの苛烈さは、なんといいますかツァーラント帝国へのプラス面よりマイナス面の方が大きかったんじゃないかしら?
アルフレッドが行った行為はアドモフ帝国の侵攻を食い止めたこと以外、ツァーラント帝国の国力を弱める行為です。
非道な君主の行動を治めるわけでは無く命じられるがまま内乱の鎮圧を行い、また圧政に反旗を翻した民衆を事情を斟酌することなく蹴散らしていますし、なんで国内で人気あるのか正直理解できませんよ。
そんな異常であり諸刃の刃であるアルフレッドの侵攻に対して、レオナートを苦しめた二将がどの様に戦うのかが今巻の盛り上がりどころでした。
消耗戦で構わない、旧アドモフ軍を引付けられれば十分と戦略目標をきっちり定めていたアルフレッドも有能でしたが、その戦略目標を理解したうえで戦線を破たんさせず、逆にツァーラント帝国にダメージを与えたレイヴァーンは流石名将です。
レイヴァーンの活躍によりツァーラント帝国の猛攻を防ぎ戦線を崩壊させなかった点もすごいですが、逆に進行しツァーラント帝国の再侵攻を困難に追い込んだことが何より凄いです。
防衛している側の旧アドモフ軍が劣勢にも動じず、事前に編成した侵攻軍を用いて逆侵攻しているとか大したものですわ。
自分が敗北することなど考えず、相手の嫌がることを的確にやるレイヴァーンは本当に敵にすると悪辣であり、味方にすると頼りになりますわ。
劣勢に追い込まれた側の起死回生の策として個人武勇による逆転劇が考えられますが、個人武勇の点ではダノールが味方にいるしなあ。フレッドの侵攻に対して、レオナートを苦しめた二将がどの様に戦うのかが今巻の盛り上がりどころでした。
今回も華やかさはありませんが淡々と相手の強敵を殲滅しているし、本当にダノール強いですわ。
正直、北方戦線にレイヴァーンとダノールという知勇の名将が備えているんですから万全といえます。
対レオナート包囲網との勝負は行方は南方と東方の両戦線にかかっていますので、ツァーラント帝国を抑えた旧アドモフ軍から一部を割いて援軍に送り出すまであるんじゃないですかね。
南方戦線
ガビロン帝国対レオナート主力軍の戦いの舞台になります。
今巻の戦闘は北方戦線がメインであり、レオナートの武略を発揮する場がありませんでした。
その分、次巻でレオナートとレオナート主力軍の活躍が楽しめそうです。
対ガビロン帝国を考えるに常勝将軍の三男と野生の勘が冴えわたる四男をどのように抑え込むかがポイントでしょうね。
まだこの両者の人物の掘り下げがされていませんので、今巻のアルフレッドと同様に決戦前にキャラクターの掘り下げが行われるのでしょう。
ガビロン帝国の兄弟のイメージは島津四兄弟の二男(義弘)と四男(家久)ですが、果たして当たっているのかどうか?
彼ら兄弟がどのようにレオナートとシェーラを苦しめるのか?といった点に期待です。
そして対峙するレオナート陣営には単純にガビロン帝国に勝てばいいという訳では無く、東方戦線の抑えが壊滅する前に戦闘を終わらせ援軍を間に合わせるハンデがあります。
レオナート陣営が圧倒的に無双して短期決戦で決着をつけるくらいしか解決策が無いように思えます。
ですが、ガビロン帝国側も有能に描かれているからなあ。
引き分けでも十分であった北方戦線とは違い、勝利したうえで援軍を間に合わせる妙案があるんだろうか?
正直、いまの私の予想ではその何点を解決する術が思いつかないですよ。
ガビロン帝国本国で何らかの事件が起きるとかないと難しい気がするけど、流石にシェーラの手もそこまで長くないだろうし、、、
シェーラお得意の伝説伝承作戦があるんだろうか?
南方先生をどう決着をつけるのか楽しみにしたいと思います。
何せ東方に派遣された分隊の司令官であるアランさんに死亡フラグ立っていたからな。
前は間に合ったとはいえ今回も間に合うとは限りませんし、レオナート陣営の退場者が全くでないのも展開的にはおかしいと思えるだろうしな。
アランが果たしてこの先生き残ることが出来るのか?その点も次巻の注目です。
シリーズ感想の索引
我が驍勇にふるえよ天地 6巻 感想
我が驍勇にふるえよ天地 7巻 感想
我が驍勇にふるえよ天地 8巻 感想
我が驍勇にふるえよ天地 9巻 感想
お勧めの作品
今回のお勧めは『デルフィニア戦記1-18巻+外伝1・外伝2+王女グリンダ全巻完結21冊セット(マーケットプレイスセット)』です。
内乱から立ち直り周辺国を凌駕する強国となった主人公陣営を快く思わぬ周辺国による同盟、包囲網と言った展開が『我が驍勇にふるえよ天地 9巻』と似ているなとの連想からです。
『デルフィニア戦記』では主人公陣営が包囲網を打ち破り逆に相手国を飲み込みましたが、レオナート達も同様に包囲網を打ち破れるのかが楽しみです。
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