幼女戦記 12巻 Mundus vult decipi, ergo decipiatur 感想 ネタバレ あらすじ

幼女戦記 12巻 Mundus vult decipi, ergo decipiatur』のネタバレありの感想になります。

ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。

ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。

あらすじ

戦場で勝利し、戦場で勝利し続け、しかし帝国は破滅へ一直線。爛れ切った愛国心と、残酷な現実の抱擁を経てゼートゥーアは「世界の敵」たるべく舞台を作り上げていく。死に逃げることも出来ない参謀本部の責任者としてゼートゥーアが求めるのは『最良の敗北』なのだ。言葉よりも、理性よりも、ただ、衝撃を世界に。世界よ、刮目せよ、恐怖せよ、そして神話に安住せよ。我こそは、諸悪の根源なり。

ネタバレなしの感想

幾多の戦場で勝利を得ながらもそれを活かすことが出来ず、世界の敵となった帝国。

勝利による栄光はもはやなく、未来の敗北を認めたゼートゥーアは、帝国にとっての『最良の敗北』を目指し、世界を相手に立ち回る。

「Mundus vult decipi ergo decipiatur(世界は騙されることを望んでいる、ならば騙されるがよい)」の言葉の通り、ゼートゥーアは世界が望む欺瞞を作り世界を翻弄する。

帝国だけではなく対帝国アライアンスも泥沼の消耗戦に引きずり込まれ、ますますと混迷の度合いを増す世界大戦の行方はどうなるのか。

そして有能な上官であるゼートゥーアにすり潰されるように使われるターニャさんの活躍は!?

といった内容のシリーズ12巻です。

個々の戦場では優勢に見える帝国ではあるが、政治・戦略の面では劣勢であることは、ここ数巻の内容で描かれてきておりました。

そしてついに帝国軍の最高指導者であるゼートゥーアの口から『最良の敗北』という言葉が語られるようになりました。

有能な戦略家であるゼートゥーアが敗北を受け入れ、その敗北の傷を軽くすべく世界を相手に立ち向かう決心をします。

ゼートゥーアほど有能な軍人が単純な勝利ではなく、世界を相手にどんな立ち回りを演じるのか怖いですけど本当に読んでいて楽しかったです。

今巻ではイルドア侵攻の真意が明らかになりますが、いやはや本当に悪辣な作戦でありましたね。

ゼートゥーアの狙いが分かった時には、もうどうしようもない泥沼につかり抜け出すのも一苦労ですから、対帝国アライアンスの面々がゼートゥーアに苦々しい思いを抱くのも納得ですよ。

妖精を愛するロリヤさんの怒りも随分勝手なものですが、ゼートゥーアにしてやられたと思えば仕方ないかなと感じてしまいましたよ。

帝国臣民と帝国の未来ために行ったイルドア侵攻は、帝国臣民や帝国以外には悪辣なもの以外の何物でもありません。

今後、劣勢が続く帝国に『最良の敗北』をもたらすために、世界の損失を広げていくのでしょうね。

もう戦争は十分だ、これ以上の戦いは不要だと世界の人々に思わせるほどの損失が一体どの規模になるのかが本当に恐ろしいですね。

帝国が『最良の敗北』を求め、約束された敗北への道行きを進んでいくことが確定しましたが、それを全く感じさせないほどの戦果をこのイルドア侵攻で挙げています。

『最良の敗北』といえど敗北に向かって突き進んでいくのに読んでいて悲壮感が少なかったのは、今巻でいえば帝国軍が優勢であり快進撃を遂げたからだと思います。

特にターニャさん率いるサラマンダー戦闘団、203航空魔導大隊の活躍も著しかったです。

帝国が滅びかけているのを理解して転職活動をおくりたいターニャさんも、転職の機会に恵まれずゼートゥーアさんに良いようにこき使われていました。

まさに宮仕え故の苦労と中間管理職故の苦労をしょい込んで、それでも部下のために頑張るターニャさんの姿は本当に素晴らしいものがありました。

クランツの為にゼートゥーアに抗弁する姿と、その抗弁が全く通じず引き下がった姿は涙無くては見られませんよ。

あの姿を見たらターニャさんの厳しさは分かっていても着いていきたくなるのも道理というものです。

上官と部下の連携の強さ、戦闘中にもユーモアを忘れないタフさは今巻でも変わらず楽しめました。

今後、ターニャさんもサラマンダー戦闘団も敗北に向けて劣勢状況での苦闘が続くでしょうが、何とか乗り越えて生き残れそうなタフさを感じましたよ。

でも、ここの戦場の優越より世界規模の戦略がメインエピソードになってきたので、ターニャさんよりゼートゥーア大将の方が目立っていた気がしますね(笑)

ペテン師ゼートゥーアの悪辣な詐欺に引っ掛けられ泥沼の消耗戦に引きずり込まれた対帝国アライアンス

一時的とはいえ劣勢に追い込まれた対帝国アライアンスとすれば、厭戦感情を払いのけるためにも華々しい戦果を、そして皆が熱狂できる英雄を欲するのではないかと考えられます。

今巻のクライマックスで描かれた戦闘で素人目にも分かりやすい戦果をあげた彼女こそ、作り上げられた英雄になるのではないかなと思いますね。

ますます胃を痛めそうなドレイク大佐の姿と、憤懣やるかたなく思えどその英雄をいいように利用するターニャさんの姿が思い浮かびますね。

本当立ち位置的にはヒロイックでまさに正主人公と言えるのに、近代戦争ではヘイト集める存在となるのが面白いな。

ネタバレありの感想

ここから下は『幼女戦記 12巻 Mundus vult decipi, ergo decipiatur』のネタバレありの感想になります。

未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。

最良の敗北

ゼートゥーア大将が目指す帝国にとっての『最良の敗北』とは何をもって「最良」をさすのでしょか。

帝国が降伏した際に、降伏の代償として割譲する領地や金銭を少なくすることが「最良」なのでしょう。

そのためには帝国以外の世界が帝国の存続を認めないという点で一致することを避ける必要があります。

そう考えれば、ゼートゥーアは対帝国アライアンスを一致団結させないことを戦略方針として戦争を進めていくのではと考えられます。

その事の裏付けとして、ゼートゥーアは連邦主導ではなく合州国に主導権を握らせようと考えておりました。

対帝国アライアンス内で主導権争いが起こり、各国の方針が乱れればより良い降伏条件を認める国と調整をすすめられますからね。

また、帝国と早くから戦火を交えて被害が広がっている連邦や連合と異なり、まだ被害の少ない合州国相手なら連邦や連合よりも寛大な条件で停戦できるかもしれません。

そう考えるとイルドアからの物資強奪と難民化作戦は大成功と言えるのではないでしょうか。

イルドア侵攻により参戦した合州国をイルドア支援の面から物資を窮乏させられますし、物資窮乏のため直接的な戦闘の遅延も狙えます。

戦争期間が長引くことでの合州国民に厭戦感情の蔓延すれば、ほどほどのところで戦争を止めようという機運も生まれるかなと。

そう考えれば帝国軍はイルドア方面は遅延作戦を取り、東部戦線で連邦との決戦を狙うんじゃないでしょうか。

戦後における西側(合州国&アルビオン連合王国)と東側(ルーシー連邦)の対立を見込み、その対立の中に帝国の存続を目指しているのでしょう。

そこまで考えているのであれば、ゼートゥーアが想定している『最良の敗北』は、帝国という国が西側陣営として存続していることじゃないかなと思いますね。

『最良の敗北』を得るためにターニャさんとサラマンダー戦闘団は、また東部戦線で圧倒的な物量相手に苦戦していくんでしょう、、、、

メアリーさん

戦場に個人的な感情を持ち込みドレイク大佐の悩みの種であり、ターニャさんにとっては理解不能な存在であるメアリースーさんです。

最近ちょっと目立ってなかったのですが、今巻では彼女の見せ場が大いにあり大満足です。

父親をターニャさんに殺され、父親が死んだことで母親もおかしくなってしまっているので個人的にターニャさんに憎しみを抱くのは仕方ないかなと思うのですよ。

メアリースーさんは視野の狭いお子様ですしね。

ただ、メアリーさんの感情は理解できますしお子様なのも分かっていても、戦場で上官の指示を全く無視するところをみていると部下にはしたくないなと思ってしまうのも仕方ないですよね。

戦場に個人の感情を持ち込むなとはよく言われる台詞ではありますが、メアリーさんの暴走を見ると道理だなと分かりますね。

そんな部下にはしたくない人ナンバーワンのメアリーさんですが、いまの階級ならドレイク大佐の胃を痛めるだけで済むのです。

ですが、今巻クライマックスでのイルドア王都解放の立役者(命令無視の独断専行ですが、、、)ということと、

対帝国アライアンスが劣勢となり国民の厭戦感情を抑える何かが必要ということとを考えると

メアリーさん間違いなく国民感情をごまかすための英雄役に立てられそうに思うのですよね。

メアリーさんは自己犠牲の精神で戦友を助けに向かった理想の兵士であり、帝国に苦しめられた盟友イルドア臣民とイルドア王都を解放した勇者とかなりそうです。

プロパガンダのための作られた英雄だとしても英雄に相応しい地位が与えられれば、ドレイク大佐の掣肘も今以上に効かなくなるんだろうな。

自分の考えが絶対に正しいと考え、その正しいことは絶対に叶と信じているメアリーさんは、まさに今巻の副題の「Mundus vult decipi ergo decipiatur(世界は騙されることを望んでいる、ならば騙されるがよい)」にぴったりのお方ですわ。

ドレイク大佐の胃痛が増していきそうですな。

ターニャさんもメアリーのことを大層迷惑に感じていますが、直接攻撃できたり戦場で利用できている分、ドレイク大佐よりましだろうなあ。

メアリースーさんという自覚のない道化師が激しく踊りそうですが、いつまで踊り続けることが出来るのか。

彼女の世界が広がり他者の考えや感情を認めることが出来るようになるのか、それとも気づかぬまま散ってしまうのかも今後の楽しみですね。

シリーズ感想の索引

幼女戦記 8巻 感想
幼女戦記 9巻 感想
幼女戦記 10巻 感想
幼女戦記 11巻 感想
幼女戦記 12巻 感想

スポンサーリンク
メタ情報
スポンサーリンク