幼女戦記 8巻 感想 ネタバレ あらすじ

老人の覚悟、幼女の保身

連邦資源地帯への大規模攻勢作戦『アンドロメダ』。
無謀を説いていたゼートゥーア中将は
参謀本部から東部への『栄転』に至る。

先細った連絡線、破たん寸前の兵站網、極めて長大な側面の曝露。
要するに、誰もがオムツの用意を忘れているのだ。
かくして、ゼートゥーア中将はレルゲン戦闘団へ特命を下す。

指揮官たるターニャに命じられるのは退却の許されない籠城戦。
勝たねばならない。

人材、食糧、砲弾、すべてが不足すれども
勝利依存症の帝国は戦争を止められない。
苦しかろうとも、続けるしかない。
足りない火力は血と覚悟で埋めるのみ。
さぁ、起こりうるすべてに備えよう。

幼女戦記 8巻 In omnia paratus』のネタバレありの感想になります。

ネタバレありの感想になりますが、ネタバレありの感想になる前に注意書きをおいてあります。

ですので、未読の方やネタバレを見たくない方でも、そこまでは読んでいただいても大丈夫なはずです。

この感想は旧ブログからの移転記事になります。

移転時に微修正を加えて誤字脱字も修正しております。

ネタバレなしの感想

幼女戦記 8巻 In omnia paratus』のサブタイトルとなっている『In omnia paratus』は、ラテン語で『すべての用意のできた』との意味とあります。

幼女戦記 8巻 In omnia paratus』で語られている『すべての用意』とは何を意味するのでしょうか?

既に本編を読了した人間には一目瞭然の事だと思いますが、帝国が置かれている戦況や国力の衰退、頼みとしていた精強な帝国軍のキルレシオすら優位性を喪失している状態でもちいられた言葉である『すべての用意』とは、決して戦勝に至るためのすべての用意とは言えないでしょう。

帝国の繁栄という目的を達成するための目標である戦勝を実現することは、楽観主義者や事態を把握していない帝国臣民ならば可能かもしれませんが、我々読者視点では到底無理なことが明らかです。

目標達成が絶望的な状態であることは優秀な軍人であるゼートゥーアには明らかです。

となれば目標を戦勝から変更し、別の目標を定めて目的である帝国の繁栄を実現するように動くのではないかと考えられます。

継続する戦争で失った人員や資源を補うための戦果を求め戦前の状態に戻すという損切りを行えない最高統帥会議。

停戦という損切をしてでも帝国がこれ以上の衰退を招かぬような行動をとろうとしているゼートゥーア。

立場の違う両者が歩み寄ることはもはやできず、ゼートゥーアが最高統帥会議より主導権を奪うための決断をするに至る決断に至る『すべての用意』が整ったのではないかと思います。

帝国の繁栄という目的を達成するための目標を変え、勝利条件を戦勝から停戦にかえるための『すべての用意ができた』ということなのかもしれないです。

ゼートゥーアが主導権を奪うためには正当な手順では不可能に近いため、非合法的な手腕であるクーデターというものに手を出すのかもしれません。

その時こそ、ターニャ・フォン・デグレチャフという鬼札が輝きを発し、活躍をするのではないでしょうか。

ターニャ自体は決して非合法なクーデターへの加担など望まぬことでしょうが、ゼートゥーア派閥に取り込まれている現状で拒むことは出来ないでしょうね。

帝国軍内で出世し退役後は優雅な生活をすることを望んでいるターニャからすれば不本意なことですが、誤解に誤解を重ね愛国者という仮面をかぶることとなった弊害と言えるかもしれません。

戦後、戦犯として裁かれぬようターニャが立ちまわるのかとても楽しみですし、ディスコミュニケーションコメディとして笑わせてもらおうと思います。

ネタバレありの感想

ここから下は『幼女戦記 8巻 In omnia paratus』のネタバレありの感想になります。

未読の方やネタバレを見たくない方は、ここで引き返すことを推奨いたします。

帝国の展望

大いなる戦果を求めて行われた東部での大規模攻勢作戦『アンドロメダ作戦』は、読者の予想の通り頓挫いたしました。

物語序盤である『幼女戦記1~3』の頃には物資も人材も豊富であった帝国軍ですが、中盤以降は多国籍軍の国力の前に消耗を続け、現状を維持するのが精いっぱいの状況になっています。

世界大戦規模の戦争においては兵士一人ひとりの力や、指揮官の能力の多寡だけでは敵国を潰すことが難しいのは明白です。

一国を飲み込んだ国家を周辺他国が放っておくことはありえませんので、待ち受けているのは周辺国をすべて倒すか自らが斃れるまで延々と続く消耗戦となります。

その消耗戦を滅亡をさけるため大事なものこそが政治であり外交であると思います。

ですが、帝国においては何より軍事力が尊ばれているが故に軍部の意向が強く、逆に政治力が低くなっているように見受けられます。

帝国は戦勝を活かすための政治や外交の力が弱いため、折角の戦勝を活かすことが出来ず国力の摩耗が続いています。

しかも本来は厭戦気分から停戦を求めるはずの国民自身が戦勝気分に浮かれ戦果を求めて暴走している状態ですから、停戦など口に出すことは出来ないのでしょうね。

ゼートゥーアやルーデルドルフが戦略的に優位に立つ状況を作っても、ターニャが戦術で補い勝利をもぎ取ったとしても、国民が望む成果を得ることができないため停戦に舵を切ることが出来ず、結果もぎとった勝利を活かすことが出来ない状況が続きます。
もはや満足に機能していない政治や外交を変えるためにも、国民の熱をさますためにも国家運営のかじ取り者を変える必要があるのではと考えます。

かじ取り者を変えるためにターニャが出来ることがあるかといえば、ターニャだけではその力が当然ありません。

また、ターニャ自身は国家の幸福よりターニャ個人の幸せをめざしていますので、国家の政治を変えるという劇薬に手を出そうという気などないでしょうね。

ですが、帝国を愛し今の帝国の状況を憂いる優秀な参謀将校であるゼートゥーアの立場では考えはターニャとは異なります。

戦場の実情を知り、優位であった帝国軍ですら多国籍軍とキルレートは同等になっているということを知り、このままで出血を続ければ回復力で劣る帝国が敗北するという当たり前のことを認識しました。

状況を変えるべき決意を固めたゼートゥーアが動き権力を握るとすると非合法的な手段で解決を目指すことが考えられます。

非合法な手段であるクーデターを起こして、ゼートゥーアが主導する軍事政権を樹立という未来が現実味を帯びてきた気がしますね。

そしてゼートゥーアがクーデターを起こそうとすれば、彼が動かせる実戦部隊としてターニャと彼女が率いる部隊が主戦力として動かざるを得なくなるように思えますね。

ゼートゥーア閥の一員であるターニャがどのように動くことになるのか次巻が楽しみです。

それにルーデンドルフが検討していた潜水艦による無差別封鎖が行われるのか?

それが行われたときに、あの世界の巨人が多国籍軍側で参戦するのか?というところも気になりますね。

滅びゆく帝国の中で戦勝以外の勝利条件を検討することとなったゼートゥーアさんは、帝国にとって真の愛国者でありますね。

そして愛国者であるからこそ貧乏くじを引くこととなったかと思います。

ゼートゥーア自身は、その貧乏くじ自体を承知の上で行動を選択していると思いますが、真の愛国者が報われるかどうかは別の問題ですし、その結末も気になります。

今回のドレイクさんとメアリースーさん

メアリースーの台詞がないことは残念でしたが、読者の期待通りの暴走が味わえたので満足です。

メアリーの暴走の結果、味方に一個中隊規模の損失が生じた訳ですから、ドレイクさんが嘆くのも当然ですよ。

過失からメアリーを罰したくとも、戦果自体はあげているため単純に罰することが出来ないドレイクさんのジレンマが悲しいながらも笑ってしまいますね。

戦後、ドレイクさんは将官に出世していますが、前門のターニャ後門のメアリーに対応した苦労を想うと召喚に出世するくらい当然のねぎらいだと思いますね。

ドレイクさんが今後とも振り回される姿を楽しませていただこうと思います。

シリーズ感想

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お勧めの作品

今回のお勧めは『幼女戦記(9) (角川コミックス・エース)』です。

コミカライズ版の幼女戦記はラノベのコミカライズの最高峰といえると思います。

表紙のメアリーさんは可憐だなあ。きっと戦場で聖女の様に活躍するんだろうな(白目)

幼女戦記(9) (角川コミックス・エース)
KADOKAWA / 角川書店 (2018-04-26)
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